運命なんていらない

文字の大きさ
9 / 46

しおりを挟む
俺の見た目は普通だし、成績も普通、運動神経も普通。

小中と普通の王道を走ってきた。
もちろん、目立つタイプではなかったが、今みたいに暗くはなく、友達もそれなりにいた。

その中で、蒼は一番の友達だった。
蒼の中で、俺は一番の友達だった。
……はずだ。

そんな俺の人生がガラッと変わったのはあのバース性の診断だ。

それまで他人事のように捉えていた、ヒートや抑制剤といった知識が一気に現実となった。

……でも、本当の意味で人生が変わった瞬間はあの時じゃない。



ヒートが、初めて来た時だ……。



中学でΩだと分かって、俺も家族も大変だった。

家族で俺一人がΩ。

親父はその通知を見て、頭を抱えた。
母はΩに産んでごめんと泣き出し、姉が慰めていた。
兄はスマホでいろいろ検索をし、有名な総合病院で再検査をうけてみたらどうかと言った。

両親に連れられ、その総合病院で再検査を受ける。

結果、Ω。

……だろうな。
その時にはなんとなく自分はΩなんだろうなと諦めの気持ちが強かった。

主治医の先生から説明を受けた。
ヒートの注意、抑制剤、緊急避妊薬の説明……どんどん両親の顔が青ざめていく。

ホルモンを検査してみると、年齢的には珍しくまだ当分ヒートは来ないだろうと言われた。
でも、最初のヒートはキツく、予期せぬタイミングのために、注意が必要だと。

もう、目をそらすわけにはいかない。

家族も俺も。

でも、仲良し家族だった訳でもなかったウチは俺への対応が腫れ物に触るようだった。

ますます仕事で家を空ける両親。
兄も姉も、一人暮らしをしたいと出ていった。

いつも、俺は一人。


……いや、変わらず蒼だけは側にいた。
一番側にいてはいけないαなのに。


「カナ、ちゃんと抑制剤持った?緊急用の強めなのも持った?」
「持ったよ」

高校生になっても、俺のヒートは来なかった。
もっとランクが上の高校に進学できたはずの蒼も、なぜか同じ高校に入学して、登校も一緒だ。

家が近いからって言ってたけど、俺に気を遣ったんじゃないかと思う。

高校生になっても特に俺は変わらなかった。
少し内向的になり、あまり積極的に人と関わらなくなったくらい。

同じ中学の奴以外の高校の同級生は、たぶんβだと思っているだろう。

反対に蒼はめざましい変化があった。

身長や体格が他の男子生徒に比べて成長が早く、雰囲気も大人びていた。

元々性格は温和だったが、顔から幼さが消え、男としての余裕を感じた。

そして、圧倒的なαのオーラ。

そんな二人の関係はバース性が分かった後も特に変わらなかった。
幼馴染みというだけ。

だが、蒼は俺のヒートについては常に注意をしていた。
警戒していた。
……俺よりもずっと。

ヒートのきていない俺は、蒼のαのオーラは感じるが、フェロモンは特に感じない。
蒼も俺からΩのフェロモンは感じないらしい。

むしろ、一生このままでいい。

なのに、その時は訪れた。


「……奏、ちょっとフェロモン出てる」

「え?」

「……ヒートそろそろ来るんじゃない?」

「……っ」

高校三年の冬、明日に大学受験を控えたあの日、蒼は言った。

「気の、せい、じゃないのかよ」

「うん」

「ど、しよ……受験……」

「ヒートの申請すれば再受験できるはずだよ」

「いやだ!」

突然の現実に青ざめながらも、自分のことを、知らない誰かにまで迷惑をかける存在にしたくなかった。

俺は普通なんだから。

「奏……Ωであることは恥ずかしいことじゃないよ?大学受験もヒートの申請が認められてるんだから」

「……なぁ、今日くるとは限らないだろ?受験だけはしたい。普通に」

「……奏。僕は受験会場まで行けないから守ってあげられない。心配だよ……まだ少しだけど、Ωのフェロモン出てるんだよ?」

蒼が俺を優しく諭す。

でも、俺は、何も感じない。

蒼に分かった、と告げた翌日、俺は試験会場に向かった。
抑制剤さえあれば、もしヒートがきても大丈夫。



そこで俺は、運命と出会った。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

必然ラヴァーズ

須藤慎弥
BL
怪我をした双子の姉に代わり、生放送番組に出演する事になった、卑屈ネガティブな男子高校生・葉璃(ハル)。 ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから一目惚れされ、熱烈求愛を受け、戸惑いながらも少しずつ惹かれてゆくが……葉璃もまた、アイドルデビューをする事になり──!? まさにトップアイドルとの恋は、前途多難です。 聖南と葉璃を見守ってくれる優しくて温かなイケメン達もお楽しみください。 ※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線 ※そういうシーンにはタイトルに「※」 ※表紙について。 眠様(@nemu_chan1110)作です♡ いつもありがとうございます!

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ

MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 続編執筆中

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

処理中です...