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第575話 強力な守り人
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「単純がすぎませんか、お嬢様」
「そんな事ないもん! 超複雑だよ!」
「もう、アミナスってばすぐそうやって皆を困らせるんだから。レックスは本当にそれでいいの? アミナスの機嫌を伺わなくてもいいんだよ? これが終わったら、君はもう好きに生きていいんだ」
「レオがさっき言った。目標を持つのはいい事。僕には今まで目標なんて無かった。でも今は違う。実際に学園に行けたとしても行けなかったとしても、目標というものを持てたのが僕は嬉しい」
「そっか!」
嬉しいという単語をレックスが選んだ事が嬉しくてノエルは思わず笑みを浮かべた。一緒に通えないかもしれないのは寂しいが、アミナスだけバセット領に置いて行くことを考えたらその方がいいとも思える。何よりもレックスが自分で決めた事を反対したりしたくはなかった。
『レックスには良い友人が出来た。レックス、私も応援しよう』
「ディノ! 居たの!?」
突然の声に思わずアミナスが声を上げて辺りを見渡すと、すぐにディノからの返事があった。
『言っただろう? 意識体の私はどこでも見ることが出来る、と。地上は今どこも人形たちがウロウロしている。レックス、少し距離はあるが、南の湖から地上に出るんだ。そこから真っ直ぐ道に沿って進め。その道ならば身を隠す場所が多い』
「分かった。皆、こっち」
「ありがとう、ディノ」
いつでもディノが見守ってくれていると思うと少しだけ心強くなってノエルがお礼を言うと、ディノの小さな笑い声が聞こえた。
『ああ。その道ならば強力な守り人がお前達を見つけやすい。いいな? 決して道から外れるな』
「強力な守り人?」
『そうだ。天を駆ける女神たちの導きに従え』
「うん、分かった」
何だかよく分からないが、誰かが地上での自分たちをサポートしてくれるようだと受け取ったノエルは、レックスと双子たちと顔を見合わせて頷きあった。
絶対にこの作戦を成功させる。そのために自分たちは2つのグループに別れたのだ。ここに居るのはたったの5人だが、レプリカでは仲間たちが今も自分達を応援してくれている。そう思うだけで、何だか不思議な力が湧いてくるような気がした。
レックスの案内でノエル達がようやく出口にたどり着いた時には、外はもう真っ暗だった。ずっと地下にこもっていたせいで時間の概念をすっかり忘れていたが、どうやらもう夜だったらしい。
「困ったな。何も見えないよ」
「ええ。かと言って明かりを灯すわけにもいきませんね、この様子だと」
生物が消えて静まりかえった地上は得体の知れない徘徊音で埋め尽くされていた。それは人形たちが闊歩する音だ。人形たちは真っ黒なので、闇に同化してしまって何も見えない。
何かを引きずるような音だけが闇の中に聞こえてくるのは、そこそこ恐怖だ。
「女神の導きに従えってディノは言ってたよね?」
「言っていました。しかし、女神とは?」
ノエルの言葉にレオとカイが首を傾げていると、ふとアミナスが南の方の空を指さした。
「兄さま、あれ見て! 何か光ってるよ。星かなぁ?」
アミナスは人形たちが途切れた隙間にキラキラと輝く何かを見つけた。星にしてはやたらと光が強い気がして思わず身を乗り出そうとしたところをカイに掴まれてしまう。
「お嬢様、それ以上前に出ないでください。いざという時に地下へ戻れません」
「ご、ごめんなさい」
本気モードのカイの声にアミナスはすごすごと後退りすると、そんなアミナスの代わりにノエルが首を伸ばして空を見上げている。
「……星? いや、でもこの季節にあんな星なんて……ね、ねぇ! あの星近づいてきてるよ!」
アミナスが見つけた星がだんだん大きくなっている気がしてノエルが思わず声を出したその時だ。
入口付近をウロウロしていた人形がこちらをクルリと振り返った。
ヤバい! そう思った時には既に遅く、人形は物凄い速さでこちらに向かってやってくる。
「ノエル様! 下がってください!」
カイはノエルの袖を思い切り引くと、そのままノエルを後に押しやり、キリとお揃いのナイフを構えた。
「カイ、いけません! 人形たちは学習します! 武器を使うのは危険です!」
「今はそれどころではありません! っ!」
両手を振り回しながら襲ってくる人形からすんでの所で身を躱すと、カイはレオの忠告を無視してナイフを振り上げた。
と、その時。
「あなた達! 離れなさい!」
「!?」
突然空から聞こえてきた声にノエル達が見上げると、そこには真っ白に輝く羽根の生えた馬が三頭、空を駆けていた。その背中にちらりと見えるのは、白いドレスに身を包んだキャロラインだ。
「キャロライン様だ! お~い!」
嬉しくなって思わず飛び出そうとしたアミナスをレックスが急いで羽交い締めにして洞窟に戻ると、外から派手な光と音が聞こえてくる。
「そんな事ないもん! 超複雑だよ!」
「もう、アミナスってばすぐそうやって皆を困らせるんだから。レックスは本当にそれでいいの? アミナスの機嫌を伺わなくてもいいんだよ? これが終わったら、君はもう好きに生きていいんだ」
「レオがさっき言った。目標を持つのはいい事。僕には今まで目標なんて無かった。でも今は違う。実際に学園に行けたとしても行けなかったとしても、目標というものを持てたのが僕は嬉しい」
「そっか!」
嬉しいという単語をレックスが選んだ事が嬉しくてノエルは思わず笑みを浮かべた。一緒に通えないかもしれないのは寂しいが、アミナスだけバセット領に置いて行くことを考えたらその方がいいとも思える。何よりもレックスが自分で決めた事を反対したりしたくはなかった。
『レックスには良い友人が出来た。レックス、私も応援しよう』
「ディノ! 居たの!?」
突然の声に思わずアミナスが声を上げて辺りを見渡すと、すぐにディノからの返事があった。
『言っただろう? 意識体の私はどこでも見ることが出来る、と。地上は今どこも人形たちがウロウロしている。レックス、少し距離はあるが、南の湖から地上に出るんだ。そこから真っ直ぐ道に沿って進め。その道ならば身を隠す場所が多い』
「分かった。皆、こっち」
「ありがとう、ディノ」
いつでもディノが見守ってくれていると思うと少しだけ心強くなってノエルがお礼を言うと、ディノの小さな笑い声が聞こえた。
『ああ。その道ならば強力な守り人がお前達を見つけやすい。いいな? 決して道から外れるな』
「強力な守り人?」
『そうだ。天を駆ける女神たちの導きに従え』
「うん、分かった」
何だかよく分からないが、誰かが地上での自分たちをサポートしてくれるようだと受け取ったノエルは、レックスと双子たちと顔を見合わせて頷きあった。
絶対にこの作戦を成功させる。そのために自分たちは2つのグループに別れたのだ。ここに居るのはたったの5人だが、レプリカでは仲間たちが今も自分達を応援してくれている。そう思うだけで、何だか不思議な力が湧いてくるような気がした。
レックスの案内でノエル達がようやく出口にたどり着いた時には、外はもう真っ暗だった。ずっと地下にこもっていたせいで時間の概念をすっかり忘れていたが、どうやらもう夜だったらしい。
「困ったな。何も見えないよ」
「ええ。かと言って明かりを灯すわけにもいきませんね、この様子だと」
生物が消えて静まりかえった地上は得体の知れない徘徊音で埋め尽くされていた。それは人形たちが闊歩する音だ。人形たちは真っ黒なので、闇に同化してしまって何も見えない。
何かを引きずるような音だけが闇の中に聞こえてくるのは、そこそこ恐怖だ。
「女神の導きに従えってディノは言ってたよね?」
「言っていました。しかし、女神とは?」
ノエルの言葉にレオとカイが首を傾げていると、ふとアミナスが南の方の空を指さした。
「兄さま、あれ見て! 何か光ってるよ。星かなぁ?」
アミナスは人形たちが途切れた隙間にキラキラと輝く何かを見つけた。星にしてはやたらと光が強い気がして思わず身を乗り出そうとしたところをカイに掴まれてしまう。
「お嬢様、それ以上前に出ないでください。いざという時に地下へ戻れません」
「ご、ごめんなさい」
本気モードのカイの声にアミナスはすごすごと後退りすると、そんなアミナスの代わりにノエルが首を伸ばして空を見上げている。
「……星? いや、でもこの季節にあんな星なんて……ね、ねぇ! あの星近づいてきてるよ!」
アミナスが見つけた星がだんだん大きくなっている気がしてノエルが思わず声を出したその時だ。
入口付近をウロウロしていた人形がこちらをクルリと振り返った。
ヤバい! そう思った時には既に遅く、人形は物凄い速さでこちらに向かってやってくる。
「ノエル様! 下がってください!」
カイはノエルの袖を思い切り引くと、そのままノエルを後に押しやり、キリとお揃いのナイフを構えた。
「カイ、いけません! 人形たちは学習します! 武器を使うのは危険です!」
「今はそれどころではありません! っ!」
両手を振り回しながら襲ってくる人形からすんでの所で身を躱すと、カイはレオの忠告を無視してナイフを振り上げた。
と、その時。
「あなた達! 離れなさい!」
「!?」
突然空から聞こえてきた声にノエル達が見上げると、そこには真っ白に輝く羽根の生えた馬が三頭、空を駆けていた。その背中にちらりと見えるのは、白いドレスに身を包んだキャロラインだ。
「キャロライン様だ! お~い!」
嬉しくなって思わず飛び出そうとしたアミナスをレックスが急いで羽交い締めにして洞窟に戻ると、外から派手な光と音が聞こえてくる。
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