運命なんていらない

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誕生日当日。

「カナ~おはよ!誕生日おめでとう!!」

「おぅ」

起き抜けのイケメンは朝日と共に眩しい。

「まず、朝ご飯食べよう?いつもより、頑張ったから」

嫁か?
こんなデケェ嫁はいらねぇ。

テーブルには、旅館の朝ご飯いや、朝御膳が並んでいた……。

「おいおい、すごいな!?」

俺なら作るのに一日かかる。
……いや、そもそも作れない。

ご飯、焼き鮭、味噌汁で十分なのに、三種類の小鉢、だし巻き玉子、目玉焼き、茶碗蒸しの俺の好きな玉子づくし!

どれもこれもめちゃめちゃ旨くて箸が止まらない。

「この小鉢の茄子の揚げ浸し、やっば」

「出汁の効いた甘いの好きだもんね」

蒼も上機嫌でにこにこしている。

完食!!
こんなに朝から食べたの久しぶりだ。

朝から腹一杯で、むしろこのままダラダラ寝たい。

「カーナ、また寝ちゃいたいって思ってるでしょ?ダメだよ」

「えー」

ソファーにごろ寝しようとした俺を笑いながら起こし、ふざけて俺に抱きついてくる。

「やーめろ」

引き剥がしたが、クスクス笑いながら、また背後から覆い被さる。

「重いんだよ!」
「ごめんね~まだ伸びてるんだ~」
「嫌みか!」

ひとしきり、ふざけあう。

「……ねぇ、久しぶりに外、出よう?」

真面目な蒼の声音。
身体が思わず硬直する。

「僕がずっと側にいる。本当は、出たいって思ってたよね?」

別にこの部屋で俺の世界は成立する。
何も不便はない。

ただ、時々無性に外に出たくなる。

この世界があまりに俺に優しすぎて、現実じゃない気がするんだ。

目を覚ましたら、あの白い病室に今でもいるんじゃないかって。

ちゃんと、分かってるのに、怖くなる。

「蒼……俺……」

「突然ヒートになっても僕がいるよ。大丈夫。怖かったらずっと手を繋いどく?」

淡く微笑む。

「ばーか。……ありがとな。外、出てみるわ」

善は急げ!と準備する。
このままの勢いでいかないと、考えてたら一歩が出なくなる。

そういえば、部屋着しかないな?昔の服どこにしまったかな…と思っていると、蒼に誕生日プレゼントだと一式渡された。

キャップ、シャツ、シャツと同じ素材のパンツ、中のインナー、黒とグレーで統一されたシックだが、デザインが少しアシンメトリーになっていてカッコいい。
ブランドは分からないが、量販店に売っているやつじゃないことくらいは分かる。

「……おい。高いやつだろ、コレ」

「大丈夫だよ~モデル引き受けた時に、カナに似合うと思って気に入ったんだ。やっすーく譲ってもらったんだよ」

ジト目で見る。
すっとぼけ顔だ。

「んーーーーー、ありがと。カッコいい」

ちょっと金額的に納得できないものの、そこは気持ちを汲んだ。

蒼は幸せそうに笑った。

イケメンの笑顔は、起き抜けじゃなくても眩しい。

早速、着替える。
久しぶりにちゃんとした服に着替えた自分を鏡で見ると、まさしく馬子にも衣装!

「なかなか、俺、イケてるな?」

ニヤニヤしながら部屋の外に出ると、そこに雑誌から飛び出てきたイケメンモデルが似たような服を着て、満面の笑みで立っていた。

「似合う!めちゃめちゃ可愛いよ~カナ~」

クソがっ!!

鏡の前でイケてると思った自分をぶん殴りたくなるほどのレベル差を見せつけられた。

しかも、これ、お揃い……?

「リンクコーデだよ!ちょっと色味が違ったりしてるでしょ?」

「お前、新手の嫌がらせか?こんなの引き立て役じゃねーか」

「何でー?恋人同士みたいでいいでしょ?誕生日デートなんだから」

ダメだ。
モデルの顔をグーで殴りそうになった。

「ふっざけんなよ!お前がその格好なら俺は行かねぇ」

何度も食い下がってきたが、絶対に嫌だった。
何度も首を横に振る。

「……じゃあ、キャップだけ。これだけは同じで行きたい」

渋々、首を縦に振った。

着替えてきた蒼は、全身白でキャップだけ俺と同じ。
結局、お揃いじゃなくなっただけで、カッコいい。
引き立て役すら、つとまりそうにない。

「じゃ、行こう?」

引っ越ししてきて以来、初めて外に出る。
正直、ビビっていたし、蒼の冗談を真に受けて手を繋ぎたい気分だった。

少し見上げると、蒼が俺を見ていた。大丈夫、というように軽く笑む。

マンションから一歩出る。
次は、あの角まで。
次は、大通りまで。

人や車が行き交う交差点まで来て、あぁ、世界は俺なんかと関係なく動いていると実感する。

ここまで、来れたんだ。

家族のおかげで。
蒼のおかげで。

俺はちゃんと、自分の足で、ここまで来れたんだ。


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