胡蝶の夢に耽溺す【完結】

🫎藤月 こじか 春雷🦌

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68 天にも昇るような幸福※

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 もう今更よ。――もはや殺されて然るべき、引ける機会など、もうとうに逃してしまったのだ。
 俺は全裸となり――首に垂れ下がった女の桃色の牙を掴んで、…ぶちり。――どこかへそれを、ぽいっと乱雑に、投げ捨てた。…我が身を守るものなど、もう要らぬ。
 
 そして仰向け、組み敷いたユンファ様の蕾に、勃起の先を押し当てた。
 
 しかし、ぐうっと押し込もうとすれば、ユンファ様はぎゅっと眉を顰めた。
 
「…ユンファ様、痛いですか、…」
 
「…っ、…、…いいえ…」
 
 俺が痛いかと尋ねれば、ユンファ様は苦しげな顔で笑い、その顔をふるりと横に振った。――そして俺のほうへと、その白く細い両腕を伸ばし…俺のうなじに腕をのせ、はぁ…と涙目でため息をはく。
 そして彼は、その濡れた薄紫色の瞳で俺を見つめながら、火照った顔で、儚げに微笑むのだ。
 
「…痛くない…。幸せです…。だから、挿れて……」
 
「……、ゆっくり、挿れましょう…」
 
「…うん…、……っ」
 
 微笑み頷いたユンファ様は、…やはり怖がっているように、きゅっと目を瞑った。
 
 おそらくは破瓜はかしたてというのもあり、傷が痛むのもそうだろうが――何より、たかだか一度や二度男を受け入れた程度で、次はもうすんなり…なんてのは、まああり得ぬことだ。…そりゃあ初めよりはマシだろうが、それでもまだ異物の大きさに体が慣れていないのは、あくまでも当然のことである。
 
「……では、痛むようなら言って…、はぁ…、…っ」
 
 ここはユンファ様のお体に合わせ、ゆっくりと――男の本能は、一旦噛み殺し…――あくまでも先端だけを、じわじわ…――挿れるよう…慎重に――優しく…――ぐぷん…っ。
 
「…ん゛っ…、ク…っ」
 
「…っはぁ、…大丈夫? ごめんなさい、はぁ…」
 
 やっと入り込んだ俺自身の頭を、きゅうっと締め付ける彼の体。
 俺は先だけが入った時点で、ユンファ様に優しい接吻をする。――唇を食み、慰めるようにぺろぺろと、その甘くやわい唇を舐める。
 
「…んっ…♡ ふふ、大丈夫…、痛くありません…」
 
「……はは…、ユンファ様……」
 
 すると、和んだように顔をほころばせたユンファ様は、笑みに細めたその目をキラキラさせて、俺のうなじをぎゅうっと抱き寄せる。
 
「……もっと…奥までどうぞ…。ソンジュ様、もっと奥まで、お出でください……」
 
「……、では、ゆっくりと参りまする…」
 
「……うん…、…」
 
 俺はゆっくりと推し進める。
 …じわじわと進めてゆく俺の腰に反して――奥へ奥へと吸い込むようなユンファ様の熱いナカ、俺は肘を着き、顔を寄せれば、ユンファ様は俺のうなじを強く抱き寄せる。
 
「……うぅ…♡ ぁ…♡ ……っん、んふ…♡」
 
 火照り、歪んだその美貌は――痛そうなような…、快感に悶えているような…それが判然としないながら、艶めかしい。
 んん…とやや辛そうな声を出す彼は、ゾクゾクと体を戦慄わななかせながら、その歪んだ顔を斜に伏せて、ぎゅっと眉をひそめ、半目開きを伏せ気味にする。
 
「……んぅ…♡ ん、んん……♡」
 
「……はぁ、……っ」
 
 熱い。ぬるぬるとして、柔らかく、瑞々しく――ザラリとしたミミズがくにょくにょと蠕動ぜんどうし、奥へ奥へと吸い込まれてゆく。…ぬぷぷ…とこれよりはあまりキツさはなく、ただなめらかに、俺はユンファ様の体内に沈み込んだ。
 全てを優しくねっとりとした肉に包み込まれて、ゾクゾクと全身が震える。…硬い俺に、ねっとりと柔い肉が、とろりとした粘液が絡み付いてくる――恥骨に当たる、その人のふにゃりとした膨らみを潰さぬようにとは頭の端に思うが、根本まで絡め取られては夢中になりそうだ。
 
「…っはぁ…、…全部、…全部入りました、ユンファ様……」
 
「……はぁ…、本当…? それはよかった……」
 
 俺の報告に、近い距離でユンファ様が、幸福そうに柔らかく微笑む。――その美しい笑顔ですら、何とも色っぽい。…そして彼は、ふと顎を引き。
 
「ところで…ど、どうでしょうか、ソンジュ様……」
 
「……あぁ…、…」
 
 つまり、ナカの具合の善し悪しを尋ねられている、とは俺もわかっているが、下手なことを言えば恥辱の言葉になり得そうだと困る俺――するとユンファ様は至近距離で、少し、照れ臭そうにとろりとしつつも眉をたわめて笑い。
 
「……あの、僕の…僕の、ナカ…、ソンジュ様を、気持ち良く…できておりますか…?」
 
 かなり自信なさげな、小さな声で、――そんな愛おしいことを。
 
「…ぐ、…なんて可愛いことを…、もちろんでございます、はぁ…今にも、気を遣りそうなほどだ……」
 
「……? 気をやる…?」
 
「……、…、…」
 
 するときょとんとしたユンファ様に、…また困り果てる。――そうか、絶頂の表現すらも知らないか。
 
「…あぁ、つまり…あまりにも気持ち良く、天上にも昇りそうなほどだと…、精が今にも出てしまいそうだ、という意味で……俗にそれを、と申します……」
 
 説明している俺こそが恥ずかしい――。
 …しかし、そうして説明をするなりユンファ様は、あぁ、と納得したように目を丸くして頷いた。
 そして彼は、ふわりと顔をほころばせる。
 
「…それは何より、僕も幸せでございます、ソンジュ様。…僕もあまりに幸せで、気持ち良くて…本当に今にも、天上に昇りそうなほど…――いえむしろ、今もう天上にいるような心地がいたします、はは……」
 
「…ははは…、……」
 
 これはもしや…微妙に、その意味が伝わりきっていないか――まあ、いいか。
 
 
 
 
 
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