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六話

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 シェリルのぼやきに、アルフがうーんと小さく唸る。

「……円満な婚約破棄を望んでる、とか?」
「婚約破棄に円満とかあるの?」

 婚約破棄は一方的に突きつけるものだ。そこに円満も何もないだろうとシェリルが首をかしげると、アルフが苦笑を零した。

「まあ、ほら、恨みを買って将来に支障をきたしたくない……とかあるのかもよ」
「構わないと言っているのに……」

 たとえ一方的に破棄されようと、シェリルはそれをそのまま受け入れるつもりだ。しかたないと諦めはするが、恨んだりはしない。
 シェリルが心の中で面倒だな、と思ったところで始業の鐘の音が鳴り、教師が教室に入ってきた。



 そして次の休み、サイラスが女子寮を訪ねてきた。

「本日もご壮健そうで何よりです」

 呼び出されたシェリルは、普段の茶会よりもラフな装いのサイラスに一礼する。サイラスはそれに同じように返すと、ぐるりと周囲を見回した。
 男子生徒が女子寮に来ることがまったくない、ということはない。だが、サイラスが女子寮を訪ねたのはこれが初めてだ。
 しかも、月に一度しか会わない婚約者を呼びにきたのだから、何かあったのかとこちらを気にしている女子生徒が多い。

 さすがに注目されていることに気づいたのだろう。サイラスはふむ、と小さく呟くと声をひそめた。

「ここは人目が多い。静かに話せる場所に行こう」
「テラスの申請はしておりませんが」

 茶会で使用していたテラスは人気があり、事前に申請して予約を入れなければ席を取れないほどだ。
 他にどこかあっただろうかとシェリルが考えていると、サイラスが眉根を寄せた。

「少々質は落ちるが、ないわけではない。いいから行くぞ」
「あ、はい。かしこまりました」

 急かすサイラスにシェリルは慌てて頷く。次の休みに会うと言ったのはサイラスだ。それなのに用意がないと判断するのは早計すぎた。
 そう反省したシェリルは、大人しくサイラスの後をついていくことにした。
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