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第3章
第26話、緋の世界
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アレが出ると言うことは二面樹が激怒している事を意味するそうだけど、逆にあの部分が唯一の弱点と噂される部位でもある。
とそこで、その巨大な一つ目がギョロリと俺たちの方へ向いた。
くっ、これは?
……威圧感。
ただ見られているだけだと言うのに、ここから逃げ出したくなる。
とそこで気がつく。
スライムの木もどきは、二面樹にとって外敵である俺たちを照らし出すために現れたのではと。
冷や汗が流れる。
つまりこれから闇雲ではなく、正確で強烈なツタの攻撃が俺たちを襲ってくるのでは!?
あれが振り落とされてきても、俺の反射神経では避ける自信がない。
「うぐっ」
突然上がった誰かの呻き声に心臓が飛び跳ねる。
——誰かが攻撃された!?
そこで前方にいたヴィクトリアさんが片膝をついたのが見えた。
なんだ、あれ!?
その光景に思わずゾッとする。
ヴィクトリアさんの背中から生えた真っ赤なツタが、ニョキニョキ宙を彷徨うようにして動いていたのだ。
攻撃を受けた!?
理解不能な攻撃を目の当たりにして、背筋に悪寒が走る。
とっ、とにかく回復をしなければ!
でも俺の精度じゃあの距離まで白濁球を飛ばそうとしても、途中で形が崩れてしまう可能性が高すぎる。
でもアズを置いてはいけないし——
……なら、アズをおぶってでも連れて行くしかない!
どのみち俺たちもあのツタの射程に入っているはず。それならどこにいても同じだし、最悪あのツタが落ちて来たら、俺が盾になり続けてアズだけでも守る!
幸い俺は肉体が破壊されても、幽体離脱して回復を使えるはず!
そう、文字通り肉の壁になってやる!
ヴィクトリアさん、待ってて下さい!
そして走りながらに考える。
しかしどうなんだろう?
背中から突然ツタが生えてくるなんて事はあり得るのだろうか?
いや、普通に考えたら、仮に何かに寄生されていたりとかで体内へ侵入を許していれば、腹痛などが必ずあるはず。
しかし今回はなんの前触れもなしに突然背中から異物が飛び出してきたように見えた。
つまり考えるなら、ツタが正面から突き刺さってきた、であるのだけど、ヴィクトリアさんの正面にはツタはない。
とそこでヴィクトリアさんの次の行動により、全容が明らかになってくる。
ヴィクトリアさんがお腹の前、虚空を握りこむとその手が炎に包まれる。
この炎、ヴィクトリアさんの能力?
そしてその炎が、まるでヴィクトリアさんのお腹からボスへ向けてツタがあるかのように、一直線に燃え移っていく。
そこにはまるで、見えないツタがあるかのようにして。
……ん? 見えない?
と言うことは透明?
そう言えばオークション会場に、透明な葉を持つ植物があったけど!
つまりそこに、透明なツタがあるのでは!
『ブシュッ! 』
ヴィクトリアさんの握り込みにより、ツタが寸断された。
そして残りの背中から飛び出しているツタを乱暴に引き抜く。
するとビチビチ動くツタが、握られた部分から一瞬で全て真っ黒焦げになり、風に吹かれ消えていった。
代わって残された炎が燃え移っている透明なツタのほうは、海を泳ぐイカの身体のように時折虹色に発光させながら猛スピードで引っ込んでいく。
あれ!?
お腹に向け白濁球を飛ばそうと近づいていたわけなんだけど、スタリと立ち上がったヴィクトリアさんのお腹には、傷口が見当たらない。
いつの間にか塞がっている?
「くくっ、——誰に対して攻撃をしてしまったのかを、その身に刻んで教えてやろう」
えっ?
ヴィクトリアさんのその言葉使いに違和感を覚える。
そして視線の先のヴィクトリアさんは、コツコツとまるでそこに透明な階段があるかのようにして、一歩一歩踏みしめ前方へ登っていく。
そこで眼前にまるでマントルの下を流れるマグマのように、ドロリとした模様で渦巻く赤に染まる球体が一つ現れた。
そこで上空の闇の空にうねうね蠢く全てのツタが動きをみせる。
その一本一本が次々と、凄まじい勢いでヴィクトリアさんに向け振り落とされ始めたのだ。
風切り音をたて、あっという間に距離を縮めるツタ。
しかしヴィクトリアさんの近くを漂う火球が、盾のようにしてヴィクトリアさんの周りを高速で移動。
そして火球に防がれる形で接触した数十本もの全てのツタは、そのどれもがずっと前からそこに無かったかのようにして、火球に触れた部位が一瞬で消失。
さらに残された部分の先端には、そのどれもが等しく一つの炎が灯っていく。
「——ヴィクトリア風に言うなら、緋の世界か? 」
ヴィクトリアさんは二面樹による今の攻撃に対し、何も意にかえさなかったように独りごちた。
ゆっくりとだけど刻々と炎に包まれる範囲を広げていく燃える全てのツタは痛みを感じているのか、ヴィクトリアさんから距離を取りながらうねうねと大きく上下に動いている。
その闇夜に炎を灯す光景は、まるで提灯アンコウの誘引突起のように思わず見入ってしまうものがあった。
そこで燃え盛るツタはそれまでと判断されたのか、新たに現れた数々のツタの振り落としにより、その燃える先端を寸断されていく。
そうして炎に包まれていたツタの先端は、ボトボトと地面へ落下をしていった。
とそこで、その巨大な一つ目がギョロリと俺たちの方へ向いた。
くっ、これは?
……威圧感。
ただ見られているだけだと言うのに、ここから逃げ出したくなる。
とそこで気がつく。
スライムの木もどきは、二面樹にとって外敵である俺たちを照らし出すために現れたのではと。
冷や汗が流れる。
つまりこれから闇雲ではなく、正確で強烈なツタの攻撃が俺たちを襲ってくるのでは!?
あれが振り落とされてきても、俺の反射神経では避ける自信がない。
「うぐっ」
突然上がった誰かの呻き声に心臓が飛び跳ねる。
——誰かが攻撃された!?
そこで前方にいたヴィクトリアさんが片膝をついたのが見えた。
なんだ、あれ!?
その光景に思わずゾッとする。
ヴィクトリアさんの背中から生えた真っ赤なツタが、ニョキニョキ宙を彷徨うようにして動いていたのだ。
攻撃を受けた!?
理解不能な攻撃を目の当たりにして、背筋に悪寒が走る。
とっ、とにかく回復をしなければ!
でも俺の精度じゃあの距離まで白濁球を飛ばそうとしても、途中で形が崩れてしまう可能性が高すぎる。
でもアズを置いてはいけないし——
……なら、アズをおぶってでも連れて行くしかない!
どのみち俺たちもあのツタの射程に入っているはず。それならどこにいても同じだし、最悪あのツタが落ちて来たら、俺が盾になり続けてアズだけでも守る!
幸い俺は肉体が破壊されても、幽体離脱して回復を使えるはず!
そう、文字通り肉の壁になってやる!
ヴィクトリアさん、待ってて下さい!
そして走りながらに考える。
しかしどうなんだろう?
背中から突然ツタが生えてくるなんて事はあり得るのだろうか?
いや、普通に考えたら、仮に何かに寄生されていたりとかで体内へ侵入を許していれば、腹痛などが必ずあるはず。
しかし今回はなんの前触れもなしに突然背中から異物が飛び出してきたように見えた。
つまり考えるなら、ツタが正面から突き刺さってきた、であるのだけど、ヴィクトリアさんの正面にはツタはない。
とそこでヴィクトリアさんの次の行動により、全容が明らかになってくる。
ヴィクトリアさんがお腹の前、虚空を握りこむとその手が炎に包まれる。
この炎、ヴィクトリアさんの能力?
そしてその炎が、まるでヴィクトリアさんのお腹からボスへ向けてツタがあるかのように、一直線に燃え移っていく。
そこにはまるで、見えないツタがあるかのようにして。
……ん? 見えない?
と言うことは透明?
そう言えばオークション会場に、透明な葉を持つ植物があったけど!
つまりそこに、透明なツタがあるのでは!
『ブシュッ! 』
ヴィクトリアさんの握り込みにより、ツタが寸断された。
そして残りの背中から飛び出しているツタを乱暴に引き抜く。
するとビチビチ動くツタが、握られた部分から一瞬で全て真っ黒焦げになり、風に吹かれ消えていった。
代わって残された炎が燃え移っている透明なツタのほうは、海を泳ぐイカの身体のように時折虹色に発光させながら猛スピードで引っ込んでいく。
あれ!?
お腹に向け白濁球を飛ばそうと近づいていたわけなんだけど、スタリと立ち上がったヴィクトリアさんのお腹には、傷口が見当たらない。
いつの間にか塞がっている?
「くくっ、——誰に対して攻撃をしてしまったのかを、その身に刻んで教えてやろう」
えっ?
ヴィクトリアさんのその言葉使いに違和感を覚える。
そして視線の先のヴィクトリアさんは、コツコツとまるでそこに透明な階段があるかのようにして、一歩一歩踏みしめ前方へ登っていく。
そこで眼前にまるでマントルの下を流れるマグマのように、ドロリとした模様で渦巻く赤に染まる球体が一つ現れた。
そこで上空の闇の空にうねうね蠢く全てのツタが動きをみせる。
その一本一本が次々と、凄まじい勢いでヴィクトリアさんに向け振り落とされ始めたのだ。
風切り音をたて、あっという間に距離を縮めるツタ。
しかしヴィクトリアさんの近くを漂う火球が、盾のようにしてヴィクトリアさんの周りを高速で移動。
そして火球に防がれる形で接触した数十本もの全てのツタは、そのどれもがずっと前からそこに無かったかのようにして、火球に触れた部位が一瞬で消失。
さらに残された部分の先端には、そのどれもが等しく一つの炎が灯っていく。
「——ヴィクトリア風に言うなら、緋の世界か? 」
ヴィクトリアさんは二面樹による今の攻撃に対し、何も意にかえさなかったように独りごちた。
ゆっくりとだけど刻々と炎に包まれる範囲を広げていく燃える全てのツタは痛みを感じているのか、ヴィクトリアさんから距離を取りながらうねうねと大きく上下に動いている。
その闇夜に炎を灯す光景は、まるで提灯アンコウの誘引突起のように思わず見入ってしまうものがあった。
そこで燃え盛るツタはそれまでと判断されたのか、新たに現れた数々のツタの振り落としにより、その燃える先端を寸断されていく。
そうして炎に包まれていたツタの先端は、ボトボトと地面へ落下をしていった。
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