虚無 - vanitas -

Riberion Vanitas

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ヨーロッパ某国の教会② -白川 華ヰ子-

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次の日、ここが異常だと気付かされた。
朝日が昇る頃に、他の子と一緒に黒い靄が掛かったお姉さんに起こされて、朝食を摂り、その後、もう一つ下の階に降りて1人ずつ部屋に通された。そこには一つの椅子と変な機械が沢山あった。そこからは…思い出したく無い。
毎日、毎日、毎日。
大人達に同じ部屋で酷くて、痛くて、苦しい事を繰り返しされた。
私はある日、その行為から逃げようと考え、大人達にその部屋にある工具で殴り掛かり部屋から逃げた。だけど、小さな足では遠くまで逃げられず、直ぐに大人達に捕まった。
その後は、いつもより酷い事をされたっけ。いつもより悲鳴を上げた事を覚えてる。
案の定、その日は悪夢にうなされた。このまま死んでしまう様な悪夢を。
次の日、新しい子がこの教会に来た。年は私と同じぐらいの女の子。手足が骨折しており、杖をついていた。食事の席は私の隣で、とても哀しい顔をしていた。話しを聞くと昨日、一緒に車に乗っていた両親が死んでしまったと話してくれた。自分も一緒に死にたかったと言って涙を流しながら。
その子と仲良くなるまで時間は掛からなかった。その子は大怪我をしているから、一つ下の階で酷い事はされてなかった。
ただ、その大怪我も数ヶ月で完治してしまう。そうなれば、きっと私と同じ目にあってしまうだろう。そうなれば、折角出来た友達も、周りの他の子の様に目が虚の人形になってしまう。
絶対にそんな事はさせない。
ここから逃げるんだ。友達とお兄ちゃんと一緒に。
友達が少し歩ける様になったある日の夜、大人達の隙を突いて友達を教会の下水道に逃した。
「あなたは先に行って助けを呼んできて。直ぐに私はお兄ちゃんを連れて一緒に逃げるから。」
友達は静かに泣きながら言う。
「絶対に無事で居てね。私が助けを呼んで来るから。」
そして覚悟を決めた顔で、下水道を進んでいく。その小さな足を引き摺りながら。
私は急いで静かに兄のいる部屋に向かった。
兄を見つけて驚かない様に、ベットから起こすと、ここから逃げようと説明をした。
だけど、私は兄に殴られてしまい、その衝撃で小さな身体は、簡単に少し離れた壁にぶつかった。
「俺はあのお姉さんと将来を誓い合ったんだ!お前に邪魔なんてされてたまるか!」
兄は鬼の形相で、私に怒鳴り付けた。
「お兄ちゃん…何を言ってるの?」
兄の初めて見る顔と、怒鳴り声に怯えて聞く。
「いつもお前の代わりに、母ちゃんと父ちゃんに殴られたり、少ないご飯をお前に分け与えるのは、もう懲り懲りなんだよ!お前が産まれてから俺は不幸なんだよ!」
兄は私の事をそう思っていた事に、当時はとても傷ついたっけ。
「でもここなら、毎日温かい食事をお腹一杯に食べられるし、お前を庇わなくても、褒めてくれるんだ。お姉さんは僕は特別だって言ってくれて、将来は一緒に居ようと言ってくれたんだ。」
私はやっと気付いた。私含めて、他の子供達は日々の部屋での出来事の所為で身体がボロボロなのに、兄の身体に生傷一つない事を。
信じられない気持ちで、立ち尽くしていると、この騒ぎが聞こえたお姉さんや大人達がやって来て、私は連れて行かれた。あの部屋に。
それからは、私だけ沢山痛くて苦しい事をされた。次第に哀しい気持ちが、心を支配していくのに時間は掛からなかった。
精神的にも身体的にも次第に限界を迎えた私は狂気に満ちていった。
そこからは一瞬だったと思う。
目に付く全てを破壊していった。そこに駆け付けた大人達もあのお姉さんも、兄も他の子供達も皆んな誰が誰なのか、どれが誰の手足なのか分からない様に壊した。
そして教会の中が静かになった頃に、私は正気に戻り深い絶望に叫んだ。


そして全てを思い出した。

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