夜明けを待つ鳥

世夜美沢よよ子

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出会篇

再会

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再びその名前を見たとき、傅は画面を閉じるまでに少し時間がかかった。
通知は簡潔で、無駄がない。金額、時間、場所。
感情の入り込む余白がない文章だった。

それが、かえって胸に引っかかる。

――ただのだ。
――それ以上でも以下でもない。

何度もそう言い聞かせてきたはずなのに、
指先が、わずかに冷えているのを自覚する。
何故こんなにも彼のことを考えると胸がざわつくのか
理解できない傳だった。

当日。

約束の時間ぴったりに扉を開けると、
鷹宮幸雄はすでに部屋の中にいた。

初めて会ったときと同じように、
必要以上に周囲を見回さず、
椅子に腰を下ろして静かに待っている。

立ち上がらない。
近づいてもこない。

それが、傅にはありがたかった。

「……久しぶりですね」

自分の声が、思ったよりも事務的で、少し安心する。

「ああ」

それだけ。
会釈もしない代わりに、視線も深追いしない。

傅は準備を始める。
慣れた動作のはずなのに、どこかぎこちない。
服を脱ぐ音、布の擦れる気配が、やけに大きく感じられる。

鷹宮は、触れない。
触れようともしない。

その距離が、傅の中の計算を

――欲しくないわけじゃない。
――でも、欲しがられてもいない。

それが、どうしようもなく落ち着かない。

「今日は……」

仕事の言葉を選ぶ。
感情を削ぎ落とした、いつもの調子で。

「どうされます?」

鷹宮は少し考えてから、静かに言った。



命令でも、遠慮でもない。
ただ、委ねる言い方。

傅は、内心で小さく息を吐く。
優しさは、ここでは余計だ。

触れる。
触れられる。

身体が近づくと、鷹宮の呼吸がわずかに変わるのが分かる。
それでも、手は出てこない。

求めない代わりに、拒まない。
その中途半端さが、傅の神経を逆撫でする。

行為が終わったあと、
鷹宮はすぐには身支度をしなかった。

金は、きちんと置かれている。
端が揃えられ、雑音のない置き方。

「……また、呼んでもいいか」

傅は、一瞬だけ黙った。

それは客の台詞だ。
けれど、声の調子はどこか慎重で、
拒まれる可能性を織り込んでいる。

「……それは、として?」

確認するように言う。

「ああ。それでいい」

踏み込まない。
それ以上を、口にしない。

傅は視線を逸らし、
床に落ちた影を見つめながら答えた。

「……どうぞ」

その言葉が、許可なのか、逃げなのか、
自分でも分からないまま。

鷹宮は立ち上がり、
扉の前で一度だけ足を止めた。

振り返るが、何も言わない。
言わないことを選んだ、という顔だった。

扉が閉まる音がして、
ようやく傅は大きく息を吐いた。

金を手に取る。
重さを確かめる。

――これでいい。

金の客。
それ以上でも以下でもない。

そうでなければ、困る。

それでも、胸の奥に残ったざわめきは消えない。

金がある。
生きている証は、確かにここにある。

なのに、
それだけでは測れない何かが、
確実に部屋に残っていた。

傅は財布を閉じ、
夜の名残のような沈黙の中で、
一人きりで座り込んだ
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