虚無 - vanitas -

Riberion Vanitas

文字の大きさ
9 / 14

フランス アルル警察署② -ユーカ・フランソワ-

しおりを挟む
私はショックを隠せなかった。
前々から、同僚の間でも日本人の子供が拐われたり、高値で売り買いされてるらしいと、都市伝説の様に言われてた事が、実は本当に起こっていた事だったとは。
子供を何だと思ってるんだ。
今回の教会の地下を見れば、子供達が一体どんな事をされ続けていたかは容易に考えることが出来る。
私と署長の表情が険しくなっている中、大統領は話しを続ける。
「今、フランスは先月から私が大統領に就任し、人工聖女の研究所を摘発して廃止を行っていてね。この教会も、独自に調査をして明日、摘発するはずだったんだが…諜報員共にどうやら覚醒した聖女に殺されてしまったみたいだ。連絡も取れないし、心臓の近くに埋め込まれたGPSも、教会で止まっているから…」
大統領は同僚で大切な友人が、昔から何度も助けて貰ったんだと、とても悲しそうに言った。
大統領が何故、人工聖女を直ぐ廃止に向かったのかの思いも話してくれた。
私の昔話になってしまうがと、前置きをされ語ってくれた。
大統領のご両親は日本人の両親で、中々子供が出来ない両親が、大統領を養子に迎えて2年後にそれは可愛い妹が誕生した。妹と公園で遊んでいる時に、妹が綺麗なお花を両親に贈りたいと言ったので、妹と一緒に花を摘んでいると、急に大人の男達が、小さな妹を連れ去ろうとして、大統領が必死に妹を取り戻そうと頑張ったけど、大人達に殴られ腹部を刺されて動けなくなってしまった。意識が薄らいでいく中、その時に聞いた言葉が、人工聖女の材料に使える。高い金をもらえる。と笑った大人達の声だった。
1週間後に病院で目を覚ました時、両親は泣きながら、大統領が目を覚ました事をとても喜んだ。大統領が両親に妹が拐われた事を伝えると、両親はとても暗く悲しい顔で言った。大統領が病院に運ばれて2日たった時に、自宅に小包が届き開けると中には、小さな心臓が入っていた。手紙と一緒に。
両親は怒りと絶望の中、直ぐに警察に通報と捜査を依頼したが、結果は残酷だった。
DNAから妹である事は確かで、心臓が届いた事で生存はしていないと言われた。
そして、手紙には非情にもこう書いてあった。
“貴方達に感謝を。娘さんのお陰で成功した。少しばかりだが、お礼に要らない部分をお返しします。”
その手紙の内容で、妹と二度と会えない事は、まだ子供だった大統領でも分かった。
それから、調べていく内に、妹の様に誘拐されたり、売られた子供が沢山居ることが分かり、志が同じ仲間と今の地位に辿り着いたと教えてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...