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第30話 寵愛の証?
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「これは……王家の紋章が入ったアクセサリーですか」
ある朝、リオンの部屋へ小包が届いた。開けてみると、中には精巧に作られた小さなブローチが入っている。王家の紋章が象られた繊細な金属細工で、見るからに高価そうだ。
「差出人の名はありませんが、これって……もしかして殿下から?」
執事が不思議そうに首をかしげるが、リオンにはすぐに分かった。直感的に、エデン以外にこんな品を送ってくる人物はいないと思える。
「(どうして急に、こんな大切なものを)」
リオンは戸惑いながらも、そのブローチを手に取る。王家の紋章を身につけることは、普通の貴族には許されない行為だが、これはきっと「お守り」のような意味合いなのだろう。
リオンは居ても立ってもいられず、王宮へ出向いた。エデンが今日執務室にいることを確認し、思い切って面会を求める。周囲の視線は相変わらず冷たいが、そんなことを気にしている暇はなかった。
「殿下、こちらを……ありがとうございました」
執務室でエデンと二人きりになると、リオンはすぐにブローチを見せる。エデンはちらりとそれを見て、そっけなく言い放つ。
「別に大した意味はない。身を守るための一種の象徴だ。お前が俺の知り合いだという証拠になれば、下手に手を出す者も減るだろう」
その言葉を聞いて、リオンの胸が熱くなる。エデンなりに、周囲の嫌がらせからリオンを守ろうとしてくれているのだ。
「殿下……ありがとうございます。これで少しは安心できます」
リオンが心からのお礼を述べると、エデンは気まずそうに目を伏せる。
「別にお礼を言われるほどのことじゃない。……ただ、あまり見せびらかすな。王家の紋章をつけていると、余計な勘繰りをされる可能性もある」
「はい、分かりました」
リオンはブローチをそっと胸元にしまう。見せびらかすつもりはないが、これを身につけていれば、エデンの存在をそばに感じられそうだった。
「そういえば、宰相がまた面倒なことを考えているらしい。男爵家ごと、お前を遠ざけようとする動きがあるかもしれん。気をつけろ」
エデンの言葉に、リオンは表情を引き締める。自分とエデンの仲をよく思わない勢力が、どんな手を使ってくるか分からないのだ。
「はい。もし父や家に危害が及ぶようなことがあれば、すぐに殿下に連絡します。僕は最後まで殿下を信じて動きます」
それを聞いたエデンは小さく息を吐いて、リオンを見つめる。鋭い碧眼が真っ直ぐにこちらを捉え、その瞳に何か強い感情が宿っているようにも思える。
「……余計な危険は冒すなよ。お前がいなくなったら……」
そこまで言ったところで、エデンは視線を逸らし、口を噤む。リオンは言葉の続きを察し、微かに頬を染めた。
「大丈夫です。どんな危険があっても、僕は殿下のもとに戻ります」
その決意に、エデンは何も言わないまま机に向き直る。けれど、リオンは感じていた。これまでにないほどエデンの心が近くなっていることを。
ブローチに象られた王家の紋章は、リオンにとって大切な“寵愛の証”になりつつあった。噂と反発が渦巻く宮廷で、二人の絆は一層深みを帯びていくのだった。
ある朝、リオンの部屋へ小包が届いた。開けてみると、中には精巧に作られた小さなブローチが入っている。王家の紋章が象られた繊細な金属細工で、見るからに高価そうだ。
「差出人の名はありませんが、これって……もしかして殿下から?」
執事が不思議そうに首をかしげるが、リオンにはすぐに分かった。直感的に、エデン以外にこんな品を送ってくる人物はいないと思える。
「(どうして急に、こんな大切なものを)」
リオンは戸惑いながらも、そのブローチを手に取る。王家の紋章を身につけることは、普通の貴族には許されない行為だが、これはきっと「お守り」のような意味合いなのだろう。
リオンは居ても立ってもいられず、王宮へ出向いた。エデンが今日執務室にいることを確認し、思い切って面会を求める。周囲の視線は相変わらず冷たいが、そんなことを気にしている暇はなかった。
「殿下、こちらを……ありがとうございました」
執務室でエデンと二人きりになると、リオンはすぐにブローチを見せる。エデンはちらりとそれを見て、そっけなく言い放つ。
「別に大した意味はない。身を守るための一種の象徴だ。お前が俺の知り合いだという証拠になれば、下手に手を出す者も減るだろう」
その言葉を聞いて、リオンの胸が熱くなる。エデンなりに、周囲の嫌がらせからリオンを守ろうとしてくれているのだ。
「殿下……ありがとうございます。これで少しは安心できます」
リオンが心からのお礼を述べると、エデンは気まずそうに目を伏せる。
「別にお礼を言われるほどのことじゃない。……ただ、あまり見せびらかすな。王家の紋章をつけていると、余計な勘繰りをされる可能性もある」
「はい、分かりました」
リオンはブローチをそっと胸元にしまう。見せびらかすつもりはないが、これを身につけていれば、エデンの存在をそばに感じられそうだった。
「そういえば、宰相がまた面倒なことを考えているらしい。男爵家ごと、お前を遠ざけようとする動きがあるかもしれん。気をつけろ」
エデンの言葉に、リオンは表情を引き締める。自分とエデンの仲をよく思わない勢力が、どんな手を使ってくるか分からないのだ。
「はい。もし父や家に危害が及ぶようなことがあれば、すぐに殿下に連絡します。僕は最後まで殿下を信じて動きます」
それを聞いたエデンは小さく息を吐いて、リオンを見つめる。鋭い碧眼が真っ直ぐにこちらを捉え、その瞳に何か強い感情が宿っているようにも思える。
「……余計な危険は冒すなよ。お前がいなくなったら……」
そこまで言ったところで、エデンは視線を逸らし、口を噤む。リオンは言葉の続きを察し、微かに頬を染めた。
「大丈夫です。どんな危険があっても、僕は殿下のもとに戻ります」
その決意に、エデンは何も言わないまま机に向き直る。けれど、リオンは感じていた。これまでにないほどエデンの心が近くなっていることを。
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