運命なんていらない

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31*~蒼&奏視点~

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まだ奏は寝ているかもしれない。
なるべく音を出さないように解錠し、そーっと入ると、少し扉が開いた寝室からは一定の呼吸音が聞こえる。

疲れてるよな……今日は誕生日デートをしようと思ってたけど、ゆっくり部屋で過ごそうかな……。

まぁ、そこは二人で相談しよう。

もうお昼も近いし、目覚めた奏がお腹空いてるだろうから、軽くブランチでも作ろうかな。

勝手知ったるキッチンで、買ってきた材料を取り出しクロックムッシュとスープを作る。

短時間で作り、アツアツを食べてもらいたいからそろそろ起こそうかな、と寝室を覗くと、相変わらず寝相が悪い奏がベッドから落ちかかっていた。

あまりの体勢にちょっと吹き出すと、優しく揺り起こす。

「カナ、もう起きよう?カナが好きなクロックムッシュ作ったよ。トロトロのチーズが好きでしょ」

「んー、あ、お?」

「おはよう、カナ。今日も可愛いね、大好きだよ」

軽く頬をくすぐると、うっすらと目を開けた。

「……俺も」 

寝ぼけ眼で、ヘラっと笑う。

!?
え、え。
心臓が止まるかと思った!!
奏が、デレた。
貴重すぎるっ……。

余韻を噛み締めていると、目を擦りながらカナがゆっくり起き出す。

「寝れねーとか思ってたのに、爆睡しちゃった。朝ご飯まで、ごめんな」

「いいよ。顔洗って、チーズトロトロのうちに、食べよ」

「ん」

いつもの穏やかな時間。



この時間が二人とも好きだ。



蒼が作ってくれた朝ご飯は相変わらず絶品だ。
和食が好きな俺のためにいつも和食を作ってくれるが、たまに食べる洋食もうまい!
クロックムッシュはチーズがトロトロだし、絶妙なその塩加減と香ばしいベーコンで、一瞬で腹の中に収まった。
コンソメと卵の温かいスープで一息いれる。

「今日、どうする?お外デートも考えたけど、まだちょっと疲れてるでしょ?」

「んー。どうしようかなぁ……」

疲れてるといえば、疲れてる。

「あんまり疲れるとさー、夜が、ね」

夜……。
そういえば、抱くって……。
じわじわ顔が赤らむ。

「言ったでしょ?抱くって。なんなら、今からしちゃう?」

「し、しない!」

怒った声を出してみても、顔が真っ赤になってるだろう。

「蒼、俺、ヒートじゃないよ?それじゃあ、してもあんまりフェロモンとか出ないし、意味ないんじゃ…」

「はぁ?」

やばい。
怒った。
蒼は普段温和だから、怒ったら長い。

「今から、する。めちゃめちゃ、抱く」

「ちょっ!?外、外でデート、」

「しない。今日は俺とココでずっとセックスだよ」

お怒りの蒼が妖艶に笑う。

ど、どうしよう……。

オロオロしていると、蒼が俺を椅子から抱き上げ、お姫様抱っこの状態でさっきまでダラダラ寝ていた寝室に向かおうとしている。

「あ、蒼っ」

「今から、ヒートじゃない、意味がない、セックスをしようね?」

顔は微笑んでいるのに、声が怒っている。
怖い。

「ご、ごめんっ、俺、そんなつもりじゃなくて、蒼が楽しめないっておもっ」

噛みつくように口付けられる。
安易に舌が入り込み、弱い上顎を擽る。
飲み込みきれない唾液が唇の端から流れるのをどうすることもできず、ただされるがまま、翻弄される。

瞳は涙で滲み、息苦しさと気持ちよさでクラクラしてくる。

「俺がどれだけ奏を抱きたかったか。ヒートの時だけじゃない。こうやって、いつもココで寝てる奏を思いながら、一人で何回抜いたか」

ゆっくり俺をベッドに下ろす。

俺は呼吸が整わないまま、次々と着ている服を荒々しく脱いでいく蒼を見つめる。

長い手足、割れた腹筋、発情しているような濡れた瞳。
絶対的なオーラを放ちながら、ゆっくりと近づいてくる。

「ヒートの時と、同じ顔してる。トロトロだね?俺に、抱かれたい?ヒートのΩとしてじゃなく、奏として、おれに抱かれたいって、思ってくれる?」

俺の答えを待ってくれてる。
どんな人をも魅了するその肢体を俺に見せつけながら、蒼はじっと待ってる。

「蒼が……いい。蒼だけで、いい。抱いてほし……」

恥ずかしくて声が震える。
まだ、心の底には俺なんかでって思いがあるけど、ずっと俺を待っててくれた蒼のためにも向き合いたい。

「カナ……好きだよ……ずっと好きだった。誰にも渡さない。俺だけのっ」

蒼が性急に俺の服を脱がせる。
寝起きのままスウェット姿だった俺は一瞬で全裸にされた。

「蒼、待って、シャワーだけでも」

「待てるわけないだろ!」

こんなにも、俺を求めてくれる。
余裕がない蒼が、嬉しかった。

胸元の飾りにむしゃぶりつきながら、右手で俺のすでに勃ち上がっているペニスをゆっくりなぞる。
鈴口からは先走りの愛液が漏れ始め、なぞる蒼の手を濡らす。
次第に手の動きを早め、強弱をつけながら俺を追いこんでいく。

「あっ、あっ、んん、あっ、も、あおっ、も、でっる」

止めて欲しいのに、蒼は一層手を早める。

「イッて……見てるから……カナ……」

「や、やっ、見るっなってぇ、あぁっ、も、いくっいくっっ」

上から見下ろす蒼の視線を感じながら、我慢ができず、精液を放つ。
部屋に独特の匂いが充満する。

「はっはっはぁ」

息が整わない俺のこめかみに蒼が何度も軽くキスをする。

「可愛い……カナ……俺の手でイッてくれて嬉しい……」

蒼が嬉しそうに笑う。

「恥ずかしいから、あんまそーゆーの言うな」

俺は赤くなりながら、蒼の脇腹を小突く。
ふと視線を下げると、蒼のペニスが脈打っていた。
その長大なペニスは先走りの液でしとどに濡れている。

「そ、それ、きつくねーの……」

「もう、痛いよ。カナのそんな姿見てるだけでイキそう」

「あの、俺が口で、とか」

蒼はくすくす笑いながら俺の唇を撫でる。

「ヒートの時はすぐ俺のにむしゃぶりつくドエロのカナもいいけど、照れながら煽ってくるカナもたまんないね」

ふっと引き寄せられ、キスをする。
舌が忍び込み、優しく口腔内を擽られる。

「でも、今日はもう、挿れさせて」

その言葉と共に、いつの間にかジェルを纏わせた蒼の長い指が俺の中にぐっと入ってくる。

「あっあっ、あおっ、そこだめっだめっ」

「ごめんっ。カナが可愛すぎて、俺も我慢できないっ」

二本三本と早急に指が増やされる。
中の前立腺を巧みに刺激されながら、後穴を広げられ、もう、口からは意味のない喘ぎ声しか出ない。

「もうっ、あっあっ、もっんっあっ、いれってぇ、あっいっ」

「挿れるよ」

俺の腰を両手で軽く上げると、足を肩近くまで上げ、ぐっと蒼は腰をすすめる。

「うぁっはっ、ぃあっっ」

内蔵が押し上げられる圧迫感と共に、熱い楔が奥へ奥へと打ち込まれる。
苦しくて、熱いのに、心は満ち足りる。

「あ、おっ、うれしっ、あっあぁっ」

「カナっ、かなでっ、ごめんっ、動くっ」

「うぁっ、あっあぁっ、い、あっんんっ」

前へ後ろへと、ゆっくり揺さぶられる。
もう、口からは悲鳴と喘ぎ声しか漏れない。
蒼が深く腰をすすめる度に人形のように上半身を跳ねさせる。
蒼は額の汗をポタポタとシーツに落としながら、自分の欲望をセーブしようとしているのが分かった。

「あおっ、あっ、すきっ、すっきっうごいってぇ」

「いいっのっ、止まんないよっ」

蒼が激しく揺さぶりだす。
下生えが何度も尻にあたり、強く密着するように押し付けられる。
あんなに苦しかった中が次第に快楽を見いだし始め、強く突かれる度に俺のペニスからは少量の精液がぴゅるぴゅると出ていた。

「かなでっ、カナっ」

何度も名前を呼びながら腰を打ち付けるスピードを上げていく。
俺はシーツを握りしめながら、喘ぎ声さえ追いつかず、歯を食い縛っていた。
一際強く打ち付けられた後に、中に熱い奔流を感じる。
腰を塗り込めるように緩く動かして、どさりと蒼が覆い被さってくる。

「……ごめん。全然、足りねー」
「へ……」

さっき放ったばかりなのに、俺の中にいる蒼がどんどん主張してくる。

「あっあっ、うそっ……」

「カナ、好きだよ……好きだ……」

徐々に腰を動かし出す。

「おれっも、好きっ、すきっ」

もうあとは蒼にされるがまま、俺は気を失うまで何度も蒼に好きだと言い続けた。



「カナ、大丈夫?お水飲める?」

「ん」

もう、外は暗い。
あれから何時間経ったのか……何回射精させられたのか分からない。
身体は重いが、心はとても満たされている。

「お前、すげーな」

「えぇ?何が?」

甲斐甲斐しく俺の世話をしている蒼を細目で見る。

「どこでそんな経験積んでんだよ!女優か?」

俺は蒼しか経験がないが、どう考えても蒼は上手い。
ヒート中は俺自身が訳が分からなくなっているが、今回は全部覚えている。
……後半は朧気だが。

「はぁ?何で俺がカナ以外を抱くの?」
「え?」

聞き捨てならないことを言った。

「俺、だけ?」

「当たり前でしょ?何歳から好きだと思ってるの?なんで好きな相手がいるのに、他の奴抱くの?信用なさすぎない?」

蒼は呆れ顔だ。

「だって……最初から慣れてただろ……」

「いや、俺も初めてって言ったよね?初めてだから、覚えててって言ったのに……」

「えぇっ!?ヒート中のセックスが初めてなのかと思ってた!」

お、驚いた……。
こんな人気俳優が、俺だけ!?

「も、もったいねー」

「カーナー、抱かれ足りないのかな?」

「もう十分です」

俺はすぐ頭を下げた。
これ以上は無理だ。

蒼はふっとため息をついた。
呆れられている。

蒼はベッドの上で、居住いを正す。

「奏。お誕生日、おめでとう。ちゃんと、言ってなかったよね?」

「ありがと」

ベッドの上で、裸にパンツ姿がちょっと笑えるが、こんなに満たされた気持ちで誕生日を迎えるのは初めてだ。

蒼もきっと、同じ気持ちなんだろう。
穏やかな顔で、そっと俺の手を取る。

「奏。僕と番になって。次のヒートで、項を咬ませて。もう待てない。毎年誕生日が来る度に、今年こそもう咬んでやろうかってずっと思ってた。……僕を、奏の唯一に選んで」

俺の目を見つめながら、毎年聞いていた言葉を言う。
今までも、蒼は真剣に同じ気持ちで言ってくれていたんだろう。
なのに、俺は聞き流していた。

今年は違う。
触れられた両手から、蒼の気持ちが流れ込んでくるようだった。

気持ちが溢れて、瞳が滲む。

「蒼。俺の、番になって。一緒に生きて。俺は蒼を運命にしたい」

俺は蒼の手をぎゅっと握った。

俺たちはこれからも、この手を離さず生きていく。

二人で向かい合い、未来に思いを馳せながら、そっと口付けした。
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