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第12話 壁を感じるエデン
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「エデン、あなたが男性と踊るなんて……本気なの?」
姉のセシリアが驚いた様子で問いかける。エデンは部屋のソファで腕を組み、視線を宙に泳がせる。
「まだ決めたわけじゃない。あいつが勝手に言ってきただけだ」
口調こそ不機嫌そうだが、エデンの心にはリオンの強いまなざしが残っている。正直、あり得ない申し出だと思いつつも、頭のどこかで引っかかって離れない。
セシリアは弟の態度に半ば呆れたような笑みを浮かべる。
「でも、あの男爵家の子……リオンという子だったかしら? 弟がそこまで気にかけているのは珍しいわね」
「気にかけているわけじゃない。あいつは自分の意志が強いだけだ」
そう否定しながらも、エデンは無意識のうちにリオンの姿を思い出す。内気な外見に似合わない行動力。自分にまっすぐ話しかけてくる姿勢。今まで誰からも受けたことのないタイプの好意だ。
セシリアはそんな弟の様子を見透かすように微笑む。
「別にいいじゃない。あなたがどう思おうが、人は勝手に噂をするわよ。……ただ、エデン。王家の立場を忘れないで」
「分かっている。そのつもりだ」
エデンはぶっきらぼうに返事をするが、その胸中は穏やかではない。彼が王族である以上、何をするにも周囲の反応や政治的思惑がつきまとう。リオンに対して興味を抱くことさえ、本来なら軽率なのだろう。
「(でも、あいつが俺をどう思おうと自由だ。俺がそれに応えるかは別……)」
そう自分に言い聞かせる。しかし、舞踏会の誘いを即答で断れなかったのは事実だ。いつもなら、面倒だと切り捨てて終わっていただろうに。
「エデン、悩みすぎないで。あなたがどうしたいかは、あなた自身が一番分かっているはずよ」
セシリアはそう言って部屋を後にする。エデンは一人ソファに残され、ゆっくりと息を吐いた。
「(俺が本当に望むこと……リオンと踊ることなのか?)」
そんな問いが頭をよぎる。もしそれを実行すれば、男同士で目立つことになるのは必至。周りからの反発もあるだろう。それでもリオンは構わないと望んだ。
窓の外を見やると、澄んだ青空が広がっている。王宮の美しい庭園が視界に入るたび、エデンはあのバラ園での会話を思い出す。
「(あいつは、俺を何も求めず、ただ隣にいたいと言った。そんな存在、今までいたか……?)」
強気な王子の胸には、初めての迷いが小さな波紋となって広がり始めていた。
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セシリアは弟の態度に半ば呆れたような笑みを浮かべる。
「でも、あの男爵家の子……リオンという子だったかしら? 弟がそこまで気にかけているのは珍しいわね」
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そう否定しながらも、エデンは無意識のうちにリオンの姿を思い出す。内気な外見に似合わない行動力。自分にまっすぐ話しかけてくる姿勢。今まで誰からも受けたことのないタイプの好意だ。
セシリアはそんな弟の様子を見透かすように微笑む。
「別にいいじゃない。あなたがどう思おうが、人は勝手に噂をするわよ。……ただ、エデン。王家の立場を忘れないで」
「分かっている。そのつもりだ」
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「(でも、あいつが俺をどう思おうと自由だ。俺がそれに応えるかは別……)」
そう自分に言い聞かせる。しかし、舞踏会の誘いを即答で断れなかったのは事実だ。いつもなら、面倒だと切り捨てて終わっていただろうに。
「エデン、悩みすぎないで。あなたがどうしたいかは、あなた自身が一番分かっているはずよ」
セシリアはそう言って部屋を後にする。エデンは一人ソファに残され、ゆっくりと息を吐いた。
「(俺が本当に望むこと……リオンと踊ることなのか?)」
そんな問いが頭をよぎる。もしそれを実行すれば、男同士で目立つことになるのは必至。周りからの反発もあるだろう。それでもリオンは構わないと望んだ。
窓の外を見やると、澄んだ青空が広がっている。王宮の美しい庭園が視界に入るたび、エデンはあのバラ園での会話を思い出す。
「(あいつは、俺を何も求めず、ただ隣にいたいと言った。そんな存在、今までいたか……?)」
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