12 / 50
第12話 壁を感じるエデン
しおりを挟む
「エデン、あなたが男性と踊るなんて……本気なの?」
姉のセシリアが驚いた様子で問いかける。エデンは部屋のソファで腕を組み、視線を宙に泳がせる。
「まだ決めたわけじゃない。あいつが勝手に言ってきただけだ」
口調こそ不機嫌そうだが、エデンの心にはリオンの強いまなざしが残っている。正直、あり得ない申し出だと思いつつも、頭のどこかで引っかかって離れない。
セシリアは弟の態度に半ば呆れたような笑みを浮かべる。
「でも、あの男爵家の子……リオンという子だったかしら? 弟がそこまで気にかけているのは珍しいわね」
「気にかけているわけじゃない。あいつは自分の意志が強いだけだ」
そう否定しながらも、エデンは無意識のうちにリオンの姿を思い出す。内気な外見に似合わない行動力。自分にまっすぐ話しかけてくる姿勢。今まで誰からも受けたことのないタイプの好意だ。
セシリアはそんな弟の様子を見透かすように微笑む。
「別にいいじゃない。あなたがどう思おうが、人は勝手に噂をするわよ。……ただ、エデン。王家の立場を忘れないで」
「分かっている。そのつもりだ」
エデンはぶっきらぼうに返事をするが、その胸中は穏やかではない。彼が王族である以上、何をするにも周囲の反応や政治的思惑がつきまとう。リオンに対して興味を抱くことさえ、本来なら軽率なのだろう。
「(でも、あいつが俺をどう思おうと自由だ。俺がそれに応えるかは別……)」
そう自分に言い聞かせる。しかし、舞踏会の誘いを即答で断れなかったのは事実だ。いつもなら、面倒だと切り捨てて終わっていただろうに。
「エデン、悩みすぎないで。あなたがどうしたいかは、あなた自身が一番分かっているはずよ」
セシリアはそう言って部屋を後にする。エデンは一人ソファに残され、ゆっくりと息を吐いた。
「(俺が本当に望むこと……リオンと踊ることなのか?)」
そんな問いが頭をよぎる。もしそれを実行すれば、男同士で目立つことになるのは必至。周りからの反発もあるだろう。それでもリオンは構わないと望んだ。
窓の外を見やると、澄んだ青空が広がっている。王宮の美しい庭園が視界に入るたび、エデンはあのバラ園での会話を思い出す。
「(あいつは、俺を何も求めず、ただ隣にいたいと言った。そんな存在、今までいたか……?)」
強気な王子の胸には、初めての迷いが小さな波紋となって広がり始めていた。
姉のセシリアが驚いた様子で問いかける。エデンは部屋のソファで腕を組み、視線を宙に泳がせる。
「まだ決めたわけじゃない。あいつが勝手に言ってきただけだ」
口調こそ不機嫌そうだが、エデンの心にはリオンの強いまなざしが残っている。正直、あり得ない申し出だと思いつつも、頭のどこかで引っかかって離れない。
セシリアは弟の態度に半ば呆れたような笑みを浮かべる。
「でも、あの男爵家の子……リオンという子だったかしら? 弟がそこまで気にかけているのは珍しいわね」
「気にかけているわけじゃない。あいつは自分の意志が強いだけだ」
そう否定しながらも、エデンは無意識のうちにリオンの姿を思い出す。内気な外見に似合わない行動力。自分にまっすぐ話しかけてくる姿勢。今まで誰からも受けたことのないタイプの好意だ。
セシリアはそんな弟の様子を見透かすように微笑む。
「別にいいじゃない。あなたがどう思おうが、人は勝手に噂をするわよ。……ただ、エデン。王家の立場を忘れないで」
「分かっている。そのつもりだ」
エデンはぶっきらぼうに返事をするが、その胸中は穏やかではない。彼が王族である以上、何をするにも周囲の反応や政治的思惑がつきまとう。リオンに対して興味を抱くことさえ、本来なら軽率なのだろう。
「(でも、あいつが俺をどう思おうと自由だ。俺がそれに応えるかは別……)」
そう自分に言い聞かせる。しかし、舞踏会の誘いを即答で断れなかったのは事実だ。いつもなら、面倒だと切り捨てて終わっていただろうに。
「エデン、悩みすぎないで。あなたがどうしたいかは、あなた自身が一番分かっているはずよ」
セシリアはそう言って部屋を後にする。エデンは一人ソファに残され、ゆっくりと息を吐いた。
「(俺が本当に望むこと……リオンと踊ることなのか?)」
そんな問いが頭をよぎる。もしそれを実行すれば、男同士で目立つことになるのは必至。周りからの反発もあるだろう。それでもリオンは構わないと望んだ。
窓の外を見やると、澄んだ青空が広がっている。王宮の美しい庭園が視界に入るたび、エデンはあのバラ園での会話を思い出す。
「(あいつは、俺を何も求めず、ただ隣にいたいと言った。そんな存在、今までいたか……?)」
強気な王子の胸には、初めての迷いが小さな波紋となって広がり始めていた。
1
あなたにおすすめの小説
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
祖国に棄てられた少年は賢者に愛される
結衣可
BL
祖国に棄てられた少年――ユリアン。
彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。
その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。
絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。
誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。
棄てられた少年と、孤独な賢者。
陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる