王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

3日目と知る

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着替えを終えて、気持ちを切り替え学校に向かう。

校内では、変わらずに挨拶を交わしていくが、やはり恵の事での噂が広がっている。今は、あまり目立つアプローチは出来ないか。刺激を与えて恵に危害を加えられても困る。

「…おはよ、う…千里。」

教室に着く直前、丁度足を止めた所に視線が重なった。相手は一瞬目を泳がせるが、最後には照れた様にはにかむ。

「ああ、おはよう智。」
「おっはよーう!千里ちゃ~ん!」

智に微笑み返すと、後ろからまた新たな声に気付く。
朝から元気だな。

「おはよう、明日霞。」

昨日の事でか、妙に機嫌の良い相手に微笑むと、更に嬉しそうに手を握られる。
のだが…。直後にそれは剥がされていた。

「…おい、何なの?お前。」

明日霞の若干キレ気味の視線にも動揺など見せず、千里の手を丁寧に手巾で拭う人物は恭しく頭を下げる。

「失礼致しました。少々距離が近過ぎるかと思い…。」
「はあ?執事が主人の交友関係にまで、口出しすんなよ。」

…何だろう、この雰囲気は。
何となく止めに入りづらく、双方の出方を見守る。
明日霞の反論に、夏雪の答えは簡潔であった。

「ええ。口出しは致しませんが、手出しはさせて頂きます。」

通常通りの無表情を貫く夏雪だが、明日霞と見ていた智も驚きに目を見開く。

(こいつ、こんなんだったっけ?)
(…この執事、もしかして?)

3人の視線が交わる中で、やっと千里の涼やかな声が通る。

「さあ、そろそろHRも始まるから行こうか?…では雪、また後で。」
「っは。それでは、失礼致します。」

千里の半分追い払う様に目で促すと、小さく頷き間を空けずその場を立ち去って行った。その後ろ姿に明日霞と智は二人で目配せしているが、千里には知るべくも無い。

「ねえ、何でアイツ前髪上げる様になったの?イメチェン?」

理由を勿論知る千里だが、しずらい説明は胸に秘めておいた。

「うーん。そうかもしれないね。」

苦笑に留め、教室内に入ると席に着く月宮の姿を視界に映す。

「おはよう、月宮。」

敢えて笑顔で挨拶を送ると、月宮はそれには返さずにじっと千里を見上げる。

「…宝物を取り返す気になったらしいね?」

宝物…か。確かにそうかもしれない。

「ああ、必ず。囚われの妖精をこの腕に返して貰うつもりだよ。」

真っ直ぐに見据える瞳に、月宮も何やら考えている様だが、感情は分からない。

「…それは、楽しみにしているよ。」

月宮の言葉にただにこりと笑い返し、席へと腰を下ろす。そこで教室内に張り積めた息苦しい雰囲気は、やっと落ち着きを戻す。
恵の姿は見えないが、まだ月宮の部屋に居るのだろうか?

HRが始まる直前に教室に入ってきた直久は、月宮に不快そうな視線を向けて直ぐに逸らし千里の隣に座る。Sクラスの生徒も三大家の関係性を理解してきたのか、怖々と様子を伺っている者が多い。

「よお、千里。」
「おはよう直久。また忙しそうだね。」
「…ああまあな。城ヶ根が、いや。」

そこで直久が口ごもる。千里は婚約の情報を掴んでいるのだが、直久としては想いを抱く相手に知られたくない様だ。
つい口走った「城ヶ根」の名前だが、思いを汲んで言及せずに置く。

ガララ…

「おはようございます。それではHRを始めますよ。」

担任の言葉に顔を上げて、一度目を閉じる。
今日が、運命の別れ道と言った所だね。僕を慕う者、味方をする者、信じてくれる者の為に…彼を必ず。





HRから午前の授業を変わらずに受け、お昼の誘いを全て断りある場所に向かう。普段はほとんど使われていない此処は、中に入ると少し埃っぽい空気が舞う。

「…おやあ?よく俺の場所が分かりましたね~?暫ちゃん感激~。」

放送準備室と書かれたプレートの部屋には、フードを被る男が窓辺に寄り掛かり、千里の姿に唇を吊り上げる。

放送準備室という所が、全校放送する予定の当て付けに思えてしまうな。

「それでどうしました~?まさか愛の告白とか?」

至極楽しそうな黒鎖にペースを持っていかれない様に注意し、少し離れた机に腰を下ろして足を組む。

「そうだね、少し話してみようと思って。」
「……はい?」

家の力は使わず、自分の力と親衛隊と夏雪、友人達の力を借りて黒鎖の事をできる限り調べて見た。しかし、彼自身の情報操作か、月宮に守られているからか、使える情報はほとんど無いのだった。
だから、こそこそ調べるのは終わりにした。

「そう、君と二人で話してみようと思ってね?」
「…なるほど。確かに執事君の気配が無いねー。危機感が薄いんじゃないんですか?」

ふふ、と思わず笑う。そう、雪には直久の情報を集めて欲しいと、無難な命を出して来た。友人と食事をすると言って置いたので、暫くは気付かれないだろう。 

「君とは、一対一で話さないと意味が無い気がしてね。」
「そうですか~。じゃあ、質問タイムと行きますか。第一問、ジャジャン…。」

僅かに黒鎖の笑みが止んだ様に見えたが、直ぐにいつもの笑みに戻り、彼の勝手な流れを作ってしまう。しかし黒鎖のその言葉が終える前に、千里の静かな声が切り込む。

「第一問、この二日間の僕の贈り物をどう思った?」




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