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第三章:聖女は一般人になる
21.聖女は一般人らしく
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この国の教育機関には基礎教育学校と職業訓練校、そして神力の属性ごとの施設で見習いを受け入れている。さらに私塾の様なものもあるらしいが、そこは主に商人の子らが経済的なことを学ぶようだ。
私が通うのは基礎教育学校で、通常は学校と言うとこちらを指す。ここには五歳から十二歳まで通うと言うことなので、小学校に中学校を少し足したくらいの義務教育機関と言えるだろう。
初めての登校前となった今日、はたして教育レベルがどのくらいなのか。きちんとついていけるのかが心配でとても緊張している。
幸いこちらの世界でも一日は二十四時間だし、普段使っている数え方は十進数なので算数や数学は大差ないだろう。
国語に関してはあまり心配しておらず、なぜか最初からペラペラ話せていたくらいだから文字もいきなり読み書きできる気がする。
勉強と言えば必要になるのが教科書やノートだけど、今のところ紙が見当たらないので存在しないか貴重なのかもしれない。
問題は教育に力を入れていると言う歴史だろうか。それでも五百年前に現れたあの方についてどんなことが学べるのか、少し楽しみだった。
もしかしたら私も数百年後には教科書に載ってたりして、なんてことを考えながら離宮からの道を進んでいく。
その道中は平穏無事で、なんてことはなく――
「だーかーらー! 降ろしてって言ってるでしょ! 自分で歩けるのー! リヤンってばお姉ちゃん替わりなんて言われて調子乗りすぎじゃないの!?」
「ほらほらアキナさま、そんなに暴れたら落ちちゃいますよ。それに歩いてたら間に合わなくなってしまいます。そこはこちらのお母さんに文句言ってくださいな」
「お、おかっ、リヤン? わたくしはまだ独身なのですからおかしな言い方はしないように。あくまで保護者ですからね? アキナさまもこちらをにらむのはお門違いですからおやめくださいませ」
「じゃあ誰に文句言えばいいのよ! いっつもそうやってみんなでウチを子ども扱いしてさぁ。学校はまあ? 知らないことが多すぎるから仕方なくいくけど? だからと言っておんぶで行くなんて恥ずかしすぎて初日からいじめられちゃうかもしれないじゃないの」
「女の子をいじめる男の子はいつの時代もいますからねぇ。でもアキナさまはかわいらしいからきっと人気者になっちゃいますよ。何人から泥団子を投げつけられるか楽しみですねぇ」
「どろ!? なにそれ? そんなことされたら服が汚れちゃうじゃないの。それで相手の気を引こうってこと? ちょっとおかしくない?」
「おかしいですかね? 最初は泣いたりしちゃうこともありましたけど、そういうもんだってことはわかってますから、気に入られたんだなって思えばなんてことありませんよ? それに服は学校の先生が洗ってくれますから心配いりません」
リヤンはなんてことないと軽く言うが、下町とは言え一応都会に住んでいた文明的な現代人の感覚では抵抗があるに決まってる。そもそも普段は土の上を歩くことすら少なかったのだから。
小さいころは確かに公園で水を掛け合ったり地べたへ転がったりしたけど、そんなことは小学校低学年で卒業するもんだ。
と、ここまで考えてからふと思う。今の私は小さな子供だった……
つまり同年代の子供たちが少々の汚れを気にするはずがないし、愛情表現がスマートじゃないのも当たり前なのだろう。
「でもやっぱり汚いのはイヤなの! せめて消しゴムとかにしてほしいよ……」
「けし? ごむ? ゴムって投げたりするものだったんですか? たまに木にたれてることがあって、引っ張ったり振り回したりして遊んでましたけど、人に当たると結構痛いじゃないですか。もしかしてアキナさまって意外に乱暴者だったとか?」
お互いの考えている状況はかみ合ってないが、乱暴だったのかと言われて否定できずに思わず黙ってしまった。別にごまかしてもよかったけど、正直者なのでつい口が固まってしまったのだ。
すると途中までにこやかに私たちの様子を眺めていたルカがあわてて口を挟んできた。どうやら心配事を思いついた様子である。
「よろしいですかアキナさま? 絶対に仕返しとして神力を使ってはなりません。アキナさまが他者に対してどのようなことができるか一部しか存じませんが、相手が気に入らないからと言って精神操作をするなどもってのほかでございますよ?」
「しないしない。いったいウチをなんだと思ってるわけ? 仮にも聖女だよ? 品行方正、清廉潔白、聖人君子なんだから神力を使って優位に立とうだなんて考えてもみなかったんだからね?」
「くれぐれもお頼みいたしますね? 一般民衆にとって神力とは敬意の対象でもありますが、畏怖の対象でもあるのですから。特に民衆会関係者の子息であったならどんな難癖をつけられるかわかりません」
「ああ…… またそういう政治的なやつ? ウチはそういうのに巻き込まれたくないから絶対やらないよう気を付けるよ。下手なコトして聖女だってばれたらルカ統括だけじゃなくウチ自身も困るに決まってるもん。だから十分注意するって―― もう、そんな顔しないでダイジョブよ?」
私は自身の生活を守るためにも、離宮の外では絶対に神力を使わないと決意した。
私が通うのは基礎教育学校で、通常は学校と言うとこちらを指す。ここには五歳から十二歳まで通うと言うことなので、小学校に中学校を少し足したくらいの義務教育機関と言えるだろう。
初めての登校前となった今日、はたして教育レベルがどのくらいなのか。きちんとついていけるのかが心配でとても緊張している。
幸いこちらの世界でも一日は二十四時間だし、普段使っている数え方は十進数なので算数や数学は大差ないだろう。
国語に関してはあまり心配しておらず、なぜか最初からペラペラ話せていたくらいだから文字もいきなり読み書きできる気がする。
勉強と言えば必要になるのが教科書やノートだけど、今のところ紙が見当たらないので存在しないか貴重なのかもしれない。
問題は教育に力を入れていると言う歴史だろうか。それでも五百年前に現れたあの方についてどんなことが学べるのか、少し楽しみだった。
もしかしたら私も数百年後には教科書に載ってたりして、なんてことを考えながら離宮からの道を進んでいく。
その道中は平穏無事で、なんてことはなく――
「だーかーらー! 降ろしてって言ってるでしょ! 自分で歩けるのー! リヤンってばお姉ちゃん替わりなんて言われて調子乗りすぎじゃないの!?」
「ほらほらアキナさま、そんなに暴れたら落ちちゃいますよ。それに歩いてたら間に合わなくなってしまいます。そこはこちらのお母さんに文句言ってくださいな」
「お、おかっ、リヤン? わたくしはまだ独身なのですからおかしな言い方はしないように。あくまで保護者ですからね? アキナさまもこちらをにらむのはお門違いですからおやめくださいませ」
「じゃあ誰に文句言えばいいのよ! いっつもそうやってみんなでウチを子ども扱いしてさぁ。学校はまあ? 知らないことが多すぎるから仕方なくいくけど? だからと言っておんぶで行くなんて恥ずかしすぎて初日からいじめられちゃうかもしれないじゃないの」
「女の子をいじめる男の子はいつの時代もいますからねぇ。でもアキナさまはかわいらしいからきっと人気者になっちゃいますよ。何人から泥団子を投げつけられるか楽しみですねぇ」
「どろ!? なにそれ? そんなことされたら服が汚れちゃうじゃないの。それで相手の気を引こうってこと? ちょっとおかしくない?」
「おかしいですかね? 最初は泣いたりしちゃうこともありましたけど、そういうもんだってことはわかってますから、気に入られたんだなって思えばなんてことありませんよ? それに服は学校の先生が洗ってくれますから心配いりません」
リヤンはなんてことないと軽く言うが、下町とは言え一応都会に住んでいた文明的な現代人の感覚では抵抗があるに決まってる。そもそも普段は土の上を歩くことすら少なかったのだから。
小さいころは確かに公園で水を掛け合ったり地べたへ転がったりしたけど、そんなことは小学校低学年で卒業するもんだ。
と、ここまで考えてからふと思う。今の私は小さな子供だった……
つまり同年代の子供たちが少々の汚れを気にするはずがないし、愛情表現がスマートじゃないのも当たり前なのだろう。
「でもやっぱり汚いのはイヤなの! せめて消しゴムとかにしてほしいよ……」
「けし? ごむ? ゴムって投げたりするものだったんですか? たまに木にたれてることがあって、引っ張ったり振り回したりして遊んでましたけど、人に当たると結構痛いじゃないですか。もしかしてアキナさまって意外に乱暴者だったとか?」
お互いの考えている状況はかみ合ってないが、乱暴だったのかと言われて否定できずに思わず黙ってしまった。別にごまかしてもよかったけど、正直者なのでつい口が固まってしまったのだ。
すると途中までにこやかに私たちの様子を眺めていたルカがあわてて口を挟んできた。どうやら心配事を思いついた様子である。
「よろしいですかアキナさま? 絶対に仕返しとして神力を使ってはなりません。アキナさまが他者に対してどのようなことができるか一部しか存じませんが、相手が気に入らないからと言って精神操作をするなどもってのほかでございますよ?」
「しないしない。いったいウチをなんだと思ってるわけ? 仮にも聖女だよ? 品行方正、清廉潔白、聖人君子なんだから神力を使って優位に立とうだなんて考えてもみなかったんだからね?」
「くれぐれもお頼みいたしますね? 一般民衆にとって神力とは敬意の対象でもありますが、畏怖の対象でもあるのですから。特に民衆会関係者の子息であったならどんな難癖をつけられるかわかりません」
「ああ…… またそういう政治的なやつ? ウチはそういうのに巻き込まれたくないから絶対やらないよう気を付けるよ。下手なコトして聖女だってばれたらルカ統括だけじゃなくウチ自身も困るに決まってるもん。だから十分注意するって―― もう、そんな顔しないでダイジョブよ?」
私は自身の生活を守るためにも、離宮の外では絶対に神力を使わないと決意した。
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