運命なんていらない

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俺が受ける第一志望の大学は中の上。

第一志望でも、蒼の滑り止めにすら劣るレベルだ。
ずっと蒼と一緒だったけど、さすがに大学は別だ……受けようとする蒼を怒ってやめさせたんだけど。

今日の受験は初めてのヒートがくるかもしれないと止められたが、内緒で受けに来た。
朝、ちゃんと抑制剤も飲んだ。

大丈夫。

受験大学まで、バスで向かう。
受験生でごった返す中、ようやく大学の停留所に着く。

大丈夫。

特にαのフェロモンも感じない。
自分の変化も感じない。

バスから降り、多くの受験生と共に会場の大学へと向かう。

受験票に書かれてある番号の教室を大学内の配置図で確認しながら歩いていると、奥の建物からピリピリした受験生とは違った雰囲気の集団が歩いてきていた。

この大学の学生かな?サークルとか??
見た目が派手そうで苦手だな……大学生ならあんなもんか……ぼーっとそんなことを考えながら教室を目指していた。

……ん?

ピリッとした。
最初の印象は静電気のような感じの違和感。

そこから一気に体温が上がり、立っていられずその場にへたりこむ。

……ヒート!?
こんなに急に!!

震える手で鞄を探る。
早く、薬を……他の受験生に迷惑がかかるっ…… 。

事前に準備していた抑制剤を飲む。

早く、早く治まれっ……自分の身体を抱き込むように丸め、目をぎゅっと瞑る。
必死に内の情動を押し込んだ。

治まる気配もない。
周囲の受験生のざわつく音も聞こえる。

緊急用の注射タイプの抑制剤を打つしかないと顔を上げた時、前にいた大学生の集団が足を止めこちらを見ていた。
その中に、俺を凝視している一人の男がいた。

運命の番だ……!

なぜだか分からないが、目と目が合った瞬間に、そう確証した。
名前も知らない、初めて会った男に強烈に欲情した。
身体中の細胞の一つ一つが歓喜するように騒ぐ。

男が一歩ずつ、近づいてくる。

早く、早く来て……俺の運命!!

顔も真っ赤で、発情し勃起もしていた。
とにかく目の前の運命の番に抱いて欲しくて、そのフェロモンに包まれたくて仕方なかった。

身体だけじゃなく、心も内震えていた。

運命の番に会えるなんて、都市伝説レベルの話だと聞いていた。
ネット上の書き込みでは会えたという人はいたが、周囲には一人もいなかった。

俺は、その運命の番と出会うことに強烈に憧れていた。

何もかも普通の俺。
多くのαが望むΩらしさもなく、たとえヒートがきてΩフェロモンが出ても、俺を抱きたいというαなんているのだろうか?

誰にも望まれない。
一生、ツラいヒートを抱えながら生きていく。

でも、運命の番に出会ったら……

こんな俺でも必要としてくれるんじゃあ……?

……愛してくれるんじゃないか?

家族にも蒼にも誰にも言えなかったけど、俺は運命の番との出会いを支えに生きてきたんだ。

出会えた!こんなに早く!!

涙が止まらない。

「運命の番……」

男の声に何度も頷く。

会えたんだよ、俺たち!
俺の運命の番……!!


「最悪……」

「え」

男の背後からゲラゲラ笑う声が聞こえる。

「落ちこぼれαの運命の番も落ちこぼれΩだってよー」
「マジ、ウケるー」
「この前みんなでヤッたΩの方がまだよくね?」
「コイツ、こんなのにギンギンに勃ってるわ~すげーな」

世界から音が消える。
目の前が真っ暗だ。

それでも運命の番の声だけは嬉々として耳は拾う。

「まぁ、運命の番とのセックスってマジで飛ぶくらいイイらしいからな。ヒートになってるし、とりあえずめちゃめちゃにしたくてたまんねぇわ」

強引に腕を取られ、引きずるように奥の建物に連れていかれる。

何も考えたくなくて、抵抗もしない。
現実が受け入れられない。

乱暴に狭い部屋に投げ入れられる。

「やばいわ、チンコがっちがち。こんなのでも、早くぶちこみたくてたまんねぇわ」

男は早々に下半身を露にした。
勃起したペニスからはポタポタと先走りが落ちる。
その赤黒いペニスを目にした時に、早く!と身体が叫ぶ。

この雄に早くぐちゃぐちゃにされたい。
精液が、欲しい。中にいっぱい出して欲しい!

体温はますます上がり、期待で後ろの穴もびしゃびしゃに濡れている。


……いやだ。
……いやだ!

欠片ほどの理性をふりしぼり、必死で運命の番から逃げようと後退る。

俺はこんな運命が欲しかったんじゃない!

「逃げてんじゃねぇよ。βくずれのΩ」

俺はこんな運命が欲しかったんじゃない!!

壁際まで後退り、もう逃げ場はない。
赤黒いペニスを上下に擦りながら、男は下卑た顔で笑った。

「αはいくらでもΩを番にできるんだ。運命の相手がお情けで噛んでやるよ。あ、後で後ろの奴らにもヤラせるから、ガキが出来てもしらねーよ?」

「いや……だっ」

「うるせぇよ!」

頬を平手打ちされる。口の中に血の味が広がる。

「声出すな!萎える!!」

人生で初めて受けた暴力に身体がすくむ。

「お前なんか穴だけでいいんだよ。黙ってフェロモン出して穴だけ濡らしとけよ」

動けない俺のベルトを荒々しく外し、ズボンを引き抜く。

「いや……いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだ」

壊れたおもちゃのように、その言葉しか出ない。

「声を出すなって言っただろうが!気持ち悪ぃ」

また頬に平手が飛んだ。
その衝撃でブラックアウトする。



俺が次に目を覚ましたのは、白い病室だった。
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