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一章~新入生親睦会~
手紙
しおりを挟むふう。
衣装合わせをした夜、自室では全ての窓の鍵を閉め、カーテンを覆い、やっと居間のソファーに座る。髪紐をほどき、制服のホックを外す。
はあ。親睦会が終わるまでは大変そうだな。いや、このぐらいで弱音を吐けないか。誰にも僕の本当の姿を、言えないのだから。
そんな時、扉のポストの微かな音に気づく。素早くポストに手を入れると、1つの封筒を手にした。 表を見れば春宮家の家紋が押され、厳重に封がされている。
間違えても誰かが途中で覗ける事は無いだろう。
「………えーと?」
丁寧に封を切れば、品の良い一枚の便箋が。
父様から?一体何だろうか?
春宮現当主は、冷静沈着で完璧主義を徹底している。
もしかしたら…何か怒られるのかな。いや、やはり次期当主はさせない?とか。
思わず嫌な想像を巡らせるが、書かれた文章は簡潔的であった。
『千里へ。早く三人目を見つけるように。月宮がお前を探っている。充分注意しなさい。』
ん?
考えながら、手紙を細かく切り刻み蝋燭に火をつけて燃やしてしまう。情報という物は万が一にも、奪われてはならない。手紙を処分し、内容を振り返る。
三人目…敵に回さない様に言われた三人目を見つけろって事か。でも、少しぐらい情報をくれても良いのに。
溜め息を吐いてしまう。
それと、月宮?Sクラスには居たが…物静かで、目立たない人柄だった気がする。しかし、態々名指しで教えられたのだ。気を付けた方が良いだろう。…本当にストレスが溜まる。
体型を維持する為に好きな物をセーブし、同性と気楽に話せる事も出来ない。買い物場所も限られているし、娯楽も少ない。他の者は、映画を見たりカラオケをしてるそうだが…。僕は歌えないんだよ。音楽を聴くのも、限界があるし。
ああ、あと…もう1つあったっけ。セックス、か。それは、僕が男だったら出来ただろうね。たまーに、美景の目を掻い潜った親衛隊の子に誘われるけども。僕もしたいけどね。服は脱げないし、バラせないし。本当に男?って位可愛い子もいるから、良いかもって思う時もあるけど。
思春期の千里にとって、そういった情報が飛び交うこの学校で暮らすには、少々危うい時もある。
僕も、してみたいんだよね。うわ…何か女々しいな。
あの、美景に触れて、篠村を痛め付けた時の高揚感は、時たま千里を襲う。
ダメダメ。
小さく頭を振り、風呂場に入ると冷たいシャワーを浴びる。
僕って、変態か?
そう思っている正にその時、直久は取っ替え引っ替え小柄な少年と交わり、秋道寺はアブノーマルプレイを楽しみ、美景は千里の写真で自分を慰めていたりする。
「…喉乾いた。」
風呂から上がり、サラシを巻いてTシャツにジャージを身に付ける。風呂以外は、サラシは外さない様にしているのだ。親衛隊の差し入れてくれた、ミネラルウォーターを一口飲む。
さあ、寝よっかな?
ソファーで座り、テレビを付けた時、異変に気付いた。
ん?体が暑い。
まるで、体が熱を出した様に体温を上げていく。息も浅くなり、視界もぼやけてきた。
あれ?何これ。
気付くと、体の奥底がビリッと痺れている。何とか寝室に入り、布団にくるまる。いっぱいいっぱいの体だが、思考はまだ残っている。
あの、ミネラルウォーターのせい?か。これって…まさか……び、やく?
「……っ……はあ。まずい、な…。」
まさか、親衛隊の子に盛られるとは思わなかった。美景が知ったら、その子消されるな…。ぐっと拳を握り、唇を噛み締めた。駄目だ。鎮まらない。
通常より思考が変わる頭で、普段なら絶対にしない行動をしていた。携帯を取り、電話帳を開く。
一人目…。
「…直久、出ないな…。」
千載一遇のチャンスを逃した冬宮直久は、シャワー中である。
二人目…。
「……恵?」
『…もしもし?どうしたの千里?」
少し間を置いて出た相手は、変わらず可愛らしい声で答える。
うわ…声だけで、腰にくる。
「…恵。あの……。」
『千里?』
どう言えば良い?よく考えたら、僕おかしいよ。いーや、もう。
「…僕の、部屋に来て?」
普段より更に艶のある声で言い、携帯を閉じる。
もう…限界。
ドアを開けて、布団に横になる。
どうしよ。本当に来たら、どうする気だよ。
熱い体で歯を食い縛っていると、控えめにドアが開けられた。
「…失礼しまーす。…千里~?」
長袖Tシャツに、ハーフパンツの美少年が、そろそろと寝室を覗いてきた。凄く可愛い。
「…千里?……え?!どうしたの!」
布団に潜り顔の赤い千里に気付き、恵は慌てて側に駆け寄る。
「…ごめん…呼んで…。」
「良いんだよ!それより、どうしたの?風邪?」
心配そうに顔を覗いて来る相手に、千里は一瞬躊躇うも口を開く。
「…媚薬、盛られた…かも。」
息の浅く、普段の余裕の無い千里に、恵は固まる。
「…媚薬?……え、えーっと。」
初めは盛った相手に怒り眉を寄せるが、千里の表情を見て、今度は頬を朱に染める。
(僕を呼んだのって、そーゆう事?)
唾を飲み込み、恵はベッドに上がり、千里の瞳を見つめる。どんなに可愛らしくても恵も男である。それを、千里は失念していた。
「……抜こっか?」
頬を染める恵の瞳の奥に、男の本能が生まれた。
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