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第1章

第12話、受付嬢クロネディア

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 はぁー食った食った。

 お金を支払い酒場を出ると、当初の予定であった冒険者ギルドへと向かい歩き始める。

 街で一際目立つ大きな建物を目指していた俺たちは、何事もなく街の中心地で鎮座している四階建ての建物、冒険者ギルドへと到着した。

 建物の中に入るとかなり広く、また床だけでなく壁にも石の薄版が貼り付けられているため静謐せいひつで豪華な印象を受ける。
 またそのフロアを見回すと、剣や槍などの武器を携帯している人達が、カウンターやテーブル、そして多くの張り紙が貼られた掲示板の前にいるのが見えた。

 真琴はその中でも掲示板が気になるらしく、さっきからチラチラと見ていると思っていたら、身体ごとクルリとこちらへ振り向く。

「どんな依頼があるのか、ちょっと見て来てもいいかな? 」

「それなら一緒に見よう、俺も気になるし」

 依頼書が貼ってある掲示板の前まで来たのだけど、かなり大きい、と言うか長いな。
 掲示板は学校の教室の前から後ろぐらいまでの長さがあり、その面積の半分を埋めるくらいに依頼書が貼られていた。

 どれどれ。なんて書いてるのかな?




『オークの犬歯採取、
 十本単位で買取します。100本集まった時点で終了とさせて頂きます。
【報奨金】十本5万ルガ』

『隣町キーズンまでの護衛隊員募集、
 残り若干名、詳しい内容は直接聞いてください。
【報奨金】月25~35万ルガ』

『魔法実験のサポート及び人体実験の被験者、
 身体が丈夫な人優遇、宿泊施設完備、長期雇用有り。
【報奨金】月50万ルガ』

『ヨシュア爺さんの話し相手、
 女性限定(熟女も可)。
【報奨金】三時間、3000ルガ』

『喫茶ボノボノのトイレ掃除、
 かなり汚れていて根気がいるので、サボらない真面目な人がいいです。
【報奨金】8000ルガ』

『庭の草刈り、
 広さは50×50mくらいあります。
(注)以前依頼したら、魔法で簡単に済まそうとした人がいてかなり迷惑しました。なので火炎系、爆裂系魔法を使われる方はご遠慮下さい。
【報奨金】10万ルガ』




 なんか冒険者って、何でも屋さんみたいで大変そう。
 あっ、こっちの方のは少し毛色が違うみたいだ。

 そこにはパーティーメンバー募集や、パーティー同士でのダンジョン探索の誘い合わせ、そして先輩冒険者が新米冒険者に同伴で探索行きます、と言うのが貼ってあった。

 真琴も一通り見たみたいで、こちらの方まで来る。

「ユウト、どうだった? 」

「そだね、なんか色々あって意外に楽しめたかな」

「ギルドと言えば、異世界成分満載だからね。
 それじゃ、ちゃちゃっと登録しようか! 」

 それから真琴の後に続き広い建物内を進む。
 そして奥に見える二つあるカウンターの空いてるほう、対面に座っている受付嬢さんの前まで進む。
 すると黒髪ロングでメイド服を着た女の子が笑顔を見せてくれた。

「どういったご用件でしょうか? 」

 真琴が一歩前に出る。

「冒険者になりたいんだけど勝手がわからないんだ。だから色々と説明してくれると助かるな」

「冒険者登録ですね、かしこまりました。
 登録はお二方でよろしかったですか? 」

「うん、二人でよろしく」

 受付嬢さんは二枚の紙と二本のペンを目の前に置くと、必要事項ですのでご記入して下さいと言った。
 そこで名前や年齢を書いていると、出身地という項目があり手が止まってしまう。
 これってなんて書けばいいんだ?

「ボクらさ、生まれた時から旅をしてて故郷なんてモノを知らないんだけど、どう書いたらいいのかな? 」

 ナイス真琴!

「でしたら出身地はこの街、イドで大丈夫ですよ」

 うーん。
 冒険者の登録って、結構適当なとこがあるんだな。
 そこで受付嬢さんが、ハッとした表情に変わる。

「あの、登録には事務手数料とカード発行代として3,000ルガ、お客様はお二人なので6000ルガ必要になりますが、よろしかったでしょうか? 」

 申し訳なさそうにおずおずと聞いてくるのに対し、大丈夫だと伝えると、嬉しそうにありがとうございますと頭を下げてくる。
 その際、この受付嬢さんの頭が前に出される事によって、彼女の頭に二つ、獣の耳のようなモノが髪に紛れるようにして前に倒れている事に気が付く。

 これってもしかして、獣人ってやつなのでは!
 チラチラと見ていると、その耳がわずかにヒョコヒョコと動いているのが確認できた。

 真琴からいるかもと聞いてたけど、この人本物だ!
 そして見た感じ、黒猫さんっぽい。

 しかし適当だと感じた冒険者登録なんだけど、もしかしたらこの受付嬢さんが少し大雑把なだけで、本当はちゃんとしたモノなのかもしれない。

 そこでお金を支払った俺たちは、改めて身長やらの項目を順に埋めていっていると、一番下のソウルリストと言う項目で目が止まる。

 やっぱりあった、これの記入欄。

 なんかこれを自身で書くのって、己でその事を認めたような感じで、かなりの抵抗を感じるんですけど。

 ペンを止め逡巡していると、受付嬢さんが身を乗り出してくる。

「全部書き込まれましたか?
 あっそこは、自身では最新のリストが確認出来ないため、クエストの受注時と達成時に私達が確認をして書き換える事になっているんですよ」

 そうして彼女は俺に対して目を細める。

「ふほへぇっ? 」

 変な声が漏れた。
 そしてもう一度目を細める受付嬢さん。

 すると彼女の顔が一気に赤く染まり、頭頂部の耳が思いっきり背伸びをしたかのように上へと向けピンと立った。
 そして挙動不審になった彼女は、視線を彷徨わせ始め真琴のところで止めると、今度は視線を俺と真琴の間を何度も行き来させ、あわわわわっと声を漏らしながら用紙にペンを走らせ、超絶倫と書ききった。
 続いて真琴の欄にも記入をすました彼女は、俯いたまま視線をこちらに向けずに話し始める。

「こ、これで手続きは完了しました!
 今からカード発行の作業に入ります!
 直ぐに出来上がりますので、お呼びするまでロビーでお待ちください! 」

 彼女はまくし立てるように早口で言ってのけると奥へと消えていく。

 うーん、冒険者やギルドについて色々と聞きたい事があったんだけど、これでは無理そうである。
 仕方がないので、真琴の手を引き一度カウンターから離れる事に。

 でも今のやり取りでわかった事がある。
 二つ名、ソウルリストはなにかしらの条件が揃えば変わると言う事。

 はっきり言って、これは希望である!
 しかしどんな条件があるんだろうか?

 そうだ、俺に比べたら真琴は異世界に詳しいし、なにかヒントを知ってたりするかも!

「真琴はどう思う? 」

「えっ、いやっ、ボクはいいと思うよ! 」

「いいって、なにが? 」

「あっ、そこのテーブルが空いてる。そこに座ろう」

 そう言うと真琴に手を引かれテーブルにつく。
 すると今度は、真琴まで俯いて黙り込んでしまった。

 どうしたんだろう?
 体調でも悪いのだろうか?

「お兄さん達、さっき冒険者の登録してたですよね? 」

 その時突然声をかけられた。
 声がした方へ振り返れば、栗色の髪を後ろで一つ結びにした、小学校高学年くらいの可愛らしい女の子が立っていた。
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