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第3章
第7話、街をうろうろ
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ヴィクトリアさんの部屋を退室したのち、真琴がいる部屋へと向かう。
スライムの木から取れた液体、スライムの実を採取した俺たちは、その日の内に売り捌くためオークション会場に持ち込む予定になっている。
またオークション開催まで時間があるそうなので、それまでは俺とアズとクロさんの三人で街へ必需品の買い出しをする事に。
もし仮にクロさんにヴィクトリアさんの事を聞かれたら、その時は普通にぬりぬりしていたと言おう。
うん、嘘はついていない。
疲労困憊の真琴がいる部屋に戻ると、テーブルをベットに寄せたり一階に設置されている井戸から水を汲んできたりする。
そうして早速俺は荷物の整理に取り掛かる。
「真琴はリュックの他に、なにかいるものある? ……真琴? 」
「あぁ、うん、……今は大丈夫かな」
「そか、また一緒に買い物いこうね。じゃ、いってくる! 」
「いってらっしゃい」
そうして俺は部屋を出ると、足早に階段を下り街へと出るのであった。
待ち合わせ場所にしている時計広場に向かう途中、街中でも目立つメイド服姿の人を探しながらに進んでいく。
しかし広場に着いたけど、ここまで二人の姿は見当たらなかった。
でもそのまま一人待つ気になれなかった俺は、少しの間だけフラフラする事を選び街を歩き出す。
そして程なくして、お店の前に置かれた木製のベンチに腰をかける、メイド服姿のクロさんと黒を基調としたゴスロリドレスを着ているためこちらも目立っているアズの姿を見つけた。
クロさんは何やら隣に置いたいつもの特大リュックから何かを取り出し、それとアズの身体を交互にみているようだ。
そこで俺に気づいたクロさんが、それをリュックの中へと片付ける。
「ほら、もうきたじゃないの」
「お嬢様、これだけでも十分変わりますので大丈夫です」
「あの、どうかしたのですか? 」
「いえ、大したことでは!
それより迎えに来てくれたのですか? 」
「その、そんな大層なものではなくて、少しだけ歩いて見つかればいいかなーと思っただけで」
「ふふっ、そうなんですね」
クロさんは満面の笑み。
ヴィクトリアさんの事を特段気にしていない事から、もしかしたら俺の考えすぎだったのかもしれない。
それから俺たちはクロさんの先導の元、様々なお店を見て回った。
リュックも最初のお店では即決せず、値段や性能を他のお店のリュックと比べるためにも何件も見て回った。
しかし時間はあっという間に過ぎ、何も買わないうちにオークション会場へ向かう事に。
大通りから一本入った建物と建物の間の細い道を縫うようにして進む。
まだ陽が傾くには少し早い時間帯ではあるが、狭い路地はすでに薄暗い。
そして程なく進むと最小限の明かりだけを灯した、ゴチャゴチャと乱雑に小物が置かれた雑貨屋のようなお店の前へと来た。
ここはかなり狭いですけど?
「ここがオークション会場なんですか? 」
「はい、中は広いですよ」
そしてクロさんはそのお店の隣に隣接する石段を降りていく。
って、そっちですか!?
一人寂しく脳内ツッコミを入れていると遅れてしまい、クロさんたちの後に続き階段を下りていく。
階段が終わると通路いっぱいの扉が道を塞いでいた。
そしてその扉を開くと——
中は結構な広さのフロアであり、多くの人で賑わっていた。
しかし俺が想像するような豪奢なオークション会場とはイメージがかけ離れすぎていた。
人々の服装はタキシードのような正装ではなく、まんま街で散々すれ違った街に暮らす人々や冒険者たち。
部屋の奥にはステージがありその手前に木製の椅子が並んではいるものの、その一帯には誰も人がいない。
またそこ以外には木製の長テーブルが多く並び、鉢に植えられた様々な植物がテーブル上に置かれていて、そっちの方がかなりの人で賑わっていた。
庶民的なイメージであり、植物の即売会のような感じでもある。
ちなみに並ぶ植物には最初から値札がついている。
「ユウトさん、私たちは例の液体を持ち込みますので、手続きが終わるまでこちらの方で待って頂いててもよろしいですか? 」
「わかりました」
そうしてアズとクロさんはスライムの実を売り込むべく、会場の隅にある通路から裏方へと消えて行った。
そして俺は一人、ガヤガヤと賑やかな会場をぶらつく事になったのだけど、中々に楽しんでいたりもする。
並ぶ鉢植え植物はよくよく見ればどれも見たことがない形状で、小さく可愛らしいモノも多くある。
また巨大な根っこのモノもあれば、売り子の人曰くハエなどの虫を蔦のような触手を使い捕食する植物なども並んでいた。
あっ、これなんか葉っぱが透けている!
七つある葉っぱの一枚が透明で、それがアクセントとなり気品を漂わせる多肉植物が、他と同じようにテーブル上に置かれていた。
綺麗だなー。
そして値札を確認すると7万ルガと明記されていた。
ただの鉢植えがこの値段である。
「……高すぎ」
「透明な植物は、昔から人気ですからね」
思わず口に出てしまった声に返答をしてくれたのはクロさんだ。
アズはと言うと、クロさんの服を掴んだままキョロキョロしながらあたりを見回している。
と言うかアズ、お姉さんとの買い物で迷子にならないようにしている妹みたいですよ。
スライムの木から取れた液体、スライムの実を採取した俺たちは、その日の内に売り捌くためオークション会場に持ち込む予定になっている。
またオークション開催まで時間があるそうなので、それまでは俺とアズとクロさんの三人で街へ必需品の買い出しをする事に。
もし仮にクロさんにヴィクトリアさんの事を聞かれたら、その時は普通にぬりぬりしていたと言おう。
うん、嘘はついていない。
疲労困憊の真琴がいる部屋に戻ると、テーブルをベットに寄せたり一階に設置されている井戸から水を汲んできたりする。
そうして早速俺は荷物の整理に取り掛かる。
「真琴はリュックの他に、なにかいるものある? ……真琴? 」
「あぁ、うん、……今は大丈夫かな」
「そか、また一緒に買い物いこうね。じゃ、いってくる! 」
「いってらっしゃい」
そうして俺は部屋を出ると、足早に階段を下り街へと出るのであった。
待ち合わせ場所にしている時計広場に向かう途中、街中でも目立つメイド服姿の人を探しながらに進んでいく。
しかし広場に着いたけど、ここまで二人の姿は見当たらなかった。
でもそのまま一人待つ気になれなかった俺は、少しの間だけフラフラする事を選び街を歩き出す。
そして程なくして、お店の前に置かれた木製のベンチに腰をかける、メイド服姿のクロさんと黒を基調としたゴスロリドレスを着ているためこちらも目立っているアズの姿を見つけた。
クロさんは何やら隣に置いたいつもの特大リュックから何かを取り出し、それとアズの身体を交互にみているようだ。
そこで俺に気づいたクロさんが、それをリュックの中へと片付ける。
「ほら、もうきたじゃないの」
「お嬢様、これだけでも十分変わりますので大丈夫です」
「あの、どうかしたのですか? 」
「いえ、大したことでは!
それより迎えに来てくれたのですか? 」
「その、そんな大層なものではなくて、少しだけ歩いて見つかればいいかなーと思っただけで」
「ふふっ、そうなんですね」
クロさんは満面の笑み。
ヴィクトリアさんの事を特段気にしていない事から、もしかしたら俺の考えすぎだったのかもしれない。
それから俺たちはクロさんの先導の元、様々なお店を見て回った。
リュックも最初のお店では即決せず、値段や性能を他のお店のリュックと比べるためにも何件も見て回った。
しかし時間はあっという間に過ぎ、何も買わないうちにオークション会場へ向かう事に。
大通りから一本入った建物と建物の間の細い道を縫うようにして進む。
まだ陽が傾くには少し早い時間帯ではあるが、狭い路地はすでに薄暗い。
そして程なく進むと最小限の明かりだけを灯した、ゴチャゴチャと乱雑に小物が置かれた雑貨屋のようなお店の前へと来た。
ここはかなり狭いですけど?
「ここがオークション会場なんですか? 」
「はい、中は広いですよ」
そしてクロさんはそのお店の隣に隣接する石段を降りていく。
って、そっちですか!?
一人寂しく脳内ツッコミを入れていると遅れてしまい、クロさんたちの後に続き階段を下りていく。
階段が終わると通路いっぱいの扉が道を塞いでいた。
そしてその扉を開くと——
中は結構な広さのフロアであり、多くの人で賑わっていた。
しかし俺が想像するような豪奢なオークション会場とはイメージがかけ離れすぎていた。
人々の服装はタキシードのような正装ではなく、まんま街で散々すれ違った街に暮らす人々や冒険者たち。
部屋の奥にはステージがありその手前に木製の椅子が並んではいるものの、その一帯には誰も人がいない。
またそこ以外には木製の長テーブルが多く並び、鉢に植えられた様々な植物がテーブル上に置かれていて、そっちの方がかなりの人で賑わっていた。
庶民的なイメージであり、植物の即売会のような感じでもある。
ちなみに並ぶ植物には最初から値札がついている。
「ユウトさん、私たちは例の液体を持ち込みますので、手続きが終わるまでこちらの方で待って頂いててもよろしいですか? 」
「わかりました」
そうしてアズとクロさんはスライムの実を売り込むべく、会場の隅にある通路から裏方へと消えて行った。
そして俺は一人、ガヤガヤと賑やかな会場をぶらつく事になったのだけど、中々に楽しんでいたりもする。
並ぶ鉢植え植物はよくよく見ればどれも見たことがない形状で、小さく可愛らしいモノも多くある。
また巨大な根っこのモノもあれば、売り子の人曰くハエなどの虫を蔦のような触手を使い捕食する植物なども並んでいた。
あっ、これなんか葉っぱが透けている!
七つある葉っぱの一枚が透明で、それがアクセントとなり気品を漂わせる多肉植物が、他と同じようにテーブル上に置かれていた。
綺麗だなー。
そして値札を確認すると7万ルガと明記されていた。
ただの鉢植えがこの値段である。
「……高すぎ」
「透明な植物は、昔から人気ですからね」
思わず口に出てしまった声に返答をしてくれたのはクロさんだ。
アズはと言うと、クロさんの服を掴んだままキョロキョロしながらあたりを見回している。
と言うかアズ、お姉さんとの買い物で迷子にならないようにしている妹みたいですよ。
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