王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

星河の驚愕side星河

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この日、冬宮、春宮が学園を欠席していた。Aクラスは桐埼が欠席していたらしいが、それはまあ良いとして。
初めは春宮が、休みを続ける冬宮を追ったのだ。女々しい想像をしてみたが、それは直ぐに崩れた。

「えー!千里ちゃん風邪なの?!」
「はい、ですので自宅で療養されているそうで…心配です。」

Sクラスでの月宮様がご覧になったのは、秋道寺と園原のそんな会話だったらしい。確かに、冬宮の所に行くなら園原と夏雪は連れて行くだろう。それなのに、その二人は普通に登校している。

…ふふ、春宮の居ない隙にどんどん月宮様派を大きくするぞ!

上機嫌で向かったのは、風紀室の隣室。その部屋の端に置かれた簡易ベッドに眠る少年に近付くと、感情の乗らない瞳で見下ろす。

「まーた、薬が切れたんですね?お薬を飲ませないと。」 

普段は儚げだと言われる雰囲気など微塵もなく、数粒入った錠剤の小瓶を懐から出した。

良いな…月宮様にキスされて。でも、ちょっと不憫だね。好きな人を忘れちゃうなんて。クス。
ふと、眠る少年が身じろぎし、目蓋が上がり星河と目が合う。

「おはようございます、また栄養剤をお持ちしました。」

安心させる笑みを浮かべる星河だが、少年…桜川の瞳は不安に揺れている。

「…ねえ、やっぱり飲まないと駄目?」
「どうしたんですか?」
「だって…」

上半身を起こした桜川は両手で顔を覆い体を震わす。

「…それを飲むと、何だか大切な事を忘れちゃう気がして…!」

涙を拭う様も絵になる桜川の姿は、情のある者なら心を揺らされる姿だろう。
しかし、星河という人間は違う。

「大丈夫ですよ。これは、桜川さんが元気になる為の物。ね、早く飲んで月宮様の元へ行きましょう?」

時間を取らせないでよ。君なんかが。

最終的には頷く相手に、水の入ったコップと錠剤を渡す。星河にとって、月宮以外の人間の存在は無い。月宮にとって、価値が有るか無いかそれだけ。

瞳に滴を溜める桜川を黙って見つめる。ゆっくりと、錠剤が口に入れられ臙下されていく。飲み込んで、体を横たえ少しずつ目が虚ろになる桜川。

「心配しなくても、あと少しで月宮様の物になれますよ。」

さてと、月宮様の所へ行こうかな。
星河が体の向きを変えた時、桜川の声が耳に入る。うわ言かと思う星河だったが、次の言葉に思考が止まる。

「…やだ、やだよ、せん…り…だって…僕が、僕が…いっしょに、いない…と…」

うわ言?夢かな?

「…だって……千里は…………………………………女の子、だから…………。」

………え?

「…今、なんて?」

星河が反応を返す頃には、既に桜川は夢の中であった。

…どういう意味だ?女の子?春宮が女の子?
支離滅裂だし、ただの願望だろう。
でも、万が一…万が一本当だったら?

星河の体に、正体の知れない震えが起こった。




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