聖女は良い子と呼ばれたくない! ~社会からはみ出した夜遊び少女のゆるり異世界生活~

釈 余白(しやく)

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第三章:聖女は一般人になる

33.聖女の脱力

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 結局すべての取組が終わったのはもう暗くなりはじめる夕方のことだ。先生たちの配慮はいりょもあって、低学年女子の部は連続ですべてこなすのではなく、高学年女子の部の半分を先に実施した。

 最初からこうしてくれれば男子の結果も多少変わったかもしれないが、それを今さら言っても仕方ない。それに五歳はどうせ全敗なので同じ結果で終わっただろう。

 こうして我が校の代表が決まって整列すると、さすがに責任せきにん感と緊張きんちょう感で身が引き締まる思いである。

 盛り上がった観客たちからはなぜか差し入れがたっぷりと届き、私を含む代表者たちは帰り道が大変だった。と言っても私の場合はリヤンが持ってくれるからなんてことないけど。


 そのメンバーだが、高学年は男子が十二歳二名、女子は十二歳と十一歳が一名ずつと決まった。十二歳と言えば中学生と同じだから順当と言えるだろう。

 そして低学年は男子が八歳と七歳の二人、女子は八歳の長身の子が六勝して勝ち上がっていた。もう一人は言うまでもなく一番下の学年の私、つまり五歳と知って観客たちは相当におどろいた様子だった。

 代表選は一か月後なのでそれほど先ではない。そのため八歳の子と一緒に強化練習をしたいところだ。あの体格なら技を覚えれば相当有利になる。

 六歳のアンコちゃんも相当いい線行くだろうけど、今回は私が代表だしガマンしてもらうしかない。

 相変わらず学校が終わるころには眠くて仕方のない私は、リヤンの背中であれこれ考えながら夢うつつである。

 そして離宮に帰り着いたころには完全に熟睡じゅくすいしており夕飯の時間までそのまま寝かされていた。


「それにしても眠くなるのが早すぎて困っちゃう。なんでこんなに体力ないんだろうねぇ。フロラも神力使う前からそうだった? 学校行ってるころさ?」

「うーん、確かに今よりは早く寝てたけど、そこまでじゃなかったと思うよ? アキナさまは学校行ってる時って力使ったりしてないんでしょ? 髪の色もそのままだしさ。なら単純に体力不足なんじゃないの?」

「でも毎日のように相撲取ったりしてこんなに運動してるんだよ? それに突然カクンって眠くなっちゃうんだもん。なーんかおかしい気がするんだよねぇ」

「一度救護きゅうご室で見てもらう? でもそしたらアキナさまの素性が知られちゃうかもしれないから、統括がダメって言うかもね」

「じゃあウチが病気になったらどうすんのさ! 死ぬしかないの? ヤだよそんなの! いくらなんでもひどすぎない!?」

「ちょっとアキナさま? 表まで声が響いてますよ? なにをそんなに興奮こうふんして死ぬとか物騒ぶっそうなこと言ってるんです?」

「リヤン! ひどい話なの、ちょっと聞いてよ! ウチが病気になっても救護室へは連れて行ってもらえないんだって! ルカ統括ってばひどくない!?」

「ええっ!? 統括がそんなひどいこと言ったんですか? まさか、いくらなんでもそれはおかしいですね。いっちょ抗議こうぎしてきます!」

 リヤンは憤慨ふんがいして出ていってしまった。しかも運んできた夕食を持ったままで。空腹で待っていた私とフロラはおなかを押さえながらお互いを見る。

「アキナさま? アタシは統括がそう言ったなんて言ってないよ? なのにあんな言い方したからリヤンは本気にして行っちゃったじゃないのさ。なんか後で叱られそうな予感……」

「えっ? ウチのせいなの? フロラが救護室が使えないって言ったんでしょ? まあ確かにかもしれないって仮定の話だったけど…… それよりもおなかすいたねぇ」

「あのあわて者を先回りして何とかするしかないかな。おーい、統括う、あわて者のリヤンがわけわからないこと言いに行くから真に受けないでくださいよー」

 フロラはテーブルの上の水差しのふたを取ってのぞき込みながら叫んだ。そういえば以前、水のあるところにルカ統括有りとかわけのわからないこと言ってたっけ。

 私は失笑しっしょうしながらその様子をながめていたのだが、ノックの音が聞こえてひっくり返るほどおどいてしまった。

「ほら来た! ね? 水と統括はつながってるんだから。ホント油断も隙もないっての」

「そんなバカなことあるわけない、よねぇ…… はーい、どうぞー」

 すると部屋に入ってきたのは確かにルカ統括だったのだ。これには私もフロラの言うことを認めるしかないと態度たいどで示し、ベッドへ大の字にひっくり返って大げさにおどろいて見せた。

 しかし真相はなんてことなく、リヤンが出ていってすぐにルカ統括とばったり出くわしただけだった。

 でも何度も同じ経験をしているフロラは、彼女が自分の能力をごまかしていると考えているようだ。

「アキナさま、大丈夫でしょうか? なにやら生死にかかわるかもしれないほど具合が悪いとリヤンから報告がありました。わたくしがお連れいたしますから食事は後回しにして救護室へまいりましょう」

「えっ、えっ!? もうリヤンってばなんて言ったわけ? フロラもだけど、話がどんどんおかしくなってるじゃないのよ。全然なんともないよ。ちょっと疲れるのが早いなって話してたの」

「さようですか? 体調不良でなければよろしいのですが、いくら聖女と言っても肉体は人間ですからしっかりした体調管理が必要です。我々とは異なり常に神力を使っている状態とも言えますから、おやつはしっかりと食べないといけませんよ?」

「ええー、そんな一日中甘いものばっか食べてらんないよ。みんなは太らないって言うけどウチは太るかもしれないし、口の中が一日中甘ったるいじゃん?」

「まさか学校で出されているおやつを全部食べていないなどと言うことはございませんよね? もしかしたら周囲の児童と量が違うかも知れませんが、必要量を見積もってお願いしていますから間違いなくすべてお食べくださいね?」

「えっと…… もし食べなかったらどうなるの? まさか――」

「命に係わると言うことはございませんが、強烈きょうれつな眠気や倦怠けんたい感、場合によっては突然気を失うこともあり得ます。もしかして心当たりがあるなどとおっしゃいませんよね?」

「それってもしかして常識? リヤンたちでも知ってるくらいの?」

「もちろんでございます。神力に携わる者にとって基礎中の基礎ですから」

 私が横目でフロラとリヤンを見やると、彼女たちは同じ方向へと顔を動かし私の視線をよけた。



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