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第684話

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 アメリアは、一体どれほどの犠牲を出せば気が済むのだろうか。

 アリスは目の前にそびえ立つ古代妖精を草場の影から見上げて歯ぎしりをした。アメリアは錫杖の力をフルに使いこなして、一向に攻撃の手を止めない。それどころか、地上にやってきた自分の兵士たちを犠牲にして倒れてもすぐに復活するゾンビのような兵士をどんどん量産している。

「あれを見てもさ、あっち側に居たいってもう正気の沙汰じゃないよね」

 アリスと同様に草場の影から様子を見ていたリアンが言うと、アリスは舌打ちをして言う。

「そういうのも個人の自由なんだよ……強制は出来ない。でも! できれば殴ってでも本当はこっちに戻したいよ!」

 本音では誰にも犠牲になどなってほしくない。そんなアリスの後ろからノアが言った。

「それは本当にそう。全員まとめて今すぐレプリカに送り返したいよね」
「珍しいね、あんたが敵の事そんな心配すんの」
「リアン様、騙されてはいけません。お嬢様は本心からあの人達をレプリカに送りたいと考えていますが、ノア様は単にこれ以上あの起き上がり小法師兵を量産してほしくないだけです」
「起き上がり小法師兵って……でもそれなら納得。良かった。変態の心が急に清らかになったのかと思って焦っちゃった」
「いや、それはどう考えても清らかになった方がいいっすよ。それで、これからどうすんすか?」

 空を見上げると、シャルとシャルルとアランがアメリアに対抗すべく結界を張ってくれてはいるが、あの3人もそろそろ限界だろう。

「あの3人は妖精王が結界を張ってるからアメリアの攻撃が届きはしないけど、そろそろ厳しそうだね。カイン、あの3人のスマホ鳴らしてやって」
「了解。こら! 妖精王、ちゃんと隠れてろよ!」
「む、しかしだな、我も気になるのだ」
「ワガママ言うなよ。さっきのが芝居ってバレたら困るだろ」

 オズワルドの言葉に妖精王はシュンと項垂れてすごすごと草むらに帰っていく。

「ありがとな、オズ。それでまずはどうする? 古代妖精を足止めするにしてもここからじゃ難しいよな」
「僕たちが囮になろうか」

 困り果てている仲間たちにアンソニーが言うと、アリスとキャロラインが怖い顔をして詰め寄ってきた。

「駄目だよ! アンソニー王に万が一何かあったら、メイリングどうなるの!」
「そうよ、アンソニー王。あなた達が今回の要なのよ。こんな所で倒れてもらうのは困るわ。それに、八重さんもせっかく戻ったのに!」
「そうかい? それはすまなかったね」

 良かれと思って提案したが、八重子の事を出されるとアンソニーは弱い。

「兄さん、あの二人には敵わないんだから、作戦決まるまでここでじっとしてよう」
「そうだね」

 妖精王のようにすごすごと戻ったアンソニーにニコラは笑ってそんな事を言うが、ふと彼の足元を見ると、ピカピカに磨き上げられた武器がズラリと並べられている。

「大物は処理出来ましたが、まだこれほど残っているのですね」

 大物が処理できただけでも大分マシではあるが、機関銃やらハンドスナイパーなどはまだ山程残っている。それを見てカールがため息をつくと、ニコラも頷く。

「そうなんだ。でも大分減ったよ、ほんとにもう!」

 言いながらニコラは武器をカールに手渡す。そんなやりとりをじっと見ていたノアが、ふと口を開いた。

「ねぇそれさ、自動で発射出来るようにならないかな?」
「うん? どういう事だい?」
「いや、色んな所に設置して一斉に発射したらアメリアの注意力が逸れるかなと思ったんだ。そこを一斉にこちらから仕掛けられないかな」

 ノアの言葉にニコラは目を輝かせて早速改造しようとしているが、それをカールが止めた。

「待ってください、叔父さん。そういう改造は彼が得意のはずです」

 そう言って指さした先にはアランが居る。

 カインから撤退の報告を受けて戻ってきたアランは、そんなカールの言葉に愕然としているが、彼の真骨頂はこんな物ではないはずだ。

「そんな訳でアラン、これを手っ取り早く自動で撃てるよう改造してもらえますか?」
「あー……はい。では改造した物はレインボー隊に設置してきてもらいましょうか。ついでに魔石も埋め込んで――」

 今しがた結構な魔力を使ってきた所だというのに容赦の無いカールにアランは辟易しつつも作業に取り掛かると、シャルルとシャルも手伝ってくれた。仲間というのは本当に良いものだ。

「すまないね、アラン。僕たちは過去の君達のイメージがまだ強くて、まだまだいけるだろうなんて思ってしまうんだよ」

 腕を組んで肩を竦めてアンソニーが言うと、アランは苦笑いして頷く。

「過去の僕たちがどうだったかは分かりませんが、その期待を裏切らないようにしないといけませんね」
「ありがとう。それにしてもここに集まっている人たちの半数の人たちの能力は何となく分かるけれど、アリス達の事は僕たちにも未知数だ。やはり今回は集めるべくして集まったのかもしれないね」

 運命論など若い頃は信じてなど居なかったが、アリス達がことごとく計画をぶち壊したり撹乱させて今に繋がったのだと思うと、うっかり運命論すら信じてしまいそうになる。

 感慨深げにそんな事を言うアンソニーに、ふとアーロが言った。

「今はそんな年寄りみたいな事を言っている場合ではないだろう? アメリアの攻撃が激しくなてきた。俺たちが見つかるのも時間の問題だ」
「アーロの言う通りっす。ノア、ここで固まってるのは危険だと思うんすよ」
「そうだね。それじゃあ皆、レインボー隊を出してくれる? アランが改造し終わった武器を持たせて配置についてもらおう。そこから離れた場所に僕たちは3チームぐらいに別れて移動しようか。それからカイン、ルイス、キャロライン、ティナ、観測者さんは核に戻ってくれる?」
「それはあれか、俺たちが足手まといだからか」
「私もなの?」

 ルイスとキャロラインの言葉にノアはしっかりと頷いた。

「足手まといだからじゃなくて、邪魔なんだよ。観測者さんは戦えないし、キャロラインとティナは戦力として欠けるのは痛手だけど、さっきみたいな事があったら困るからね。アリスを全力でゴーするなら、特にキャロラインには引っ込んでてもらいたいんだよ」
「は、はっきり言うな、お前は相変わらず」

 ノアの言葉にティナは引きつったが、名指しで邪魔者扱いと引っ込んでろ宣言をされた5人は完全に固まっている。

「ま、まぁノアが毒吐くのは今に始まった事じゃないしな。ていうか、核なの? 源の木じゃなくて?」
「うん、核に居て。源の木はこれから使うから。子どもたちにもすぐに避難するよう誰か言っておいてね」

 そう言ってノアはニコッと微笑んだ。その笑顔を見て仲間たちは全員何かを察したように頷く。

「それじゃあ作戦を開始しようか。アリス、ゴーする準備しておいてね」
「分かった!」

 仲間たちは自分たちのレインボー隊をアランに渡し、ノアとカインが指示した場所にそれぞれ散っていく。その間にも、アメリアの攻撃は段々激しくなってきた。
 

「兄さま、影達はどうする?」
「リー君達についていってもらおうか」
「分かった」

 アリスは頷いて影たちにリアン達の元へ行くよう伝えると、すぐさま三人の影はリアンとオリバーの後を追っていく。

 全員が所定の位置についたのを確認してノアが手を上げると、あちこちからアメリアに向けて銃撃が始まった。

 それに反応したのか、アメリアの錫杖が光を四方八方にばら撒く。そしてその光が消えた後には、キリの言う起き上がり小法師兵がわんさか生まれていた。

「あいつら使って武器壊す気かな?」
「多分ね。キリ、準備はいい?」
「ええ、大丈夫です」
「それじゃあ僕たちも行こうか。どうにかしてアメリアの注意を引いて、オズに錫杖を一時的に止めてもらわないと」
「分かった!」

 アリスはもう一度自分に魔法をかけると、アメリアの金の光りを避けながらアメリアに近づく。アメリアはアリスの動きには気づいていないようで、どこから飛んでくるか分からない銃弾に悪態をつきながらキョロキョロしている。

 アリスはどうにかアメリアの後ろに回り込んで透明の古代妖精に張り付いた。そのままアメリアの所までよじ登っていると、ある事に気づいた。遠目で見たら透明だった古代妖精は、近くで見ると体の中を根のような物が這っていた。そしてちょうどお腹の辺りに何か拳ぐらいの黒いものが見える。

「なんだろ、あれ」

 アリスがじっと目を凝らすと、それは何かの種だ。そこから伸びた根はそのまま古代妖精の中心を通り、首元にまで達している。

「あれってもしかして……」

 アリスは呟いてさらに古代妖精によじ登っていると、くるりと振り向いたアメリアとばっちり目があってしまう。

「やば!」

 アリスはすぐさま古代妖精から飛び降りると、全速力で誰も居ない方角に向かって走り出した。そんなアリスの背中にアメリアの高笑いと攻撃音が聞こえてくる。

 首だけで振り返ると、そこにはアメリアの兵士たちが真っ直ぐアリスだけに狙いを定めて走ってくるのが見えた。

「あなたにその人達が倒せるかしら? ねぇ、心優しきアリスさん?」

 アメリアは錫杖を振り上げて、ありとあらゆる生物を模した兵士を作り上げた。アリスは普段あれほど博愛を主張するのだ。こういう敵なら少しは躊躇するのではないかと思ったが、生憎アリスの攻撃はそんな事では怯みもしない。

「まぁ、なんて野蛮なのかしらね」

 大人も子供も女も男も犬も猫も狼もトラもアリスの剣で次々になぎ倒されてしまうが、そんな光景を見てアメリアは呆れたように言った。それが聞こえたのか、アリスが叫ぶ。

「そんなね、視覚的な物に騙されてようじゃ愛は語れないよ! 姿がどれだけ似てても悪ゴリラは悪ゴリラ。魂の入っていない器なんて、私にはみ~んな悪ゴリラにしか見えないからね!」

 だから間違えない。わざわざ目を凝らさなくてもアリスには本質がしっかりと見えているから。

「それともあんたはキレイな見た目に騙されるのかな~? あ、だからそんな容姿と肩書にばっかこだわるんだね!」

 アリスは言いながら向かってくる敵を片っ端から切り捨てた。ノアのように精神攻撃をしてやろうと思ったが、なかなか難しい。

 アリスの言葉にアメリアは笑った。

「ふふふ、面白いことを言うのね、あなた。まぁ人間如きが神の前でどれほど頑張った所でそれは無意味。神があなた達みたいな生物を相手にでもすると思うの?」
「えー。だってあんたまだ神様じゃないじゃん。神さまの杖とバラを手に入れただけのただのおばさんじゃん。そもそも今、ここには妖精王とオズが居るのにどうやってあの二人倒すのよ」
「ああ、ハエが何か言ってるわ。そんな簡単な事も分からないだなんて! この錫杖とバラの力をまだ理解していないようね。妖精王はもう消えたわ。そしてヴァニタスと引き剥がされた哀れな死に損ないの妖精王など、私の脅威にもならない!」

 そう言ってアメリアは後ろに向かって力を放った。その途端、バラと錫杖が呼応して後ろから迫っていたオズワルドに向かって光の束が飛んでいく。

「オズ!」
「っと!」

 オズワルドは様子見がてらアメリアに背後から近寄ってみたが、どうやら錫杖を使いすぎたアメリアは錫杖に取り込まれ始めているようだ。

「大丈夫!?」
「問題ないさ。なるほどな。アリス、撤退するぞ」
「え!?」
「いいから早く」

 オズワルドはそう言ってアリスの体を丸い球で無理やり包んで、そのまま転移した。

「ちょちょ! オズ! まだ兄さまたちが……」
「あいつらは大丈夫。妖精王が行ってる。あと、ちょっと気づいた事がある」
「……分かった」

 アリスは素直に頷いた。あの状態のアメリアにはどのみちアリスでも敵わない。バラを取り上げない限り、アリスにはアメリアに手出しする事すら出来ないのだ。

 オズワルドに連れられてアメリアから十分な距離を取ったアリス達は、皆のもとに急いだ。

「兄さま! キリ! 皆もここに居たんだね!」

 先程の場所からはるか離れた森の中に居た仲間たちを見つけてアリスが近寄ると、何やらブヨッっとした透明な膜に行き当たった。

「ここだけ一時的に目眩ましと魔力を遮断するよう魔法をかけています。アリスさん、早く!」
「分かった!」

 アランに言われてアリスは急いで膜の中に入ると、それまでゴリラだった仲間たちがあっという間に人間に戻る。

「アリス、どうだった?」
「全然近づけない。ていうか、兄さま達はどこで何してたの?」
「下から古代妖精の弱点とか無いか探してたんだけど、あれ中身何? 内蔵?」

 下からキリと二人で古代妖精によじ登ったりつついてみたりしていたノアが言うと、アリスは首を振った。

「違うよ。なんかね、お腹の所にこれぐらいの何かの種があった。そこから根っこが伸びてて、首の後ろ辺りまでいってたよ」
「あれは根っこか! キリと何だろうって言ってたんだよ。毛細血管みたいになってたから、てっきり内蔵かと思ってたよ」

 そう言って笑うノアに妖精王が顔をしかめた。

「そんなものが歩いてきたら気味が悪いだろうが! しかし、それはもしかしてバラの根、か?」
「恐らくな。あれは大地の妖精だ。初代はバラを聖女の体にではなくて、大地の妖精に植え付けたんだろう。そしてそこから摘み取ったバラを聖女に渡した」

 オズワルドの言葉に仲間たちは何かに気づいた。

「それはもしかしてその根っこをどうにかしない限りバラは枯れないのではないですか?」

 顔面蒼白でシャルルが言うと、オズワルドも妖精王も頷く。

「多分そうなんだろうな。けど、あれだけがっつり根っこが這ってたら抜くのは厳しいだろ」
「そうなると大地の妖精ごと消してもう一度新しく大地を創るしかなくなるのだが……」

 難しい顔をして言う妖精王に、すぐさまアリスが飛びかかってきた。

「駄目だよ! 妖精王は畑とかした事ないから知らないかもしれないけど、今ある大地を作り直したりしたら、全世界の今まで育ててきた土が死んじゃうのと同じことだよ!」
「そ、それの何がいけないのだ」
「それをすると、農業が全くの一からになっちゃうって言ってんの! その間の作物どうするの!?」
「むぅ……そうか……それはそうだな……参ったな」
「それからもう一つ気づいた事があるんだけど」
「まだあるのか! 今度は何だ!」

 大地の妖精の報告だけでもうんざりなのに、その上オズワルドが他にも何か気づいたという。妖精王はとうとうその場で地団駄を踏んでオズワルドを睨みつけると、オズワルドはフンと鼻を鳴らして話しだした。

「アメリアは錫杖に吸収され始めてる」
「どういう事だ?」
「まるで後ろに目があるみたいに俺の気配に気づいた。俺は最大限まで力を落としてたけど、今のアメリアは既に錫杖に使われる側だ」
「……という事は何か。アメリアの意志と錫杖の意志がとうとう融合してしまったと言うことか?」
「そういう事。今のアメリアに死角はないと思った方がいい」

 オズワルドの言葉に仲間たちは黙り込む。どうやら錫杖の力を一時的に抑えるという事はもう出来ないようだ。

「情報ありがとう、オズ。そっか、困ったね。どうしよっかね」
「どうしよっかねじゃないよ! 本当にどうすんの!?」

 あまりにも呑気なノアにリアンが掴みかかると、ノアは肩を竦めただけだ。どうやら本当に何も思いつかないらしい。

「今の状態では材料が足りなさすぎるね。事を急いても失敗するだけだよ」
「だからと言って今までみたいにもう待ってばかりじゃいられないよ、兄さん」
「皆話してる所悪いが、俺たちはそろそろ戦闘に戻った方がいいんじゃねぇか? ここら辺にまで兵士が溢れ出してきてるぞ」
「本当だな。エリスの言う通り、徐々に兵士がまた増えているな」

 結界の中から見る限り、アメリアの兵士は爆発的に増えだしてきている。どうやらアメリアはもうなりふり構わず兵士を犠牲にしだしたようだ。

「仕方ないね。何か次の材料が到着するまで僕たちはひたすらあっちの兵士を減らす事に専念しようか。また何かあったらここに集まろう。ニコラさんとカールさんは中継役をお願い。妖精王はもう少し隠れてて。オズは僕たちと一緒に兵士の数を減らしてほしい」

 ノアの言葉に一番に結界から出て行ったのはアンソニーだ。今までアンソニーが本気で戦っている所を見たことが無かった一同は、アンソニーの巧みすぎる剣捌きに思わず見とれてしまう。

「一体どんな鍛錬をしたらあんな洗練されるんだよ」
「流石に何百年も生きてきただけあるな」
「私も何百年も生きたらあんな風になれるかなぁ?」
「お嬢様、それは大変迷惑なので勘弁してください」

 とは言え、アンソニーの動きは素晴らしい。キリは剣を担ぎ上げてノアとアリスをチラリと見た。

「我々も行きましょう」
「そうだね。アラン、シャルル、シャルはそれぞれ分かれてどこかのチームに入ってね。それじゃあ、行こうか」

 そう言ってノア達も結界から飛び出した。数ではこちらが圧倒的に不利だが、こちらには妖精王とオズワルドが居る。

 そんな中、オズワルドと妖精王は首を傾げた。

「待て、ノア。我が隠れているのは分かるが、オズがここで魔力を消費するのはマズいのではないか?」
「そうだよ。俺は一時的に錫杖を何とかしなきゃいけないんだろ?」
「それはもういいよ。アメリアが錫杖に取り込まれ始めてるなら、同時に何とかしないと。それにさっきも言ったでしょ? 本物の神の力を見せてあげるって」
「……本物の神はここにいるが」
「俺は神ではないけど、神と同様の力はあるけど」
「いやいや、君たちじゃ駄目なんだよ。大丈夫。僕は無慈悲だから上手くやるよ」

 そう言ってノアがニコッと笑うと、妖精王はおろかオズワルドまで引きつっている。

「妖精王、オズ。ノアはやると言ったらやる。恐らく俺たちには考えつかないようなエグい事を考えているだろうが、結果それが星を守る事になるんだ。深く気にせず戦いに臨もう」
「アーロ……そうは言うがお前、あまり倫理に反する事はだな……」

 思わず言い返そうとした妖精王にノアがさらに笑った。

「倫理? アメリアに倫理がある? そんな甘っちょろい事言ってるからこんな事になったんだっていい加減自覚してね? アリスも、今回ばかりは君が何を言おうとも僕は譲らないよ?」
「う、うん……分かってるよぅ」

 あまりにも笑顔が怖いノアに流石のアリスも渋々頷いた。

 そもそも絵美里達に慈悲をかけたばかりに今、こうなっているのだ。今回ばかりはノアが何をしようとも従う覚悟でいる。

 そうこうしている間にもアメリアの兵士たちはじわじわと増えてきているのだ。こんな所で呑気にお喋りをしている場合ではない。

「とりあえず兄さま! 私達も行こ!」
「そうだね。それじゃあそういう訳だから、妖精王はいざって時まで核にでも行ってて。それじゃあ行くよ、アリス、キリ、オズ」

 そう言ってノアは結界から出るなり大剣を振りかぶって子供を模したアメリアの兵士たちをなぎ倒した。

「あいつ、何の躊躇いもないな。エリス一体どういう育て方をしたんだ」
「お、俺に言うな! ノアに関しては元々ああなんだ!」

 アーロの呆れたような白い目にエリスが慌てて言うと、アーロは少しだけ笑って結界を出て行った。その後にエリスも続く。

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