【完結】傲慢王子エデンと内気男爵リオンの恋模様

えるろって

文字の大きさ
37 / 50

第37話 強気王子の一喝

しおりを挟む
「リオン様、少しよろしいですか」

  
王宮の廊下で、近衛騎士のイーサンがリオンを呼び止める。リオンは彼がいつになく緊張した面持ちをしていることに気づき、胸騒ぎを覚える。

  
「はい、イーサン様。どうかされましたか」

  
イーサンは周囲を一瞥し、人気のない一角へとリオンを誘う。そして低い声で打ち明ける。

  
「先ほど、殿下がお怒りになり、宰相を一喝されたそうです。リオン様とのことに関して宰相が何か否定的な言動をしたらしく、殿下はかなり憤っているとのこと」

  
「殿下が……そんなに怒るなんて」

  
リオンは驚き、同時に申し訳ない気持ちになる。自分が原因でエデンに余計な負担をかけているのではないかと思うからだ。

  
「殿下はリオン様を守るつもりなのでしょう。しかし、王族が表立って動くほど、かえって周囲からの反発を買う可能性が高い。殿下はそれを承知で立ち上がっておられます」

  
イーサンが神妙な声で続ける。リオンはエデンの気持ちに感激しつつ、危うさを感じずにはいられない。エデン自身が大きな圧力に晒されるのは目に見えているからだ。

  
「僕が……なにかできることはあるのでしょうか。殿下をこれ以上苦しめたくないんです」

  
リオンの瞳には切実な思いが宿る。イーサンは一瞬言葉に詰まった末、静かに告げる。

  
「リオン様が殿下に寄り添い続けること。それが何よりも殿下の励みになるはずです。……私は騎士としてお守りしますが、心を支えるのは、きっとリオン様の役目」

  
その言葉を聞き、リオンは深く頷く。イーサンが言う通り、エデンは王族として誇り高く生きているが、心の中は誰よりも傷つきやすい。だからこそ、リオンはそばで彼を支えたいのだ。

  
「分かりました。僕、殿下とちゃんと話します。……ありがとうございます、イーサン様」

  
リオンがお礼を言うと、イーサンはかすかな笑みを浮かべて頷く。

  
「こちらこそ。私も殿下がお怒りになるくらいには、本気で動いておられると聞けて安心しました。リオン様の思いが無駄ではないということですよ」

  
「はい」

  
リオンは胸を軽く叩き、心を落ち着かせる。強気なエデンが宰相を一喝してまで守ろうとするのは、自分との関係を否定されたくないからかもしれない。それが分かるだけでも、リオンの不安は少し和らぐ。

  
「殿下……僕は殿下を守りたい」

  
そう呟いて、リオンは駆け足でエデンのもとへ向かう。廊下を急ぎながら、エデンの怒りが収まるように何と声をかけるべきか考えるが、きっと言葉よりも行動で示すしかないのだろうと自分に言い聞かせる。

  
強気な王子が放った一喝は、王宮全体に波紋を広げている。それは同時に、周囲の警戒心をさらに高めることにもなるが、エデンはそんなことを恐れてはいない。リオンもまた、その覚悟を共有するためにエデンの手を取りたいと願っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

処理中です...