110 / 127
ep.5-4
しおりを挟む「へ、え…あ、あぁ…っ」
そう囁かれて、ようやく自分の腰が勝手に前後に蠢いていることに気づいた。頭がぼう、としていてよくわからなかった。けれど、身体に溜まる熱は、自分で起していたものなのだ。
「な、なんで…っ、あ、ぅ…、ちが、ちがぅ…あ、んぁ、とま、な…いっ」
意識すればするほど、ナカは彼を奥まで迎えてみっちりとはまっていて、腰を前後にへこへこと揺らしていた。下の方からは、ぐちょぐちょと粘着質な水音が鼓膜を刺激して、さらに熱を高める。入口の部分、弱いしこり、その奥、そしてナカの行き止まりまで全部が刺激されて、気持ち良くてたまらない。
「や、やらっ、とめ、て、とめてっ、あ、ぅん、あっ」
自分の意思と反して、身体の動きはどんどん大きくなっていく。目隠しをされて、感覚がより鋭くなり卑しい自分を想像すると、情けなくて恥ずかしくて、淫らで、高揚した。
必死に腰を振る滑稽さなど気にする余裕もなく、ひたすらに快楽を求める。すると、彼によって抱き着いていた腕をほどかれてしまった。
「さ、く…?」
先ほどから声もなく、反応もない。急に不安になってしまう。手を伸ばしてもそこに熱はなかった。しかし、確実に、僕のナカに彼はいる。きゅう、と絞ると、彼の存在をありありと感じて安心するのに、返事のない暗闇に恐怖を感じる。
「さく? ね、さく…?」
彼を視覚で確認したいと思った。とるな、と命じられている目元のタオルをとろうと手をあげると、前から伸びてきた手に両手を掴まれてしまう。その両手は下に引っ張られると、彼のペニスが突き上げてきた。ごりゅ、とナカをえぐられて、脳天まで一気に強烈な電気信号が送られる。ぎし、ぎし、とベッドが悲鳴をあげる度に下から突き上げられて、たくましい亀頭にすべての弱点を力強く撫でられてしまう。
「ひゃ、ああ、ああっ、だめっ、や、あ、はげし、あっ」
快楽は強いのに、心の寂寥感は拭えなくて、彼を見て安心したい。彼の瞳に僕だけが映っているのを確認して、泥沼に沈んでいくように達したい。
「と、って、これ、とってぇ、さく、さくぅ、あ、あっんぅ」
ぐずぐずと泣きながら懇願すると、足を掬われて、前後に半回転するように促された。背中をぴったりと温かく湿った何かが覆ってきて、耳元で、ちゅ、と淡く吸い付かれた。
「さく? さくぅ…ぁんっ」
振り向いて、キスをしようとしたら、律動が始まってしまった。それぞれの膝頭を彼の手で開くように固定されて、下から激しくピストンをかけられる。ごつ、ごつ、と行き止まりを何度も撫でられると、もっと奥へと身体が開いていく。
「さく、だめっ、おく、おく、きて、る、ん、あ、あっ…ら、めぇ…っ!」
指先が、ぐう、と丸まると、ペニスから勢いよく精子が飛び出ていく。びゅる、と飛び出ていったそれがどうなったのかはわからない。背後から太い腕で強く抱きしめられて、ナカで彼が欲を解き放っているのが感じられた。快楽の波に漂って、力なく項垂れるが彼の腕が抱き留めてくれる。背後から深い呼吸と、彼の甘い匂いが強く漂ってきて、またナカが切なくなってしまう。
呼吸を整えて、汗がぽたり、顎から落ちる。重怠い身体を起すと、はら、と目元が明るくなった。何度か瞬きをすると滲んだ視界が晴れてくる。カーテンから漏れる光はまだ白い。ベッドの淵に腰掛けた彼の上で股を広げている僕は、振り返るとようやく愛しい彼の顔を目に出来た。嬉しくて、安心して涙が、はら、と零れる。彼が僕を見つめると、赤く染まった唇で僕の名前に動かした。それから吸い込まれるように、唇をあわせる。
甘い。
うっすらと開いた瞼の目の前には、彼の深い青の瞳があって、とろけるように細められていた。
「ん、…すき…、さく…」
「俺も…聖、好きだ…」
唇を合わせながらお互いに心から溢れた言葉をもらす。もっと密着して、舌を味わいたくなって、身体をひねろうとした時、彼の手が腰を掴んだ。突如訪れた浮遊感に驚いて目を見張る。それから、ナカにある彼が、もう硬度を持っていて、ずにゅ、と蠢いた。立ち上がった彼に従って、震える膝で僕もなんとかつながったまま立ち上がる。けれど、足腰はまだだめで、バランスが取れず、目の前にあるものに手をついた。手をついたひんやりとするものに目をやると、それは姿見だった。はっきりと、裸で火照った身体の僕と、かっこいい身体つきの彼が後ろにいるのが映っている。鏡越しに彼と目が合うと、ぎらり、と光る瞳で頬をゆるめていた。恥ずかしくて振り返って彼に話をしようとすると、後ろからのしかかられて、背中にぴったりと胸板がつく。それから、名前を甘く囁かれて、唇を舐められる。淡く舌先を絡め合いながら、彼が僕の胸の飾りや達したばかりのペニスをくすぐりはじめる。
「だ、め…っ、さっき、でた、ばっかり…ん、ぁ…」
敏感になっている先端を優しく撫でられたり、ほじるように指先を埋め込まれたりされると、内腿が震えて立てなくなる。唇が解放されて、鏡に縋るように手をついて力をこめる。彼が腰を掴んで、引いていく。入口をちゅぽ、ちゅぽ、と浅く出し入れされる。いなくなってしまう寂しさに、さらに収縮が強まる。しかし、思い出したかのように、ナカに入ってきて、しこりやその奥を撫でられると全身が甘美にむせび泣く。
「聖、見ろ」
後ろから手が伸びてきて、僕の顎を掴んだ。そして、その指示通りに重い瞼を上げると、鏡に僕が映っていた。
頬だけでなく、肩も首も、全身がいつもは白いのに朱が差し、ピンクかかっている。涙で潤んだ瞳が煽情的で、小さく唇はふるり、と震えて濡れていた。
「ゃあ…っ」
「だめだ、ちゃんと見ろ」
恥ずかしくて目を閉じて首を反らしたいのに、彼の力によって固定されて動けない。
「わかるか、自分の顔が」
「ん、んぅ…」
奥まで挿入した彼が、くちゅ、と腰を混ぜる。ぞわ、と悦が走り、鼻から声が漏れる。ふと開けてしまった視界には、汗を垂らし色香を強烈に放つ彼に顎をとられて、鏡の前でだらしなく喘ぐ自分だった。
その鏡には、自分が先ほど放って飛び散ったであろう精子が、つ、と垂れていた。その先には、すっかり勃ち上がった小さい僕のペニスがいて、とろ、と何かを零した。羞恥に身体が震えると、彼が淡く腰をついた。
「あぅっ」
その律動に合わせて、毛先が揺れて、僕のペニスが、ぷる、と弾けた。かあ、とさらに熱が高まって、顔を反らしたい。それなのに、彼が見ろ、と鏡の前に僕を追いこむ。
「こんなに聖は、エロいんだ…」
「えろ、く、な、あ…、あ、んぅ…っ」
嘘つき、と彼は囁いて、耳の中に舌を差し込んだ。ぐぢゅ、ぐぢゅ、と聴覚を犯されて、首筋が粟立ち、ナカを締め付けてしまう。そして、彼が僕の臀部に打ちつけを始めてしまう。肌が触れ合う音と共に、粘度の高いいやらしい音が響く。彼が耳を犯しながら、好きだ、と甘く囁く。もうすべてがおかしくて、どうにでもなってしまってよくて、僕の膝は笑いながらも、腰を懸命に振った。
「さ、く、さくぅ、あ、ぁ、んぅっ」
鏡に置いた左手に彼の手がかぶさって、かちり、とお揃いのリングがぶつかった。指先を絡めて握りしめられると全身から彼の愛情を感じる。鏡越しに目が合うと、自然と顔が寄って、振り向くとすぐにキスをした。唇が離れていくと、彼が腰の抽挿の速度を上げる。ごり、ごり、とナカの壁を削り取るように、けれどキスをするように甘やかにこすりつける。彼しか知らない、その奥は歓喜し彼をめいっぱいに抱きしめる。すぐにいなくなってしまって寂しさに涙がこみ上げると、あっという間に戻ってきて僕を僕でいられなくする。
鏡に映る僕と目があった。
涎を垂らして、汗を滴らせている。頬は真っ赤で、潤んだ瞳からは快楽によって導かれた涙が溢れている。赤く潤んだ唇からは、白い歯がちらりと見えて、その奥にさらに赤い小さな舌が見え隠れする。首もとには彼によってつけられたキスマークが散りばめられていて、その中に、ぴん、と主張する小さな桃色の飾りが二つある。いつもはもう少し淡い色味をしているのに、じわりと赤が馴染んだ色だった。そしてその下には、彼の動きに合わせて、ぷるぷると雫を散らすペニスがある。僕の肉付きを増した太腿があって、その後ろに彼の筋肉質な太腿が見える。
ひどく、いやらしかった。
「ごめ、ごめんなさ、ごめんなさい、あ、う、んんっ」
彼の言っていることが正しいかはわからない。けれど、僕は、彼によって自分が創りかえられていることがわかった。
身体をひねって、彼に手を伸ばすと、その指を絡めて、彼は指先にキスをした。それから、僕の片足を持ち上げて、急な浮遊感にバランスを崩すが、その前に彼がしっかりと抱き上げてくれた。両足を担がれて、背中が壁に当たる。あまりにも不自由な体制に彼にしがみつくように抱き着いた。彼が身体を傾けると、ずぶり、と深くまで串刺しにされたかのように彼が奥へと挿入された。それから腰の抽挿が再開されると、僕の全体重がかかり、彼が深く貫いた。強すぎる快感から逃げたいのに、僕に身動きはとれなくて、ひたらすに落ちないように彼に抱き着いて、すぐそこにある唇に欲望のままに吸い付いた。
「こわ、こわい、ん、さくぅ、んっ」
「大丈夫、きもち、いだろ?」
そういって微笑む彼に、うんうん、と必死に首を縦に振った。かち、かち、と歯が何度もぶつかって痺れるのに、それすらも彼がここにいる証だと身体が感じて、快感となってしまう。ナカが自然と絞られると、彼が眉間に皺を寄せて、舌打ちをした。そして、ベッドに僕を降ろすと、奥の奥まで届くように深く突きさして、細かいピストンがかけられる。ベッドの上だというのに、彼に押しつぶされて一つも身動きが出来ない状態だった。
「あ、あ、あっ、らめ、これ、あ、おか、しく、なう、っう、あ、あぁっ!」
ごちゅごちゅごちゅ、と立派な亀頭がすべてをこすって、奥の壁を力強くノックする。さっきからびりびりと、爪先が伸びて痺れているのに、彼のピストンは止まらない。
「とま、とまって、らめ、だ、あ、さ、う、さ、くっ、あああっ!」
「聖っ、聖…っ! 好きだ、愛してる、好きだっ」
目の前が真っ白になった。彼が僕のナカで果てて、ゴムが広がるのを感じながら、僕の意識は遠のいていった。
結局その日は、午後の授業は欠席して、ずっと彼と触れ合っていた。
学業に専念すべき学生なのに、こんなに爛れた生活をしていて罪悪感が募った。しかし、その罪悪感や背徳感を彼は利用して、僕をさらに高めてしまうのを気づくことは出来なかった。
それから、彼は大学の授業開始ぎりぎりまでずっと一緒にいるようにしたし、どうしていたのかはわからないけれど、終了直前には僕の隣にいることが多くなった。そのおかげか、僕が何か色を持った目で声をかけられることは各段に減った。また、僕も、またあんな恥ずかしい思いはしたくないから、率先して気を付けるようにした。誰かに声を掛けられそうになる度に、あの時感じた、いやらしい自分を見て感じ入ってしまう淫蕩な己を思い出して、身体が火照っているのには気づかないふりをした。
40
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる