心からの口付けで解ける呪いって、なんだ、この野郎!

砂山一座

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【おまけ】誕生日を祝わないと死ぬ呪いって、なんだ、この野郎!

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「俺と誕生日を祝わないと俺が死ぬ」

「また来たのか、いい加減にしろ!」

ファウストは金の棘の魔女と呼ばれるようになった私の住処に、しつこくやってくる。

最初は家に入れなければ死ぬで、
本音を言わなければ死ぬで、
卑猥なキスをしないと死ぬだったり、
ベッドに入れてくれないと死ぬだったり、
死ぬ死ぬはエスカレートするばかり。


「レアーナ様ごめんなさい」

一緒にやってきた小さな魔王のレニウムは、もう中くらいの魔王になった。

「君の呪いの精度はわかったから、もうファウストを甘やかさないで」

ファウストは着いて早々、私に抱きついて離れない。

「レアーナ、久しぶり」

すっかり力をコントロールできるようになって、文字通り抱き潰されることもしばらく経験していない。

「この」ファウストは結局私から離れない。
いくら追い払っても何度も私に戻ってくる。

「私だって鬼じゃないわ。呪いなんてなくても誕生日くらい祝ってやらないでもないわよ」

実際、誕生日の準備はできていた。
私は魔法で壁を飾り、テーブルカバーを暖色のものに取り換える。鍋の中の時間を止めてアツアツのシチューとパイも準備万端だ。

「知ってた。俺の好きなクッキーの匂いがする」
「別にファウストに作ってたわけじゃないわ」

つんけんと返しても最近は効果がないようで、ファウストは私のくせの強い金髪に鼻を突っ込んで……は? 嗅いでる? 

「ちょ、やめて……やめてってば!」

私は耳を熱くして絶叫する。

「昔はクッキーをつまむと粉々になってしまうから、茶会では手を出さなかった」

崩してしまったクッキーをスプーンで掬って切なそうな顔をしていたファウストを思い出して、つい笑ってしまう。あの時も仕方なく私がファウストの口にクッキーを押し込んでやったのだったっけ。

「ふふふ、こんなに甘党なのにね」

私はべったりと離れようとしないファウストを引きずって台所に行くと、みちみちとクッキーが詰まったガラス瓶のふたを開け、一つとりだしてファウストの口に入れてやる。

「ファウスト様、もう一生離れられない呪いとかにしてくれません? かけ直すの面倒で。レアーナ様だっていちいち死ぬ死ぬ言われて気の毒です」

レニウムがため息をつきながらファウストに恐ろしいことを言っている。

「レニウム、これでいいんだ。レアーナは俺を愛するのに言い訳が必要なんだから。それに、一生離れないのは呪いじゃなくても勝手にそうするから問題ない」
「はいはい、僕は外に花でも摘みに行ってますから、ごゆっくり。レアーナ様、ご愁傷さまで」

レニウムが心底哀れんだ顔をして外に出て行った。思春期の少年にああいう顔をされると堪える。

「レアーナにプレゼントがある」
「ファウストの誕生日に? 要らないわよ」

ファウストは私を抱きかかえてソファに腰を下ろすと、私の左手をそっと握る。

「やだ……はなして……」

ファウストが取り出したものを見て、はっとして慌てて手を引き抜こうとしても、全く自由にならない。

「……本当にダメ、やめて……許して……」

「許さない」

ファウストは嫌がる私に顔を寄せて、ついばむように口付ける。
優しいキスは勢いを増し、私の思考を奪う。


キスから解放されて気が付けば、私の薬指には明らかに呪いの込められた赤い石の指輪が嵌っている。

「あ、ああああ!!!! しまった!!」

慌てて引き抜こうとしても皮膚と一体化したようになってしまって、動きもしない。

「と、とれない……」
「まあ、一生外せない呪いの指輪くらいなら可愛いものだろ? 金の棘の魔女は既婚だって噂が広まればいい」
「レニウム! あんたなんてもの作ったのよ! 帰ってらっしゃい!」

さっきの「ご愁傷様」の意味が分かって、外に行ったレニウムを呼ぶが、気配がない。

「それで、レアーナは俺に何をくれるんだ? クッキーだけでは足りないな」

ソファに押し倒されてファウストを見上げると、満足そうに笑みを浮かべている。

誕生日を祝わないとファウストが死ぬ。
死ぬというなら仕方ない……。

「――何が欲しいのよ」

私はあきらめて目を閉じた。


❤end❤

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