【完結】傲慢王子エデンと内気男爵リオンの恋模様

えるろって

文字の大きさ
31 / 50

第31話 嫉妬する貴族令嬢たち

しおりを挟む
「エデン殿下、またあの男爵家の次男とお会いになられたとか」

 
華やかなドレスに身を包んだ貴族令嬢たちが、噂話に花を咲かせている。宮廷の廊下やサロンでは、連日リオンの存在が取り沙汰されていた。

  
「まさか、あの方が殿下のお気に入りだなんて信じられないわ」

  
憤りを隠さないのは、エデンとの婚約を期待していた若い令嬢たちだ。エデン王子に近づくためにあらゆる手段を講じてきた彼女たちにとって、リオンの急激な台頭は目障りでしかない。

  
「だいたい、男同士って……おかしいわ。王族にはふさわしくありません」

  
集まった数人が口々にそう言い立てる。彼女たちにとって、リオンはライバルというより“あり得ない存在”なのだろう。周囲の貴族や令息らも苦い顔をして聞き流している。

  
「……しかし、殿下は本気であの男爵家の次男を大切にしておられるようです。下手に刺激すると、こちらが不利になるかもしれませんよ」

  
一人の令嬢が慎重にそう指摘すると、別の令嬢は納得できないとばかりに声を荒らげる。

  
「だからといって、黙って見過ごすわけにはいかないわ。もしこのまま殿下が“おかしな道”へ進んでしまえば、王家の威厳に傷がつくのではなくて?」

  
事実、令嬢たちの焦りは募る一方だった。噂が大きくなればなるほど、リオンの存在感が際立ち、エデンの独特な寵愛ぶりが周囲に周知されてしまうからだ。

  
「いずれ宰相や重鎮たちが、もっと強い手段を使うかもしれません。……私たちも、エデン殿下を説得するべきでしょうか」

  
誰かがそう持ちかけるが、誰も名案は浮かばない。エデンは強気で頑固だ。無理に論すれば逆効果になる可能性もある。

  
「とにかく、リオン・クレイドという人物をもう少し調べてみる必要がありそうですね。どんな弱点があるか分かりませんし」

  
そう提案が出ると、令嬢たちは顔を見合わせて同調する。嫉妬と焦燥に駆られた彼女たちが、次第にリオンへの敵対心を顕わにしていく。その動きは、徐々に陰湿な形を取るようになっていくのだった。

  
一方、そんな動きを知らぬまま、リオンは今日も王宮に足を運んでいた。エデンに何か用があるというわけではなく、ただエデンの近況を伺い、短い時間でも顔を見て安堵したい。それがリオンの日課になりつつある。

  
「殿下の周囲で、妙な空気を感じるのは気のせいだろうか……」

  
リオンは廊下を歩きながらふと振り返る。見知らぬ貴族令嬢が険しい表情でこちらを見ているような気がしてならない。しかし、何か言われるわけでもなく、リオンは首をかしげつつ足を速めた。

  
「……まあ、気にしすぎかもしれない。僕は殿下に集中しよう」

  
自分を奮い立たせるようにそう呟き、エデンのもとへ向かう。知らぬ間に募り始めた令嬢たちの嫉妬が、後にどんな嵐を巻き起こすのか、リオンはまだ想像もしていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―

なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。 ――はずだった。 目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。 時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。 愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。 これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。 「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、 年上αの騎士と本物の愛を掴みます。 全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない

こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

処理中です...