聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第三章:聖女は一般人になる

31.聖女の覚悟

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『さあ大変盛り上がってまいりました。記念すべき第一回大会の栄冠えいかんを手にするのはどのちびっこ力士でしょうか!』

 私は頭の中で勝手に実況を浮かべながら、目の前で行われている予選を眺めていた。少し離れたところで悔しそうにしているケイラムと不意に目が合うと、ふんっと言わんばかりに目をそらす。

『なーに感じ悪ぅ。こっち見てたから目があったくせにさ。だいたい勝負ができなかったのはウチのせいじゃないっての』

「アキナちゃんどしたの? やっぱり上級生は迫力あるねぇ。一緒の組じゃなくて良かったよ。まあワタシが出場するわけじゃないけどさ」

「ああなんでもないの。ただあのバカがこっち見てたからさぁ。そんなムキになるほど勝負したいもんなのかな。一応あっちは男の子で、ウチは女の子のつもりなんだけど?」

「きっと弱い者いじめしかできない情けないちび王子なんだよ。結局予選でもタケちゃんに負けて二位だったしね。はっきりいってアキナちゃんに挑戦する権利はないと思うんだけどな」

「確かにクラリアの言うとおりだね! よし、そうやって断っておこうっと。男子の横綱になれたら勝負してあげるって言えばあきらめるか、少なくとも一番になれるまでは大人しくするしかないでしょ」

「うんうん、だから予選で勝てるよう集中してよね? 一番下の学年だからって遠慮えんりょすることないんだからさ。みんなふっとばしちゃえー!」

 そろそろ私の出場時間だ。クラリアだけではなくほかの女子からも声援を受け入場門へと向かう。五歳の代表として選ばれたのは当然のように私とクリスだった。

 組み合わせ抽選のくじ引きを引くといやがおうにも気分がアガってくる。さっきまで行われていた上級生の部が相当盛り上がったので余計に熱が入るのかもしれない。

 しかもいつの間にか近所の人たちが見物に来ていて、校庭は突如とつじょやってきた人たちであふれ始めていた。まさかこんなに盛り上がるなんて嬉しいやら恥かしいやら。

 とはいえ、見に来てる人たちも、まさかこんなちびっ子の発案だなんて知らないはず。これは一応内緒にしていて、ルカ統括の気まぐれで発案したことになっている。


 そしていよいよ始まった低学年の部、一回戦はなんと八歳同士のつぶし合いとなってしまった。だがこんなこともあろうかと、負けたら敗者復活に並ぶことができるようになっている。

 校内予選では最終的に勝率が高い順に二人が学校代表として、街の中央広場で行われる代表選へいどむと言うルールだった。

 出場者八人だから七人倒せば文句なし。二敗が出れば六勝で勝ち抜けとなる。単純に言えば一度も負けなければ予選通過が決まるわけだ。

 こうして順々に対戦が進んでいき、私とクリスは順当に勝ち上がっていった。最初の組み合わせで負けた四人はすぐに敗者復活戦があり連戦となるため、体力的にも厳しくなっていく。

「アキナちゃん、おつかれさま! ほら、クッキー持ってきたよ。これで栄養補給しないと次がつらいからね。でもやっぱすごいよ。七歳の子を投げ飛ばしちゃうんだからさ。ホントありえないってみんな言ってたもん」

「まあ投げたと言っても相手の子が突進とっしんしてきたからその力を利用しただけだよ。今度クラリアにも教えてあげるからね」

「やった! ワタシも一回くらいは勝ってみたいもん。そいえばさ、よく見てるとアキナちゃんってほとんど動いてないよね。やっぱりそれが強さの秘密なの?」

「そうそう、ぶつかっていくと大きいほうが有利だからね。相手の力をくずしてこうやってこんな感じかな」

 私はそう言って両手を戦わせるようにして説明する。そうはいってもこれだけでは何がなんだからわからないだろう。だから今度は実戦で教えることを約束していた。

 次はクリスが六歳、私が八歳との対戦となる。ここを勝てばぐっと優勝が近づくのだが、さすがに体格差がすごくてかなり不安である。これは秘策を使うしかない。

 クッキーを食べて気合いを入れ直した私は、ケイラムとの対戦時に使おうと考えていた技をここで使うことにした。おそらく学校内の勝負で使ったらしばらくは使えないだろう。

 先に出番が来たのはクリスだったが、相手の六歳の子がたっぷりとした体格なのに立ち合いに失敗し組み合ってしまいどうにも動かない。あげくまわしをつかまれて足を浮かされると、そのまま崩れ落ちるように膝をついてしまった。

「アキナごめんー 負けちゃった。でも敗者復活もあるからまだ頑張るからね!」

「うんうん、クリスのかたきは討つから任せといてよね!」

 その前に私がこのでっかい八歳を倒さなければならない。全ては立ち合いにかかっている。あらためて相手の子を観察するようにじっと見つめた。

 八歳の上級生だけあって手足が長く、動きも遅くないことは前の立ち合いで分かっている。それだけに勝負は一瞬でつけるつもりだった。
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