【完結】傲慢王子エデンと内気男爵リオンの恋模様

えるろって

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第39話 決別の時?

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「殿下、僕……殿下とお会いすることで、ますます問題が大きくなっている気がします」

  
王宮の一室。リオンは出迎えてくれたエデンの前で、切なそうに視線を落とす。昨日から宰相派や貴族令嬢の圧力が強まり、男爵家にも嫌がらせとも取れる通知が届いていた。

  
「お前の家に被害が出たのか」

  
エデンは悔しそうに眉をひそめる。リオンは少し言い淀みながらも、正直に伝えた。

  
「父が慌てていました。『王宮からお前を遠ざけろ』というような暗示をかけられたらしいです。でも、父は断固として拒否してくれました」

  
「アルベール男爵か。あいつはお前に理解があるんだな」

  
エデンはわずかに安堵の息を吐く。だが、リオンの表情は曇ったままだ。

  
「はい。でも、僕が傍にいることで、殿下がさらに批判に晒されるのも事実です。……いっそ、僕が身を引けば、殿下はもっと楽になるんじゃないかと」

  
その言葉に、エデンは鋭い瞳を向ける。部屋の空気が一気に張り詰め、リオンは思わず身震いする。

  
「勝手なことを言うな。……俺が一番求めていないのは、お前が去ることだ」

  
エデンの声は低く、怒りに満ちているというよりは、悲しみを帯びたものだった。リオンは胸を締め付けられながらも、エデンの気持ちを確かめようとする。

  
「でも、殿下がこれ以上追い詰められるのは、僕も辛いんです。僕といることで、殿下が将来を棒に振ってしまうなら……」

  
「棒に振るかどうかは俺が決める。お前が勝手に気を回して去っていくのは、単なる自己満足だ」

  
エデンは声を荒らげてそう言い放つが、その瞳には迷いが見えた。リオンは言葉を失いながら、視線をそらす。

  
「……すみません」

  
「謝るな。……俺はお前を遠ざけたいわけじゃない。だけど、周囲を納得させられるだけの強さが俺にあるのか分からない」

  
苦悶の表情を浮かべるエデンを、リオンは静かに見つめる。これまでプライドが高く、揺るぎない自信を見せていたエデンが、ここまで不安を口にするのは初めてだ。

  
「殿下が悩まれているなら、僕が力になります。例え王族としての義務との板挟みがあろうとも、僕は殿下を支えたい」

  
リオンの言葉に、エデンは短く息を吐く。まるで自分を鼓舞するように、拳を握り締める。

  
「……もし、お前がいなくなったら、俺はこれまで通りの王族として生きるだけかもしれない。だけど、それは虚しいだけだ。お前がいるからこそ、俺は変わりたいと思うようになったんだ」

  
その告白が、リオンの胸を強く打つ。強気な王子が抱える孤独と、リオンへの本気の思いが痛いほど伝わってくる。

  
「殿下……」

  
リオンは感極まってエデンを見つめる。すると、エデンは苦しげな表情を浮かべつつも、リオンの肩を抱き寄せた。

  
「行かないでくれ。……俺はまだ弱い。お前が必要なんだ」

  
その言葉に、リオンは目頭が熱くなる。決別を選ぶのではなく、手を携えて逆境と戦う。それが二人の未来なのだと、あらためて実感する瞬間だった。
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