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第二章:聖女はとうとう聖女になる
20.聖女の最後
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どうやら今日この日をもって私は聖女から一般人になるようだ。まあそれは別に構わないし、役目はそこら中うろうろしていても果たせるのだから問題ない。
おかげである程度の自由は与えられることになったし、住まいも待遇も今までと同じと言われ安心している。
いまさら知ったのだが、離宮の中でも私の立場は完全に明かされていなかったらしい。世話係まで選定しておいて秘密も何もなさそうなものだが、そこは口八丁で何とかしていたようだ。
「それってマジなの? じゃあウチは今の今まで聖女のおまけだと思われてたってことなのかぁ。知ってたのはルカ統括みたいな偉い人たちと、リヤンたちだけってこと!? よくバレなかったもんだねぇ」
「わたくしの言葉には説得力がございますので皆信じてくれたのでしょう。人望が厚いとも言い換えらるかもしれません。こんなこともあろうかと、策は幾重にも張り巡らせておくものなのでございます」
そんなことを聞かされた私は、改めてルカの統括としての力量と言うのか権力と言うのか、まあそんなことを感じていた。そのポジション的にも神職と言うよりは政治家なのだろう。
だが私は何者なのか離宮内の誰もが思うだろうし噂にもなるはずだ。ルカ統括をはじめとする神属議会の動きからして聖女しかない。
いくらなんでも聖女召喚の儀式自体を隠すことは難しく、三月の日になると祈祷場が閉め切れられることも公然の事実だったと聞く。
そこでルカの取った方法は、聖女の召喚には成功したが、一緒に無関係な子供がついてきてしまったと言う嘘をつくことだった。
そして聖女はと言うと、目覚めずに昏睡状態のまま寝かされているとの大嘘を振りまいていたのだ。
その聖女が目覚めたのだからこんなめでたいことはない。ではさっそく降臨祭、となるのもおかしいような気もするのだが……
しかし現地の人々はそんなことを考えず大喜びで街を飾り、ありったけの食材を惜しげもなく使いごちそうを通り中に並べるのだった。
そして私の処遇だが、なんか知らんけどどっかから湧いて出てきた身寄りのない子供として、水の離宮で保護されることになった、と言う名目で現状維持となり、生活はこれまでと変わらない。
それでもこの水の離宮内でただ一人の子供である私は、本来いるはずのない存在らしい。いくら神力があっても十二歳までは親元にいるのが当たり前だし、神官として勤めていても子持ちになれば街へ住むことになるため、小さな子供の出入り自体がないのだ。
とはいえ、今まで離宮に子供を立ち入らせなかったこと自体に明確な理由があったわけではない。
結婚したり子供ができれば家族全員が離宮に住むことはできないわけで、当然当人も街へ住むことになっていただけである。
もちろん家族全員が水属性の神力を持っていることもありえないし、子供を学校へ通わせるにも街へ住むのが自然だろう。そんな事情で、離宮は子供のいない施設になったと言うわけだ。
私はこの説明を受けて初めて知ったのだが、神官は別に強制されて務めているわけではなく、所帯の有無にかかわらず退職することもあるし、住み込みなのか街へ住んで通うかすら自由に選べるらしい。
さすがに見習い期間の間は住み込みとなるのだが、単身者の中にも家族の元が良いと見習い期間後に戻るものもいるそうだ。
このように職業選択だけでなく、全体的にこの国は自由が多く、共産主義は自由がないと思い込んでいた私はことあるごとにカルチャーショックを受けている。
しかしその中で異彩を放つのがルカ統括だ。彼女の考え方や生き方はなかなかに衝撃的である。
離宮内をはじめとして、知る限りではリヤンたちに限らずのんきで楽観的な人たちが多い。しかし彼女はある意味正直者の中に一人混じった嘘つきと言ってもいいくらいには腹黒いのだ。
それでも言葉の端々には愛国心や平和への想いが感じられるので、単に正直者とも言えるのかもしれない。
その正直者から、名目上とはいえ聖女から解放されることについての説明を受け、私はようやく実感がわいてきた。
つまりここからは聖女ではなく一般人ってことになるのだ。うれしいようなさみしいような複雑な気持ちだけど、リヤンたち三人がついていてくれるからきっとダイジョブのはず。
「では今後はアキナさまとお呼びいたしますからお許しくださいませ。それと大切なことをもう一点、現在アキナさまはおそらく五、六歳でしょう。ですので学校へ通わなければなりません」
「が、っこう? もしかして街の?」
「さようでございます。ここから一番近い基礎教育学校はリヤンが卒業した学校になりますので、アキナさまもそこでよろしいですね? 保護者はわたくしが努めますが、姉代わりとしてリヤンにもついて行ってもらいましょう」
「ええっ!? 学校って保護者同伴で通うものなの? まあ確かに年齢を考えたら仕方ないかもしれないけど、なんとなく照れるね……」
「わたくしがお供いたしますのは初日だけですよ? 入学手続がございますからね。翌日からはリヤンに連れて行ってもらい、帰りも迎えに行かせます。学力がわかりませんので一応五歳で手続きしておきました」
「はやっ! いつの間にそんなことしてたのよ。もしかしてウチがここに来たときにはここまで考えてたとか? ルカ統括ってもしかして――」
「お世辞は結構ですよ? それよりも、くれぐれも学校内や街中で神力を使わないようお願いいたします。街にも力を持った者は住んでいますから、何かの拍子で聖女だと勘ぐられたら面倒ですからね」
別にほめようとかお世辞を言おうとか全く思っていなかったし、むしろ腹黒いとか悪知恵が働くと言いたかったのだが…… だがそんなことより話がどんどん進んでいくことへの戸惑いが強い。
そして最後にここまでの話をひっくり返すような注文が出てきた。まったくルカ統括も二枚舌が過ぎるのではなかろうか。
「それでアキナさま? さきほど代理聖女へかけていただいていた髪の色を変える術ですが、ご自身にかけて一日中持つものですか? さすがにその淡い栗色の髪では目立ちすぎますので、もっと地味な赤か青にして通っていただきたく存じます」
私はもう頭が混乱してきてわけがわからなくなりそうだった。
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本作品をお読みくださいまして誠にありがとうございました。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨お伝えくださいますと嬉しいです。
ぜひお気に入りやハート&クラッカーをお寄せください。また感想等もお待ちしておりますので、併せてお願いいたします。
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いまさら知ったのだが、離宮の中でも私の立場は完全に明かされていなかったらしい。世話係まで選定しておいて秘密も何もなさそうなものだが、そこは口八丁で何とかしていたようだ。
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そんなことを聞かされた私は、改めてルカの統括としての力量と言うのか権力と言うのか、まあそんなことを感じていた。そのポジション的にも神職と言うよりは政治家なのだろう。
だが私は何者なのか離宮内の誰もが思うだろうし噂にもなるはずだ。ルカ統括をはじめとする神属議会の動きからして聖女しかない。
いくらなんでも聖女召喚の儀式自体を隠すことは難しく、三月の日になると祈祷場が閉め切れられることも公然の事実だったと聞く。
そこでルカの取った方法は、聖女の召喚には成功したが、一緒に無関係な子供がついてきてしまったと言う嘘をつくことだった。
そして聖女はと言うと、目覚めずに昏睡状態のまま寝かされているとの大嘘を振りまいていたのだ。
その聖女が目覚めたのだからこんなめでたいことはない。ではさっそく降臨祭、となるのもおかしいような気もするのだが……
しかし現地の人々はそんなことを考えず大喜びで街を飾り、ありったけの食材を惜しげもなく使いごちそうを通り中に並べるのだった。
そして私の処遇だが、なんか知らんけどどっかから湧いて出てきた身寄りのない子供として、水の離宮で保護されることになった、と言う名目で現状維持となり、生活はこれまでと変わらない。
それでもこの水の離宮内でただ一人の子供である私は、本来いるはずのない存在らしい。いくら神力があっても十二歳までは親元にいるのが当たり前だし、神官として勤めていても子持ちになれば街へ住むことになるため、小さな子供の出入り自体がないのだ。
とはいえ、今まで離宮に子供を立ち入らせなかったこと自体に明確な理由があったわけではない。
結婚したり子供ができれば家族全員が離宮に住むことはできないわけで、当然当人も街へ住むことになっていただけである。
もちろん家族全員が水属性の神力を持っていることもありえないし、子供を学校へ通わせるにも街へ住むのが自然だろう。そんな事情で、離宮は子供のいない施設になったと言うわけだ。
私はこの説明を受けて初めて知ったのだが、神官は別に強制されて務めているわけではなく、所帯の有無にかかわらず退職することもあるし、住み込みなのか街へ住んで通うかすら自由に選べるらしい。
さすがに見習い期間の間は住み込みとなるのだが、単身者の中にも家族の元が良いと見習い期間後に戻るものもいるそうだ。
このように職業選択だけでなく、全体的にこの国は自由が多く、共産主義は自由がないと思い込んでいた私はことあるごとにカルチャーショックを受けている。
しかしその中で異彩を放つのがルカ統括だ。彼女の考え方や生き方はなかなかに衝撃的である。
離宮内をはじめとして、知る限りではリヤンたちに限らずのんきで楽観的な人たちが多い。しかし彼女はある意味正直者の中に一人混じった嘘つきと言ってもいいくらいには腹黒いのだ。
それでも言葉の端々には愛国心や平和への想いが感じられるので、単に正直者とも言えるのかもしれない。
その正直者から、名目上とはいえ聖女から解放されることについての説明を受け、私はようやく実感がわいてきた。
つまりここからは聖女ではなく一般人ってことになるのだ。うれしいようなさみしいような複雑な気持ちだけど、リヤンたち三人がついていてくれるからきっとダイジョブのはず。
「では今後はアキナさまとお呼びいたしますからお許しくださいませ。それと大切なことをもう一点、現在アキナさまはおそらく五、六歳でしょう。ですので学校へ通わなければなりません」
「が、っこう? もしかして街の?」
「さようでございます。ここから一番近い基礎教育学校はリヤンが卒業した学校になりますので、アキナさまもそこでよろしいですね? 保護者はわたくしが努めますが、姉代わりとしてリヤンにもついて行ってもらいましょう」
「ええっ!? 学校って保護者同伴で通うものなの? まあ確かに年齢を考えたら仕方ないかもしれないけど、なんとなく照れるね……」
「わたくしがお供いたしますのは初日だけですよ? 入学手続がございますからね。翌日からはリヤンに連れて行ってもらい、帰りも迎えに行かせます。学力がわかりませんので一応五歳で手続きしておきました」
「はやっ! いつの間にそんなことしてたのよ。もしかしてウチがここに来たときにはここまで考えてたとか? ルカ統括ってもしかして――」
「お世辞は結構ですよ? それよりも、くれぐれも学校内や街中で神力を使わないようお願いいたします。街にも力を持った者は住んでいますから、何かの拍子で聖女だと勘ぐられたら面倒ですからね」
別にほめようとかお世辞を言おうとか全く思っていなかったし、むしろ腹黒いとか悪知恵が働くと言いたかったのだが…… だがそんなことより話がどんどん進んでいくことへの戸惑いが強い。
そして最後にここまでの話をひっくり返すような注文が出てきた。まったくルカ統括も二枚舌が過ぎるのではなかろうか。
「それでアキナさま? さきほど代理聖女へかけていただいていた髪の色を変える術ですが、ご自身にかけて一日中持つものですか? さすがにその淡い栗色の髪では目立ちすぎますので、もっと地味な赤か青にして通っていただきたく存じます」
私はもう頭が混乱してきてわけがわからなくなりそうだった。
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