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第二章
71.軋むこころ
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「小鳥遊、どうした?」
「はぇ?」
獅子尾に言われて己がボケッと雅樹たちを眺めていた事に気づいた。
「あー…ごめん。なんかさ、寝不足でボーっとしてたみたいだ」
「そうか。あまり無理するな。少し休んでてもらっていいから」
「大丈夫!ただでさえ獅子尾に頼りっぱなしだから、ちゃんとやるよ」
「……ちょっと、休憩にしないか?」
「へ?」
獅子尾の後について教室を出て購買でジュースとお菓子を奢ってもらって(固辞したけど聞いてくれなかった)中庭にあるベンチに座った。
「ここ、いいな~」
「俺のお気に入りの場所なんだ」
中庭だけど人目につかないような作りになっていて、落ち着くにはいい場所だった。
遠くに吹奏楽部の吹くぷわ~っていう音、運動部の声とボールを蹴る音やバッドでボールを叩く音が聴こえてきた。
さわさわと心地よい風が通り抜けて気持ちよくて思わず目を閉じてそれらの音に耳を澄ました。ざわついていた心が少しずつ落ち着いてくるのが分かった。
獅子尾は特に何かを言うわけでもなく、そのまま傍にいてくれた。
「ん…」
「起きたか?」
いつの間にか思いっきり獅子尾にもたれかかって寝ていた。
「ごっ!ごめんっ!!!俺どのくらい寝てた?」
「15分くらいかな」
「うわーー!マジでごめんっ!重かったろ?」
「小鳥遊は軽いよ」
ふっと笑って言われた。
「う…そりゃ、獅子尾みたいなカッコイイ体じゃねぇもん」
「そういうんじゃない。小鳥遊は…」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
「なんだよ!言いかけてやめるとか、すっげぇ気になるだろ!」
笑ながら獅子尾をどつこうとしたら、ひょいと躱されてバランスを崩した俺を支えた。クソ!と思って顔を見るとちょっと意地悪な笑顔で俺を見ててドキッとした。
「小鳥遊は可愛いなと思ってな」
「は?」
「戻るか」
「う、うん」
何だったんだ?さっき見た意地悪なカッコイイ笑いを思い出してドキドキしながら獅子尾の後について教室へ戻った。
「樹?どこ行ってたの?」
「獅子尾とちょっと休憩してた」
「ふぅん」
「ごめんっ。サボってたわけじゃないんだ!俺が寝不足だったから獅子尾が休ませてくれただけなんだ」
「別にサボってるとか思ってないよ」
不機嫌な顔で雅樹に言われて、なんか落ち込んだ。委員長の雅樹や朱雀の働きぶり、補佐役の獅子尾の働きぶりに密かに落ち込んでいたから。いや、こいつらだけじゃない勝や志木だって精力的に仕事をして片づけていた。
既に各々の担当でリーダーシップを発揮していた。それに自分の自己管理不足から起きた睡眠不足だとか自分でも持て余している精神状況だとか、諸々が自分の役立たずっぷりを突きつけられた気持ちなった。
「篠田、すまんな。俺が強引に休憩させたんだ。小鳥遊は悪くない」
「言われなくても分かってるよ…ごめん。忙しくて気が立ってるみたいだ。八つ当たりだね。ところで樹、寝不足って…どうした?カリキュラムがきつい?」
「そういう訳じゃない、けど」
「けど?」
「委員会の仕事もあって、俺のキャパ超えたみたいだ。役立たずでごめんな…補佐としての仕事も全然出来てないし。補佐じゃなくてもっと雑用とかの方がいいかもしれない。補佐役に適任の人も…」
「だめ。樹じゃないと補佐は無理」
「え。だって、俺、全然補佐の仕事してないよな?役に立ってなくね?」
(癒し担当とか言ってたくせに、全然近寄りもしないじゃないか)
またじわりとどす黒く重く冷たい感情が湧き出るのが分かって慌てて振り払った。
「そんな事ないよ。樹は役に立ってるというか、樹にしか出来ない仕事だよ。俺の補佐は」
「…ッ!」
雅樹はずるい。そんな事言われたら離れられないじゃねーか。
「なんもしてねぇのに?」
「してるの」
「ふ、ふーん。そっか。へへ」
「そうだよ」
単純な俺は雅樹のその言葉でもう浮上してしまう。
「マサくーん!遅れちゃった。ごめんね」
バタバタと足音がして、雅樹の腰に飛びついてきた。
「お疲れ。あんま無理するなよ?」
「うん。ありがとう。教室出ようとしたら用事言いつけるんだもん…今日、僕が委員会って知ってるはずなのに」
ぷぅと頬を膨らませて拗ねた顔した朱雀は美少女にしか見えない。男子高校生の制服が逆に禁欲的な雰囲気を醸し出してエロい。
「お前は出来る男だからなぁ。ついつい、頼られちゃうんだろ」
「そうかな?えへへ。マサ君にそう言ってもらえるなんて嬉しい。なら、まぁ、いいかな」
雅樹が朱雀の頭を撫でながらそう言って、それを当然のように受け止める朱雀。その姿を見てまた俺の心が軋んだ音がした。さっき、浮上した心がまた簡単に落ちた。
自分の感情の乱高下に疲れてしまう。
「……小鳥遊、行こう」
「あ、うん」
獅子尾がタイミングよく声をかけてくれたから凍り付いたようになって2人から目を離せなかった体が我に返ったように動いた。
「小鳥遊、あんまり無理するな。気にするな」
「え?何が??」
持ち場に戻ると、獅子尾が気づかわし気に言ってくれたけど、何を無理しないのか気にしないのかこの時の俺は全然分かってなくて、首を傾げた。
そんな俺を見て小さくため息をついた獅子尾が頭をぽんぽんと叩いたあと、ぐりぐりと頭を撫で繰り回した。
「お、おい!なんだよ!髪の毛がぐちゃぐちゃになるだろ!」
「ははは」
「!!」
「なんだ?」
「獅子尾が笑った!!!!」
「……」
「あ!照れた!」
「うるさい」
ちょっと顔を赤くした獅子尾にまた乱暴に髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回されて、それがおかしくて声を立てて笑った。
「小鳥遊は、笑顔が可愛いな」
「なっ!なななな!」
「照れた」
「!!!うぅぅ」
「はははは」
そんな馬鹿みたいなやり取りをしていたら、心が軽くなってその後は仕事に集中できた。
◇◇◇◇◇◇
「やっと、ゴールまでの道筋が見えてきたなぁ」
「そうだな。お疲れ」
「獅子尾こそ、お疲れ!俺、お前に頼ってばっかで全然ダメダメだったわ。これからはもっとお前のサポート出来るように頑張るな!補佐の補佐とかウケるけど」
「いや、お前は自分で言うほどダメじゃない。すごく助かってる。それに、篠田がお前の事を癒し担当だと言っていたんだが、納得した」
「は?!そんな事いってたのか?ていうか、癒し担当とか意味不明だよな~。実務では役に立ってないみたいじゃん」
「いや、そんなことない」
語気強く言われてぱちくりしてしまった。そんな俺に気づいた獅子尾がちょっと照れたように俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でながらふいと顔を反らした。
獅子尾はよく俺の頭を犬を撫でるようにしてわしゃわしゃと撫でる。
「また~!ぐちゃぐちゃにすんなってば!」
「小鳥遊の髪の毛は触り心地がよくてつい」
「ついで俺のヘアセットを乱すんじゃねぇ!」
「セットしてるのか?」
「うぐぅ」
「ふっ。お前はほんと、可愛いな」
委員会で顔を合わせるようになってもう何回目だろうか。俺ら会長補佐は2人しかいないから、どうしても濃密にやり取りをするようになる。
最初の頃の無表情が噓のように最近の獅子尾は俺に色んな表情を見せてくれるし、冗談を言うようになった。———からかって遊んでるだけかもしれないが。
だけど、距離が近づいている実感を持てて俺はすごく嬉しかった。
「…樹、って呼んでもいいか?」
「え!マジ?嬉しい。じゃあ、俺も大我って呼んでいい?」
「あぁ。もちろん」
委員会が解散した後も大我とのご縁を大切に繋げていきたいなと思った。
「はぇ?」
獅子尾に言われて己がボケッと雅樹たちを眺めていた事に気づいた。
「あー…ごめん。なんかさ、寝不足でボーっとしてたみたいだ」
「そうか。あまり無理するな。少し休んでてもらっていいから」
「大丈夫!ただでさえ獅子尾に頼りっぱなしだから、ちゃんとやるよ」
「……ちょっと、休憩にしないか?」
「へ?」
獅子尾の後について教室を出て購買でジュースとお菓子を奢ってもらって(固辞したけど聞いてくれなかった)中庭にあるベンチに座った。
「ここ、いいな~」
「俺のお気に入りの場所なんだ」
中庭だけど人目につかないような作りになっていて、落ち着くにはいい場所だった。
遠くに吹奏楽部の吹くぷわ~っていう音、運動部の声とボールを蹴る音やバッドでボールを叩く音が聴こえてきた。
さわさわと心地よい風が通り抜けて気持ちよくて思わず目を閉じてそれらの音に耳を澄ました。ざわついていた心が少しずつ落ち着いてくるのが分かった。
獅子尾は特に何かを言うわけでもなく、そのまま傍にいてくれた。
「ん…」
「起きたか?」
いつの間にか思いっきり獅子尾にもたれかかって寝ていた。
「ごっ!ごめんっ!!!俺どのくらい寝てた?」
「15分くらいかな」
「うわーー!マジでごめんっ!重かったろ?」
「小鳥遊は軽いよ」
ふっと笑って言われた。
「う…そりゃ、獅子尾みたいなカッコイイ体じゃねぇもん」
「そういうんじゃない。小鳥遊は…」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
「なんだよ!言いかけてやめるとか、すっげぇ気になるだろ!」
笑ながら獅子尾をどつこうとしたら、ひょいと躱されてバランスを崩した俺を支えた。クソ!と思って顔を見るとちょっと意地悪な笑顔で俺を見ててドキッとした。
「小鳥遊は可愛いなと思ってな」
「は?」
「戻るか」
「う、うん」
何だったんだ?さっき見た意地悪なカッコイイ笑いを思い出してドキドキしながら獅子尾の後について教室へ戻った。
「樹?どこ行ってたの?」
「獅子尾とちょっと休憩してた」
「ふぅん」
「ごめんっ。サボってたわけじゃないんだ!俺が寝不足だったから獅子尾が休ませてくれただけなんだ」
「別にサボってるとか思ってないよ」
不機嫌な顔で雅樹に言われて、なんか落ち込んだ。委員長の雅樹や朱雀の働きぶり、補佐役の獅子尾の働きぶりに密かに落ち込んでいたから。いや、こいつらだけじゃない勝や志木だって精力的に仕事をして片づけていた。
既に各々の担当でリーダーシップを発揮していた。それに自分の自己管理不足から起きた睡眠不足だとか自分でも持て余している精神状況だとか、諸々が自分の役立たずっぷりを突きつけられた気持ちなった。
「篠田、すまんな。俺が強引に休憩させたんだ。小鳥遊は悪くない」
「言われなくても分かってるよ…ごめん。忙しくて気が立ってるみたいだ。八つ当たりだね。ところで樹、寝不足って…どうした?カリキュラムがきつい?」
「そういう訳じゃない、けど」
「けど?」
「委員会の仕事もあって、俺のキャパ超えたみたいだ。役立たずでごめんな…補佐としての仕事も全然出来てないし。補佐じゃなくてもっと雑用とかの方がいいかもしれない。補佐役に適任の人も…」
「だめ。樹じゃないと補佐は無理」
「え。だって、俺、全然補佐の仕事してないよな?役に立ってなくね?」
(癒し担当とか言ってたくせに、全然近寄りもしないじゃないか)
またじわりとどす黒く重く冷たい感情が湧き出るのが分かって慌てて振り払った。
「そんな事ないよ。樹は役に立ってるというか、樹にしか出来ない仕事だよ。俺の補佐は」
「…ッ!」
雅樹はずるい。そんな事言われたら離れられないじゃねーか。
「なんもしてねぇのに?」
「してるの」
「ふ、ふーん。そっか。へへ」
「そうだよ」
単純な俺は雅樹のその言葉でもう浮上してしまう。
「マサくーん!遅れちゃった。ごめんね」
バタバタと足音がして、雅樹の腰に飛びついてきた。
「お疲れ。あんま無理するなよ?」
「うん。ありがとう。教室出ようとしたら用事言いつけるんだもん…今日、僕が委員会って知ってるはずなのに」
ぷぅと頬を膨らませて拗ねた顔した朱雀は美少女にしか見えない。男子高校生の制服が逆に禁欲的な雰囲気を醸し出してエロい。
「お前は出来る男だからなぁ。ついつい、頼られちゃうんだろ」
「そうかな?えへへ。マサ君にそう言ってもらえるなんて嬉しい。なら、まぁ、いいかな」
雅樹が朱雀の頭を撫でながらそう言って、それを当然のように受け止める朱雀。その姿を見てまた俺の心が軋んだ音がした。さっき、浮上した心がまた簡単に落ちた。
自分の感情の乱高下に疲れてしまう。
「……小鳥遊、行こう」
「あ、うん」
獅子尾がタイミングよく声をかけてくれたから凍り付いたようになって2人から目を離せなかった体が我に返ったように動いた。
「小鳥遊、あんまり無理するな。気にするな」
「え?何が??」
持ち場に戻ると、獅子尾が気づかわし気に言ってくれたけど、何を無理しないのか気にしないのかこの時の俺は全然分かってなくて、首を傾げた。
そんな俺を見て小さくため息をついた獅子尾が頭をぽんぽんと叩いたあと、ぐりぐりと頭を撫で繰り回した。
「お、おい!なんだよ!髪の毛がぐちゃぐちゃになるだろ!」
「ははは」
「!!」
「なんだ?」
「獅子尾が笑った!!!!」
「……」
「あ!照れた!」
「うるさい」
ちょっと顔を赤くした獅子尾にまた乱暴に髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回されて、それがおかしくて声を立てて笑った。
「小鳥遊は、笑顔が可愛いな」
「なっ!なななな!」
「照れた」
「!!!うぅぅ」
「はははは」
そんな馬鹿みたいなやり取りをしていたら、心が軽くなってその後は仕事に集中できた。
◇◇◇◇◇◇
「やっと、ゴールまでの道筋が見えてきたなぁ」
「そうだな。お疲れ」
「獅子尾こそ、お疲れ!俺、お前に頼ってばっかで全然ダメダメだったわ。これからはもっとお前のサポート出来るように頑張るな!補佐の補佐とかウケるけど」
「いや、お前は自分で言うほどダメじゃない。すごく助かってる。それに、篠田がお前の事を癒し担当だと言っていたんだが、納得した」
「は?!そんな事いってたのか?ていうか、癒し担当とか意味不明だよな~。実務では役に立ってないみたいじゃん」
「いや、そんなことない」
語気強く言われてぱちくりしてしまった。そんな俺に気づいた獅子尾がちょっと照れたように俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でながらふいと顔を反らした。
獅子尾はよく俺の頭を犬を撫でるようにしてわしゃわしゃと撫でる。
「また~!ぐちゃぐちゃにすんなってば!」
「小鳥遊の髪の毛は触り心地がよくてつい」
「ついで俺のヘアセットを乱すんじゃねぇ!」
「セットしてるのか?」
「うぐぅ」
「ふっ。お前はほんと、可愛いな」
委員会で顔を合わせるようになってもう何回目だろうか。俺ら会長補佐は2人しかいないから、どうしても濃密にやり取りをするようになる。
最初の頃の無表情が噓のように最近の獅子尾は俺に色んな表情を見せてくれるし、冗談を言うようになった。———からかって遊んでるだけかもしれないが。
だけど、距離が近づいている実感を持てて俺はすごく嬉しかった。
「…樹、って呼んでもいいか?」
「え!マジ?嬉しい。じゃあ、俺も大我って呼んでいい?」
「あぁ。もちろん」
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