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第46話 和解への道筋
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「殿下、相手側は関税の大幅引き下げを要求してきました。一方、こちらが提示している安全保障面での協力に関する条文には難色を示しています」
翌日も朝から激しい交渉が続く。イーサンを含む複数の役人が慌ただしくメモや書類をエデンに渡し、その都度エデンは隣国の特使らと対峙する。
「関税を下げるだけでは、我が国の利益が削られる。安全保障面での協力があってこそ、相互利益が成り立つのだ」
エデンの言い分は理にかなっているが、特使たちも自国の利益を最大限確保しようと譲らない。まさに一進一退の攻防戦だ。
「殿下、ここで条件を引き下げてはどうでしょう。交渉が決裂するよりは……」
宰相が小声で提案するが、エデンは毅然と首を振る。安易な譲歩は相手につけ込まれるだけだと理解している。
「お前たちが提案している案では、我が国の負担が大きすぎる。互いの利害を調整するためにも、別の形で協力する方法を検討しよう」
エデンは資料を取り出し、具体的な数値と過去の事例を挙げて説明する。その流れるような弁舌と説得力には、相手側の特使たちも目を見張るばかりだ。
やがて日は暮れ、連日の交渉もひと段落。特使たちも疲労が色濃くなり、仮宿へと戻っていく。部屋で休息をとるエデンの元へ、セシリアが訪れた。
「エデン、すごいわね。あの頑固な特使たちが、あなたの案を検討すると言い出したじゃない」
セシリアは弟の働きを誇らしげに讃える。エデンも内心は手応えを感じていたが、表情にはまだ緊張が残る。
「決着がついたわけじゃない。明日はさらに細かい条件のすり合わせが必要になる。……けれど、このまま進めば合意に至る可能性は高い」
「ええ。あなたが真剣に取り組んでいるのが分かるから、相手側も無視できないのよ。……リオンは、どう?」
セシリアが優しく微笑む。リオンも連日、書類の整理や雑事を進んで手伝い、エデンを陰ながら支えている。エデンはその名を聞くと、どこか照れたように視線を下げる。
「いつも俺より先に起きて準備をしてくれてる。正直、あいつがいなかったらもっと疲弊してたかもしれない」
「あなたがそう感じるなら、それこそがリオンの存在意義ね。……王族としての務めを果たしつつ、自分が本当に大切に思う人を守る。難しいことだけど、今のあなたなら可能だわ」
セシリアの言葉に、エデンは一瞬だけ微笑む。リオンを守り抜くためにも、ここで引くわけにはいかない。自分の力を最大限に発揮し、周囲を納得させねば。
そこへ、コンコンと扉がノックされ、イーサンが姿を見せる。どうやら特使から追加の質問が届いたようだ。エデンは再び書類に目を通しながら、セシリアに別れを告げる。
「ありがとう、姉上。……この交渉を纏め上げたら、少し休みを取りたいな。リオンとの時間をもう少し大事にしたい」
「そうね。リオンをしっかり労ってあげてちょうだい。あなたを支えるのは大変だもの」
セシリアは冗談交じりに微笑み、部屋を後にする。エデンの心には、確かな自信とリオンへの感謝の気持ちが満ち始めていた。もしこの交渉がうまくいけば、それはエデンにとって大きな“和解への道筋”となる。王宮内でも、エデンを軽視できる者は激減するだろう。
もう一息――エデンはそう自分に言い聞かせ、分厚い書類に視線を戻す。その先にあるのは、リオンとの未来を堂々と歩むための道だった。
翌日も朝から激しい交渉が続く。イーサンを含む複数の役人が慌ただしくメモや書類をエデンに渡し、その都度エデンは隣国の特使らと対峙する。
「関税を下げるだけでは、我が国の利益が削られる。安全保障面での協力があってこそ、相互利益が成り立つのだ」
エデンの言い分は理にかなっているが、特使たちも自国の利益を最大限確保しようと譲らない。まさに一進一退の攻防戦だ。
「殿下、ここで条件を引き下げてはどうでしょう。交渉が決裂するよりは……」
宰相が小声で提案するが、エデンは毅然と首を振る。安易な譲歩は相手につけ込まれるだけだと理解している。
「お前たちが提案している案では、我が国の負担が大きすぎる。互いの利害を調整するためにも、別の形で協力する方法を検討しよう」
エデンは資料を取り出し、具体的な数値と過去の事例を挙げて説明する。その流れるような弁舌と説得力には、相手側の特使たちも目を見張るばかりだ。
やがて日は暮れ、連日の交渉もひと段落。特使たちも疲労が色濃くなり、仮宿へと戻っていく。部屋で休息をとるエデンの元へ、セシリアが訪れた。
「エデン、すごいわね。あの頑固な特使たちが、あなたの案を検討すると言い出したじゃない」
セシリアは弟の働きを誇らしげに讃える。エデンも内心は手応えを感じていたが、表情にはまだ緊張が残る。
「決着がついたわけじゃない。明日はさらに細かい条件のすり合わせが必要になる。……けれど、このまま進めば合意に至る可能性は高い」
「ええ。あなたが真剣に取り組んでいるのが分かるから、相手側も無視できないのよ。……リオンは、どう?」
セシリアが優しく微笑む。リオンも連日、書類の整理や雑事を進んで手伝い、エデンを陰ながら支えている。エデンはその名を聞くと、どこか照れたように視線を下げる。
「いつも俺より先に起きて準備をしてくれてる。正直、あいつがいなかったらもっと疲弊してたかもしれない」
「あなたがそう感じるなら、それこそがリオンの存在意義ね。……王族としての務めを果たしつつ、自分が本当に大切に思う人を守る。難しいことだけど、今のあなたなら可能だわ」
セシリアの言葉に、エデンは一瞬だけ微笑む。リオンを守り抜くためにも、ここで引くわけにはいかない。自分の力を最大限に発揮し、周囲を納得させねば。
そこへ、コンコンと扉がノックされ、イーサンが姿を見せる。どうやら特使から追加の質問が届いたようだ。エデンは再び書類に目を通しながら、セシリアに別れを告げる。
「ありがとう、姉上。……この交渉を纏め上げたら、少し休みを取りたいな。リオンとの時間をもう少し大事にしたい」
「そうね。リオンをしっかり労ってあげてちょうだい。あなたを支えるのは大変だもの」
セシリアは冗談交じりに微笑み、部屋を後にする。エデンの心には、確かな自信とリオンへの感謝の気持ちが満ち始めていた。もしこの交渉がうまくいけば、それはエデンにとって大きな“和解への道筋”となる。王宮内でも、エデンを軽視できる者は激減するだろう。
もう一息――エデンはそう自分に言い聞かせ、分厚い書類に視線を戻す。その先にあるのは、リオンとの未来を堂々と歩むための道だった。
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