27 / 67
第1話
018. 登場人物が増え始めます4
しおりを挟む
突如として不気味な音を立て始めた強襲者。
面食らって、それまで恐怖で震えていた身体もいつの間にか止まっていたボク。
そして……
「フッフフ。
全く、誰かと思えば……」
ハクは両の手で構えていた杖の先をぶらりとおろして見せた。
え? え? 敵じゃないの?
「キミこそ!
討ち取るところだったじゃないか」
話がわからない。
誰か説明して?
「こんな簡単なことも分からないの?」
エリィ、キミは黙っててくれ。
余計に話がこじれそうだから。
「この子は敵じゃないわ」
「え、でも」
それまで項垂れていた弓の強襲者は、暗めの金髪をかきあげてボクに向き直った。
「ワシはアニヴェル!
ハクはアニーって呼ぶのだ」
低めながらも良く通る声で明朗快活に答えたのは、縦長でこげ茶色の瞳が印象的な女の子だった。
地の肌の色はよく陽に焼けており、大きな目と白い歯の対比がまぶしかった。
太陽そのもの、元気のアイコンの様な人という印象だった。
アニーと名乗った女性はボクに真っ直ぐに右手を差し出してきた。
「ハクとは何度も仕事をしてきた仲間なのだ。
キミは?」
「イツキといいます。ここにきて間もないボクはハクさんに色々と助けてもらっていて」
思わず答えてしまった。
彼女の、元気のなせる業か?
あの笑顔でそれまでに凝り固まった疑うという気持ちが一気に晴れた気がする。
ヨロシクね、と言いながらおずおずと差し出したボクの右手を握った。
彼女のすべすべとした柔らかい指を感じて、呆けそうだったが勢いよく上下にブンブンと振られ、肩が抜けるかと思った。
後にソレが握手だったことはハクから聞いた。
「それにしても、アニー。
いきなり襲い掛かってくるだなんて、小鹿のじゃれつきにしては大げさじゃないかしら」
「ちが、ちがうよ!
襲うつもりなんてなかったんだよ。
ちょっとした勘違いだったんだってば!」
慌てふためき、ワタワタと手を振り回すアニーとそれをおちょくる様に笑うハク。
どちらもまごうことなき美形の男女なので、ドラマのワンシーンにも見えた。
「大方、ワタシたちの担いでいる荷物を見て、賊の一部とでも勘違いしたってところかしら」
「そのとおり!
ワシの受けた仕事「ある小さな集落が賊に襲われて、盗まれたものを取り返す」ってものだったのだ。
それらしき人影を見つけたから、尾行したのだ」
あー、そういうことね。
良くある話だね、とも思ったし、実際そういうことをしようともハクと話していたんだから驚きはしなかった。
「ただ、それでも武器を構えてホールドアップ、はないんじゃないですか?」
いまでもありありと思い出せる背中に突き付けられた矢じりの感触。
ボク、おしっこしてただけだよ?
「そりゃあ、狩猟の対象が無防備に用を足してたら……狙うわよね?」
「もちろん。
一度に相手をするなら二人よりも一人。
だから物陰に隠れた隙を狙ったのだ」
あー、そういうことね。
「お前みたいな平和ボケしたやつとは基本的にちがうのよ」
空中でイシシと笑うエリィ。
お前こそ問答無用で打ち抜いてやろうか?
「と、いうわけで。
ハク、キミのことだ、もう賊たちはとっちめたんだろう?」
「それなりにね」
「そうか。
じゃあ、その荷物を集落に返して、ワシの仕事は完了だ。
モチロン、手伝ってくれるよね?」
ハクは戦闘で手放していた荷物を肩に担ぐ。
「行きずりとはいえ、そうするつもりだったからねぇ」
アニーは豊満な胸部を突き出し、オレンジ色のシャツを張り詰めさせた。
「ありがとう!
そうとなったら、キミ!
イツキにも手伝ってもらうのだ」
「ボ、ボク!?」
「おねがい!」
その、彼女の目が、あまりにもまっすぐで……
荷物を持つのが疲れたから、仕事だっていう彼女が現れたのなら荷役から解放されると思っていたのに……
思わず、うんと 頷いてしまった。
「ありがとー!」
礼を言うのと同時に、アニーはすらりと長い腕でボクの頭部を(ハクも)引き寄せ、その持ち主同様に元気な胸元で圧迫してきた。
ちょうどボクの顔がそこに埋まるような位置関係だ。
「あらあら、幸せそうな顔しちゃって~」
うっさい。
でも、大丈夫かなぁ。
この人、色々と。
「まぁ、大丈夫じゃあないでしょうね~」
そうだよなぁ。
でも、とりあえずは良いか。
今は一時の物理的な幸せに身を任せることにした。
アニーはウリウリと感謝を表しながら、ぎゃっぎゃっぎゃっと独特な笑い声をあげて見せていた。
面食らって、それまで恐怖で震えていた身体もいつの間にか止まっていたボク。
そして……
「フッフフ。
全く、誰かと思えば……」
ハクは両の手で構えていた杖の先をぶらりとおろして見せた。
え? え? 敵じゃないの?
「キミこそ!
討ち取るところだったじゃないか」
話がわからない。
誰か説明して?
「こんな簡単なことも分からないの?」
エリィ、キミは黙っててくれ。
余計に話がこじれそうだから。
「この子は敵じゃないわ」
「え、でも」
それまで項垂れていた弓の強襲者は、暗めの金髪をかきあげてボクに向き直った。
「ワシはアニヴェル!
ハクはアニーって呼ぶのだ」
低めながらも良く通る声で明朗快活に答えたのは、縦長でこげ茶色の瞳が印象的な女の子だった。
地の肌の色はよく陽に焼けており、大きな目と白い歯の対比がまぶしかった。
太陽そのもの、元気のアイコンの様な人という印象だった。
アニーと名乗った女性はボクに真っ直ぐに右手を差し出してきた。
「ハクとは何度も仕事をしてきた仲間なのだ。
キミは?」
「イツキといいます。ここにきて間もないボクはハクさんに色々と助けてもらっていて」
思わず答えてしまった。
彼女の、元気のなせる業か?
あの笑顔でそれまでに凝り固まった疑うという気持ちが一気に晴れた気がする。
ヨロシクね、と言いながらおずおずと差し出したボクの右手を握った。
彼女のすべすべとした柔らかい指を感じて、呆けそうだったが勢いよく上下にブンブンと振られ、肩が抜けるかと思った。
後にソレが握手だったことはハクから聞いた。
「それにしても、アニー。
いきなり襲い掛かってくるだなんて、小鹿のじゃれつきにしては大げさじゃないかしら」
「ちが、ちがうよ!
襲うつもりなんてなかったんだよ。
ちょっとした勘違いだったんだってば!」
慌てふためき、ワタワタと手を振り回すアニーとそれをおちょくる様に笑うハク。
どちらもまごうことなき美形の男女なので、ドラマのワンシーンにも見えた。
「大方、ワタシたちの担いでいる荷物を見て、賊の一部とでも勘違いしたってところかしら」
「そのとおり!
ワシの受けた仕事「ある小さな集落が賊に襲われて、盗まれたものを取り返す」ってものだったのだ。
それらしき人影を見つけたから、尾行したのだ」
あー、そういうことね。
良くある話だね、とも思ったし、実際そういうことをしようともハクと話していたんだから驚きはしなかった。
「ただ、それでも武器を構えてホールドアップ、はないんじゃないですか?」
いまでもありありと思い出せる背中に突き付けられた矢じりの感触。
ボク、おしっこしてただけだよ?
「そりゃあ、狩猟の対象が無防備に用を足してたら……狙うわよね?」
「もちろん。
一度に相手をするなら二人よりも一人。
だから物陰に隠れた隙を狙ったのだ」
あー、そういうことね。
「お前みたいな平和ボケしたやつとは基本的にちがうのよ」
空中でイシシと笑うエリィ。
お前こそ問答無用で打ち抜いてやろうか?
「と、いうわけで。
ハク、キミのことだ、もう賊たちはとっちめたんだろう?」
「それなりにね」
「そうか。
じゃあ、その荷物を集落に返して、ワシの仕事は完了だ。
モチロン、手伝ってくれるよね?」
ハクは戦闘で手放していた荷物を肩に担ぐ。
「行きずりとはいえ、そうするつもりだったからねぇ」
アニーは豊満な胸部を突き出し、オレンジ色のシャツを張り詰めさせた。
「ありがとう!
そうとなったら、キミ!
イツキにも手伝ってもらうのだ」
「ボ、ボク!?」
「おねがい!」
その、彼女の目が、あまりにもまっすぐで……
荷物を持つのが疲れたから、仕事だっていう彼女が現れたのなら荷役から解放されると思っていたのに……
思わず、うんと 頷いてしまった。
「ありがとー!」
礼を言うのと同時に、アニーはすらりと長い腕でボクの頭部を(ハクも)引き寄せ、その持ち主同様に元気な胸元で圧迫してきた。
ちょうどボクの顔がそこに埋まるような位置関係だ。
「あらあら、幸せそうな顔しちゃって~」
うっさい。
でも、大丈夫かなぁ。
この人、色々と。
「まぁ、大丈夫じゃあないでしょうね~」
そうだよなぁ。
でも、とりあえずは良いか。
今は一時の物理的な幸せに身を任せることにした。
アニーはウリウリと感謝を表しながら、ぎゃっぎゃっぎゃっと独特な笑い声をあげて見せていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる