【完結】傲慢王子エデンと内気男爵リオンの恋模様

えるろって

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第45話 想いが力になる

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「殿下、隣国の特使たちが到着いたしました」

  
豪華な迎賓室へ案内された特使たちは、厳つい雰囲気をまとった軍人や外交官が中心。武力を背景に強気の交渉を仕掛けるつもりなのは明白だ。エデンはセシリアや重臣たちを伴い、堂々と彼らを迎えた。

  
「遠路ご苦労だった。早速だが、条約更新の件で話を進めよう」

  
エデンの口調は落ち着いているが、その瞳には一切の隙がない。特使のリーダー格と思われる壮年の男性が、にやりと挑発的に微笑む。

  
「貴国の第二王子自らが交渉に出てくるとは意外だ。随分と自信があるようだが、私たちも手ぶらで来たわけではない」

  
軍人らが肩を揺すりながら笑みを浮かべる。エデンは怯むことなく、椅子を勧めてテーブルを挟んだ。

  
「では、まずは今回の条約において懸念される事項を整理しよう。貴国は国境の警備を強化すると一方的に宣言しているが、その理由は何か」

  
「そちらの国がどれだけ平和を装っていても、軍備を拡大する可能性は否定できん。私たちは自国を守るために当然の策を取るだけだ」

  
エデンは眉をひそめながらも、冷静に言葉を返す。どちらが先に譲歩するかの駆け引きがここから始まるのだ。

  
交渉が始まって数刻。お互いが一歩も譲らない主張をぶつけ合い、特使たちの態度は硬い。エデンは資料を駆使しながら、過去に結んだ条約の有効性や実績を示し、破綻を回避する道を探っていく。

  
「仮に貴国が軍を動かせば、互いに大きな損失を被るだけ。私たちは争いを望まない。だからこそ、互いの利益を確保できる条約が必要だ」

  
エデンの声には芯の強さがある。特使たちも、その堂々とした態度に警戒心を深めているようだが、同時に認めざるを得ないだけの説得力があると気づき始めていた。

  
やがて夜になり、初日の交渉は中断される。疲れ切って部屋に戻ったエデンを、リオンが出迎える。

  
「殿下、お疲れさまでした。今日はかなり激しいやり取りだったと伺いましたが、大丈夫ですか」

  
リオンが心配そうに問いかけると、エデンは疲労を隠せないまま小さく微笑む。

  
「想像以上に根が深い話だ。簡単にはまとまらないが、勝算はある。……お前の顔を見ると少しほっとする」

  
エデンが椅子に腰掛けると、リオンは慣れない手つきでお茶を用意し、そっと差し出す。エデンは一口含んでため息をつく。

  
「家族や側近が支えてくれているのはありがたいが、やはりお前がいてくれると気が休まる。……交渉に勝つために必要なのは、知識や戦略だけじゃない。自分が譲れないものをはっきり意識することだと思う」

  
リオンはエデンの言葉を聞き、ゆっくりと目を伏せる。エデンが譲れないもの――それは国の利益だけではなく、リオンとの未来でもあるのだろう。

  
「僕も、少しでも殿下の力になりたいです。どんな形でも構いません。殿下が諦めない限り、僕も一緒に頑張ります」

  
リオンの一途な言葉に、エデンは再び微笑む。長い交渉が続く中、折れそうになる心を支えてくれるのは、まさにリオンの存在そのものだった。

  
「ありがとう。……お前がいるから、俺は負けるわけにはいかない。必ずこの交渉を成功させて、周囲を黙らせてみせるよ」

  
想いが力になる――エデンはそれを実感しながら、隣国との戦いにも似た交渉の続きへと向かう。リオンもまた、エデンの背中を押す役目を果たそうと、懸命にその存在を示していくのだった。
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