運命なんていらない

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それから俺はイラストを描き続けた。

募集要項にあった期日まで残り少なく、かといって妥協もしたくない。

寝る時間を削り、食べることも忘れ出すとさすがに蒼に怒られた。

本当に俺のためにわざわざ大学から帰ってきそうで、さすがに少しセーブした。

何度も描き直し、描き直し、ようやく納得のいくイラストが完成した。
これから、また着色の作業に入る。

もう、自分がΩだということも忘れていたくらい、充実した毎日。

……没頭しすぎて身体の不調にも気づかなかった。

ちょっと熱っぽいかな?くらいの違和感と蒼の心配そうな眼差し。

……もしかして、ヒート……

この時間のない時に!?

抑制剤を飲み、部屋に籠れば問題はない。
でも、ヒートの一週間くらいの間はイラストに集中はできないだろう。

間に合わない……!
俺は絶望した。

もちろん、このイラストを送った所で採用されるほど甘い世界ではないと思っている。

でも、挑戦するチャンスすら奪われるのか……Ωである自分自身に……。

奥歯を食い縛る。

「カナ……」

「ヒート、来そうだ……もう間に合わない……やっと……見つけられた気がしたのにっ……」

蒼のαのフェロモンが馨る。

「あ、お……?」

「おいで、カナ……」

ふわりと抱き締められる。
まだヒートまで日はあると思っていたのに、αのフェロモンにあてられて急速に身体が高まる。

ペニスも勃起し、後孔から何か液体が太股へと垂れてきた。

「好きだよ……カナ……大好き……俺に初めて、ちょうだい……?」

優しい蒼の声。

ダメだ……俺なんかダメだ……運命の番にすら愛されなかったのに、蒼みたいなαに好きになってもらえるはずがない。

蒼は優しいから……俺のヒートに付き合ってくれようとしている。

αとヒート中にセックスをすると、精神的にも肉体的にも安定するらしい。
だから、早くヒートに付き合ってくれるαを探せと医者にも言われた。

αの風俗もあるらしく、それを利用してヒートを軽くするΩもいるらしい。

そうだ。それを利用しよう!

「蒼、いい……別のαに……」

「……本気で言ってる?絶対ダメだよ。それに、もうヒート始まっちゃってる」

耳を甘く噛まれる。

「大丈夫。ちゃんと僕も抑制剤飲んでるから 自制できる。項を噛んだりしないよ」

ダメだ。
ちゃんと断らないと。
これ以上、蒼に迷惑はかけられない。

……でも。

どうしても、あのイラストを完成させたい。
Ωの自分にこれ以上失望したくない。

それに……もう目の前のαが欲しくて仕方ない。

俺がちゃんと拒絶したら蒼は止めてくれるだろう。
だからこれは、俺の意思だ。

「ごめん……蒼……俺とセックスしてくれ……」

噛みつくように口付けされる。

フェロモンで朦朧としながら、あ、俺、キスも初めてだな、と冷静な自分が呟く。

初めてのキスもセックスも蒼。
贅沢だな。

激しく口腔内を貪られながら、そんなことを考えている自分に可笑しくなる。

「何が可笑しいの?」

少しイラついた口調で、俺の肩甲骨に噛みつく。

Ωフェロモンに蒼もあてられているのか、いつもと違った荒々しい蒼に体温が上がる。

「こんなΩが…蒼みたいなαに抱かれるって、幼馴染みってすげーなって思ってさ」

自嘲気味に呟いた俺に、蒼が瞳を獰猛に歪めた。

「Ωを抱くんじゃない。奏を抱くんだよ。……ちゃんと、分からせてやるから」
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