胡蝶の夢に耽溺す【完結】

🫎藤月 こじか 春雷🦌

文字の大きさ
91 / 163

91 正解のわからない後悔

しおりを挟む



 
 
 
 
 
 
 ――やっと終わった。
 しかしそれは、、と付くものである。
 

「………は…、…」
 
 俺にとってもやけに長い、いつもよりも長い、いやに長ったらしい、永遠の苦行にも近しい――この“婚礼の儀”、いつもよりいくらも地獄の時間であった。
 
 自己嫌悪したって致し方ない。
 わかっていても、無理がある。
 
 今に取るべき正解の行動は、なんであった?
 ジャスル・ヌン・モンスの背を斬りつけることか?
 はたまたこの場でユンファ様を貶めた男どもを、皆殺しにすることか?
 ただ穏やかに制止することなど、到底殺しでもしなければできなかったことだろう。――ジャスルを始めとしたこの者どもを斬りつけ、殺し、ユンファ様を攫うほかに…この乱交騒ぎを止める方法はなかった。
 
 しかし、それは本当に、ユンファ様にとっての救いであったのか…――俺に生きろと、生きて幸せになれと言い、たとえ自分がどうなろうとも止めるな、助けるな、何もするなと俺に言ったユンファ様にとって――この汚辱の宴を血に染めることは、その人の覚悟を踏みにじる真似だったんじゃないだろうか。
 
 人殺しをしてでも、愛しい人を助け、止めるべきであったのか――それとも、ただこうして眺めているだけだった、この俺の惨めで情けない選択こそが、正解であったのか……――後悔をしていながらも、未だなんら正解がわかっていない俺には、その後悔すら上手いことできぬ。
 

「……はぁ…、はぁ……」

 ぐったりと濃い紅の座布団に投げ出されたユンファ様の体――全身の肌がうす赤く染まり、精にまみれてぎとついて、彼の細長い裸体は、そこに力なく横たえられている。

「ふーっ、ふー…それユンファ、これをしておけ。」

「……ぅ…っ」

 ジャスル様の精力は凄まじく、丁度十発をユンファ様の体内に吐き出したその人は、先から徐々に太くなった専用の“栓”を、ユンファ様の白濁が溢れ出ている蕾にぬぷんっと差し込んだ――すっかり敏感になった彼は、それだけでビクンと軽くも腰を反らせる――。
 そして疲労と絶望に虚ろな顔をし、ぼーっとしている彼の下腹部を撫で――にまりと笑うジャスル様は、ピタピタと彼の頬に、半勃ちのモノを叩き付ける。

「はよぉワシの子を孕めよユンファ、早いところ子を成せば、お前も楽になるんだぞ…? なあ…」

「……う…、はぁ…はい……」

 ユンファ様はぼんやりと、ただ機械的に返事をした。
 彼の体は、この宴会場にいた俺以外の男どもが吐き掛けた白濁で穢されている。
 ――言い伝え…男の精の匂いを嗅ぐと発情し、女は排卵する…当然男根のあるユンファ様が女性でないのは確かながら、彼が子を宿す側であるからこそか。…今回においてもそうしたのだろう。――大義名分としては、、この宴会場でまぐわったジャスル様だ。

 しかし――。
 
“「……残念ながら、蝶は…心からお慕いしている方とでなければ、子を成すことはできません……」”
 
 もしユンファ様の、あの言葉が事実ならば…――それもこれも、無駄なことだ。
 あるいはもう、俺の子が彼の腹に宿っている可能性だってある。――しかし、もしこれでユンファ様が俺の子を懐妊していた場合、…その子はジャスルの子として生まれ、その男を父として育てられるのか。
 
「……、…っ」
 
 俺は密かに、唇の裏のやわいところを噛み締めて、滲む血の味を慰めに舐めとるばかりだ。
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...