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第6話 初めての贈り物
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「……これ、殿下に受け取っていただけますか?」
宮廷の庭園の奥まった場所。リオンはぎこちない笑みを浮かべながら、小さな花束を両手に差し出していた。向かいにはエデン王子。少し呆れたような顔で花束を見下ろす。
「花束? 何のつもりだ」
エデンは興味がない風を装いながらも、わずかに視線を留める。鮮やかな青い花が数輪、小さくまとまっている。王宮の庭園から摘まれたらしいが、どこか素朴さを感じる一束だ。
「その……殿下に……いつもお世話になっているわけでもないんですけど……お礼、というか、感謝の気持ちです」
リオンは顔を赤らめながら言葉を紡ぐ。実際のところ、エデンに対して特別『世話になった』わけではない。ただ、この花を見たとき、なぜか真っ先にエデンを思い浮かべてしまったのだ。
「感謝……?」
エデンは訝しげに眉をひそめるが、リオンは臆さない。実は先日、リオンは父アルベールに誘われて王宮に来た際、ちょうど庭園でエデンを見かけて勢いで声をかけた。冷たい返事しか返ってこなかったが、なぜかそこに嫌悪感はなく、むしろエデンの存在がどんどん気になっていく。
「僕、殿下にいろいろと迷惑ばかりかけてる気がして……だから、ほんの気持ちです」
エデンはやや面食らったように、花束からリオンの頬へと視線を移す。すると、その耳は真っ赤に染まっていた。
「……まあ、もらっておいてやる」
エデンはわざとらしくそっけない口調で言いながらも、その手は花束を受け取り、軽く鼻先に寄せる。
「(……悪くない香りだ)」
そう思いつつも素直に言葉にできない。隣でリオンは、ほっとしたように胸を撫で下ろした。
「よかった……ありがとうございます、殿下」
その表情は嬉しそうで、エデンの胸中にかすかなざわめきを生む。男同士で、こんな花を贈り合うのは普通ではない。けれど、リオンが抱くまっすぐな気持ちは嘘ではないように感じた。
「殿下、実は……その、もっといろいろお話したいのですが、お忙しいですよね」
リオンが小声で続けると、エデンは少し口角を上げる。
「確かに忙しいが、お前の用件は何だ」
「特に……用件は、ないです。けど……ただ、殿下ともう少し一緒にいたいと思って……」
あまりにも率直な言葉に、エデンの心は軽く動揺する。イーサンや他の近衛騎士たちならば、決して言わないような無防備なセリフだ。
「……お前、面白いな」
エデンがそう呟くと、リオンは目を瞬かせる。
「え? 面白い、ですか?」
「そうだ。王族にこんな風に接してくるやつはそうはいない。……まあ、嫌いじゃない」
それはエデンなりの最大限の肯定だった。リオンは顔をさらに赤く染め、嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます……! もっとお話しさせてください!」
その勢いに若干呆れながらも、エデンは「仕方ないな」とつぶやく。かくして、強気な王子と内気な男爵家の青年の奇妙な交流は、ゆっくりと始まりつつあった。
宮廷の庭園の奥まった場所。リオンはぎこちない笑みを浮かべながら、小さな花束を両手に差し出していた。向かいにはエデン王子。少し呆れたような顔で花束を見下ろす。
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「感謝……?」
エデンは訝しげに眉をひそめるが、リオンは臆さない。実は先日、リオンは父アルベールに誘われて王宮に来た際、ちょうど庭園でエデンを見かけて勢いで声をかけた。冷たい返事しか返ってこなかったが、なぜかそこに嫌悪感はなく、むしろエデンの存在がどんどん気になっていく。
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エデンはやや面食らったように、花束からリオンの頬へと視線を移す。すると、その耳は真っ赤に染まっていた。
「……まあ、もらっておいてやる」
エデンはわざとらしくそっけない口調で言いながらも、その手は花束を受け取り、軽く鼻先に寄せる。
「(……悪くない香りだ)」
そう思いつつも素直に言葉にできない。隣でリオンは、ほっとしたように胸を撫で下ろした。
「よかった……ありがとうございます、殿下」
その表情は嬉しそうで、エデンの胸中にかすかなざわめきを生む。男同士で、こんな花を贈り合うのは普通ではない。けれど、リオンが抱くまっすぐな気持ちは嘘ではないように感じた。
「殿下、実は……その、もっといろいろお話したいのですが、お忙しいですよね」
リオンが小声で続けると、エデンは少し口角を上げる。
「確かに忙しいが、お前の用件は何だ」
「特に……用件は、ないです。けど……ただ、殿下ともう少し一緒にいたいと思って……」
あまりにも率直な言葉に、エデンの心は軽く動揺する。イーサンや他の近衛騎士たちならば、決して言わないような無防備なセリフだ。
「……お前、面白いな」
エデンがそう呟くと、リオンは目を瞬かせる。
「え? 面白い、ですか?」
「そうだ。王族にこんな風に接してくるやつはそうはいない。……まあ、嫌いじゃない」
それはエデンなりの最大限の肯定だった。リオンは顔をさらに赤く染め、嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます……! もっとお話しさせてください!」
その勢いに若干呆れながらも、エデンは「仕方ないな」とつぶやく。かくして、強気な王子と内気な男爵家の青年の奇妙な交流は、ゆっくりと始まりつつあった。
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