【完結】傲慢王子エデンと内気男爵リオンの恋模様

えるろって

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第22話 小さな火傷

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「はあ……どれが正解なんだろう」

  
リオンは王宮の庭園近くにある噴水の縁に腰掛け、ため息をつく。セシリアから励ましの言葉をもらったものの、実際にエデンと対峙すればどう切り出せばいいのか分からなかった。

  
「とにかく、謝りたい。殿下の気持ちを考えずに、自分のことばかりだったって……」

  
そんな独り言を呟いていると、視界の端にエデンの姿が見えた。庭園の奥の方で、何やら一人で考え事をしている様子。周囲には近衛騎士もおらず、珍しく一人だ。

  
「今がチャンスかも」

  
リオンは胸を高鳴らせながら立ち上がり、そっと近づこうとする。だが、不意に石畳の段差につまずいてしまい、バランスを崩した。

  
「わ、危ない」

  
リオンは慌てて手を伸ばすが、そこにあったのは庭園のランプを灯すための小さな油壺。バランスを崩した拍子に手を突っ込みかけてしまい、熱い衝撃が走る。

  
「痛っ……!」

  
軽い火傷を負ってしまったらしい。手のひらにじんわりと熱が広がってきて、リオンは顔をしかめた。そこへ、近くにいたエデンが素早く駆け寄ってくる。

  
「大丈夫か」

  
エデンがその腕を掴むと、リオンは驚いて目を見開く。自分を呼ぶ声が、予想以上に優しく響いた。

  
「すみません、殿下……少し火傷をしてしまったみたいで」

  
「謝るな。医務室へ行くぞ」

  
エデンは半ば強引にリオンの腕を取る。リオンは痛みと恥ずかしさで混乱しつつも、エデンに引っ張られるまま歩き出す。周囲の兵士たちも驚いているが、エデンの剣幕に口を挟む余地はない。

  
「そこにじっとしていろ」

  
医務室に着くと、エデンは慣れた手つきで冷やした布を用意し、リオンの手に当ててやる。熱が徐々に和らぎ、リオンは少しほっとした顔になる。

  
「ありがとうございます……殿下、こんなに優しくしてくださるなんて」

  
「うるさい。放っておいたらお前が余計な怪我でもするだろう」

  
エデンは口ではそう言いながらも、リオンの手を丁寧に扱ってくれる。その手付きの優しさに、リオンは思わず胸が熱くなる。

  
「殿下……」

  
改めてエデンの横顔を見つめると、彼はどことなく心配そうに眉をひそめている。衝突して以来、まともに話していなかったが、こうして会話してみると、やっぱり自分はエデンが好きなのだと実感する。

  
「すぐに痛みは引くだろうが、無理をするな。……馬鹿な怪我をするんじゃない」

  
「はい」

  
たったそれだけのやり取りでも、リオンの胸はいっぱいだった。痛みに涙が浮かんだわけではない。エデンの少しだけ寄り添う態度に、こみ上げるものがあるのだ。

  
「殿下、ありがとうございます。もう少し落ち着いたら……また、ちゃんとお話しさせていただけますか」

  
その問いに、エデンは小さく息を吐きながら視線をそらす。

  
「勝手にしろ」

  
不器用な返事だが、リオンはそれで十分だった。小さな火傷は痛むが、エデンが側で手当てしてくれた温もりが、なぜか心の痛みを和らげてくれる気がした。
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