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海里編1
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はぁ。
二人がくっついてくれて、一安心。
奏くんのマンションから出て、自宅に戻るために待機してもらっていたタクシーに乗り込む。
今日の舞台あいさつはちょっと煽りすぎたかなー?と心配していた。
会った時の自分の印象を信じて良かった。
奏くんなら、自分で乗り越えて答えを出してくれると思っていた。
タクシーの車窓から過ぎ行くネオンを眺める。
今、自室のベッドで寝ているであろう愛しい人を思い浮かべた。
起きたら、報告しよう。
でも、きっとまた怒られる。
顔を真っ赤にし、目にいっぱいの涙を貯めながら、頬を膨らませる姿を想像し、くすりと笑った。
どんな姿でも、愛しい。
信じてない訳じゃない。
僕のことを愛してくれているし、簡単に気持ちが移るタイプでもない。
奏くんのことを好きになったり、奏くんが好きになったり……万に一つもないと蒼にも散々言われた。
でも、怖いんだ。
それは、僕自身の問題だ。
僕は産まれた時から、母に似て美しかったらしい。
母はΩで、父はα。
二人は運命の番として出会い、愛し合い、幸せに暮らしていた。
そう、周囲の人たちは思っていただろう。
が、内情は違う。
確かに、父は母を愛していた。それはもう、狂気的に。
番となり、他の人にフェロモンが香ることがなくなっても、母はその美しさでαもβすらも魅了する。
金も権力もあった父は、容易に母を繋ぐことが出来た。
広い屋敷に住み、家事などはすべて雇われた者が行うため、母は美しい手をしていた。
外に出ることは許されず、母の世界はいつも屋敷の中。
僕を若くして産んだため、僕が記憶する母はまるで少女のようだった。
僕を優しく腕に抱き、薄幸そうな笑みを浮かべる。
「海里は母様と同じΩかしら……運命の番に出会わなければいいのに……」
あぁ、母は幸せではないんだな。
子供心に、憐れに思っていた。
父は母に似た僕が、どこかのαに奪われることを恐れていた。
そのため、幼い頃から柔道、空手、合気道と自衛の手段を学ばされた。
体質的に筋肉はつかず、母の面影のままだが、武道と相性が良く、精神的には強靭で父に似ていった。
だが、心の隅で自分はΩなのだろうと思っていた。
可哀想な母のようなΩにだけは、なりたくない。
自分で自分の番は見つけたい。
中学に入り、バース性検査の結果、やはりΩだった。
思っていたより、ショックを受ける自分がいたが、こればかりはどうしようもない。
受け入れるしかない。
診断結果を告げるため、いつもより早めに帰宅すると、部屋の一室から両親の濡れた声がする。
両親のそんな姿など見たくないので、気づいてすぐに去ろうとしたが、障子の隙間から母の顔が一瞬見えた。
まるで、人形のようだった。
虚ろな目、口からは濡れた声が漏れていたが、表情はなく、ただ揺さぶられるだけの身体。
ぐっと吐き気が込み上げてくる。
慌ててトイレに駆け込むと、胃の中の物をすべて吐いた。
あれは、自分の姿だ。
自分と同じ顔をした母の姿が、男に抱かれる自分と重なる。
全身に鳥肌が立った。
身体中が拒否反応を示している。
僕は、無理だ。
二人がくっついてくれて、一安心。
奏くんのマンションから出て、自宅に戻るために待機してもらっていたタクシーに乗り込む。
今日の舞台あいさつはちょっと煽りすぎたかなー?と心配していた。
会った時の自分の印象を信じて良かった。
奏くんなら、自分で乗り越えて答えを出してくれると思っていた。
タクシーの車窓から過ぎ行くネオンを眺める。
今、自室のベッドで寝ているであろう愛しい人を思い浮かべた。
起きたら、報告しよう。
でも、きっとまた怒られる。
顔を真っ赤にし、目にいっぱいの涙を貯めながら、頬を膨らませる姿を想像し、くすりと笑った。
どんな姿でも、愛しい。
信じてない訳じゃない。
僕のことを愛してくれているし、簡単に気持ちが移るタイプでもない。
奏くんのことを好きになったり、奏くんが好きになったり……万に一つもないと蒼にも散々言われた。
でも、怖いんだ。
それは、僕自身の問題だ。
僕は産まれた時から、母に似て美しかったらしい。
母はΩで、父はα。
二人は運命の番として出会い、愛し合い、幸せに暮らしていた。
そう、周囲の人たちは思っていただろう。
が、内情は違う。
確かに、父は母を愛していた。それはもう、狂気的に。
番となり、他の人にフェロモンが香ることがなくなっても、母はその美しさでαもβすらも魅了する。
金も権力もあった父は、容易に母を繋ぐことが出来た。
広い屋敷に住み、家事などはすべて雇われた者が行うため、母は美しい手をしていた。
外に出ることは許されず、母の世界はいつも屋敷の中。
僕を若くして産んだため、僕が記憶する母はまるで少女のようだった。
僕を優しく腕に抱き、薄幸そうな笑みを浮かべる。
「海里は母様と同じΩかしら……運命の番に出会わなければいいのに……」
あぁ、母は幸せではないんだな。
子供心に、憐れに思っていた。
父は母に似た僕が、どこかのαに奪われることを恐れていた。
そのため、幼い頃から柔道、空手、合気道と自衛の手段を学ばされた。
体質的に筋肉はつかず、母の面影のままだが、武道と相性が良く、精神的には強靭で父に似ていった。
だが、心の隅で自分はΩなのだろうと思っていた。
可哀想な母のようなΩにだけは、なりたくない。
自分で自分の番は見つけたい。
中学に入り、バース性検査の結果、やはりΩだった。
思っていたより、ショックを受ける自分がいたが、こればかりはどうしようもない。
受け入れるしかない。
診断結果を告げるため、いつもより早めに帰宅すると、部屋の一室から両親の濡れた声がする。
両親のそんな姿など見たくないので、気づいてすぐに去ろうとしたが、障子の隙間から母の顔が一瞬見えた。
まるで、人形のようだった。
虚ろな目、口からは濡れた声が漏れていたが、表情はなく、ただ揺さぶられるだけの身体。
ぐっと吐き気が込み上げてくる。
慌ててトイレに駆け込むと、胃の中の物をすべて吐いた。
あれは、自分の姿だ。
自分と同じ顔をした母の姿が、男に抱かれる自分と重なる。
全身に鳥肌が立った。
身体中が拒否反応を示している。
僕は、無理だ。
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