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ここでやっと、おずおずとした態度からメィリオが発言をしてみる。
「ワタクシはこの学園の学生ではなくてですね……お嬢様のお世話をするためにここにいるのですが……」
ユキシロはすっと通った己のアゴに右手を添え、小首をかしげる。
「あ~、ウン。どーでもいいんだわ。まぁ、一緒にやってみなって」
ニッと白い歯を見せてこれを一蹴。
「そうそう、ただ待ってるだけじゃつまらんだろ?」
――ヒィ!
子どものように屈託のない声と共にメィリオの肩を後ろからポンと叩いたのは、これまた昨日の地獄絵図の元凶、忍者と思しき小さめの少年だった。
「オレは九十九九々(つくも くく)、そっちのオカマと同じくオメェさん方に教える立場だが、俺の専門は忍の術だ。ニンニン! ナンテネ」
金色のアフロをゆらゆらと揺らしおどけて見せるその姿。黒装束に身を包み、口元も黒い布で覆っているにも関わらず、その表情は人当たりのいい幼さをのぞかせていた。
「オイ、オカマって言うなって、普段あれだけ言ってあんでショーが。また蹴り飛ばすぞ」
「ハッハァ、よく言うぜ。昨日だってオメェさんの蹴りは当たらんかったじゃねーの」
アァン?
んん?
ユキシロとツクモが睨み合い、バチバチと視線を交わらせ火花を散らし始める。
「あの~…… ボクは、部活は~……」
ワキミズがやっとのことで声を絞り出すも、三人目の部員がこれを踏みつける。
屋敷の中央に位置する畳敷きの大広間。更にその奥から姿を現した。
「なんだ、昨日の新入生か。入部するのか?」
「おぅ、いいところに来た。おい、この無表情ってか、仏頂面が部長の白美人(ハク ウツヒト)だ。ふつうにブチョーで通じるさ」
「はぁ……」
出鼻をくじかれ、シオシオと萎えていくワキミズ自身。
ワキミズ達はぞろぞろと大広間へと通された。
「んじゃぁ、部員と、新入部員が揃ったところで、まず、何から始める?」
そういって、三人の前に立つ三人。金色のアフロを揺らしながら、ツクモが問う。
「オレっちが教えられるのは忍の術だぜ?」
「おぉ、ジャパニーズ・ニンジャ!
イイデスネェ!」
「はぁ……」
歓声を上げるエミィに、うつろな瞳のワキミズ。
部長は左手に持った木刀を少し持ち上げた。
「それがしは剣術だ。あくまで、剣道とは違うからな……」
「オーゥ、ジャパニーズ・サムライ!
すばらしい!」
「そうすか……」
鼻腔を広げ、色めき立つエミィに、気だるげなワキミズ。
そして最後にユキシロがグイと自分の親指で己を指差す。
「アタシは体術。打つ、蹴る、投げる、極める。
武器もいいけどさ、まずは素手じゃなきゃな」
「イェス!
ジャパニーズ・カラテ!
ジュードゥ!
感激です!」
「うわぁ……」
まるで眼球その物がネオンになって発光しているかのように目の色を変えるエミィ。彼女に対し、明らかに嫌そうな表情を隠し切れていないのはワキミズであった。
「あのぉ~……武術ばかりでなくて、もっとこう、身体を激しく動かさない茶道とか書道とかはないんでしょうか……」
弱々しくも、自分の嫌なことは少しでもやりたくないと、ワキミズが問う。
ユキシロは先ほどアゴにあてた右手の指をひらひらと揺らす。
「確かに。殴り合うだけが文化ではないと言うのはもっともだ。」
彼の顔に明るい光が差し込むも――直後、奈落の闇へと突き落される。
「んだけど、まずは身体を動かして、基礎が出来てからだわ。何より、それじゃあ、アタシたちがつまらんのよ」
「そんな、つまらんって……」
かんらからからと笑うユキシロに、ワキミズはそれ以上の検討を要請することをしなかった。いや、出来なかったと言うべきであろう。
これには他の二人の部員、ツクモとハク部長も同調し、エミィに不満は無く、メィリオに至っては完ぺきに意見を求められる範疇にはいなかった。
「ワタクシはこの学園の学生ではなくてですね……お嬢様のお世話をするためにここにいるのですが……」
ユキシロはすっと通った己のアゴに右手を添え、小首をかしげる。
「あ~、ウン。どーでもいいんだわ。まぁ、一緒にやってみなって」
ニッと白い歯を見せてこれを一蹴。
「そうそう、ただ待ってるだけじゃつまらんだろ?」
――ヒィ!
子どものように屈託のない声と共にメィリオの肩を後ろからポンと叩いたのは、これまた昨日の地獄絵図の元凶、忍者と思しき小さめの少年だった。
「オレは九十九九々(つくも くく)、そっちのオカマと同じくオメェさん方に教える立場だが、俺の専門は忍の術だ。ニンニン! ナンテネ」
金色のアフロをゆらゆらと揺らしおどけて見せるその姿。黒装束に身を包み、口元も黒い布で覆っているにも関わらず、その表情は人当たりのいい幼さをのぞかせていた。
「オイ、オカマって言うなって、普段あれだけ言ってあんでショーが。また蹴り飛ばすぞ」
「ハッハァ、よく言うぜ。昨日だってオメェさんの蹴りは当たらんかったじゃねーの」
アァン?
んん?
ユキシロとツクモが睨み合い、バチバチと視線を交わらせ火花を散らし始める。
「あの~…… ボクは、部活は~……」
ワキミズがやっとのことで声を絞り出すも、三人目の部員がこれを踏みつける。
屋敷の中央に位置する畳敷きの大広間。更にその奥から姿を現した。
「なんだ、昨日の新入生か。入部するのか?」
「おぅ、いいところに来た。おい、この無表情ってか、仏頂面が部長の白美人(ハク ウツヒト)だ。ふつうにブチョーで通じるさ」
「はぁ……」
出鼻をくじかれ、シオシオと萎えていくワキミズ自身。
ワキミズ達はぞろぞろと大広間へと通された。
「んじゃぁ、部員と、新入部員が揃ったところで、まず、何から始める?」
そういって、三人の前に立つ三人。金色のアフロを揺らしながら、ツクモが問う。
「オレっちが教えられるのは忍の術だぜ?」
「おぉ、ジャパニーズ・ニンジャ!
イイデスネェ!」
「はぁ……」
歓声を上げるエミィに、うつろな瞳のワキミズ。
部長は左手に持った木刀を少し持ち上げた。
「それがしは剣術だ。あくまで、剣道とは違うからな……」
「オーゥ、ジャパニーズ・サムライ!
すばらしい!」
「そうすか……」
鼻腔を広げ、色めき立つエミィに、気だるげなワキミズ。
そして最後にユキシロがグイと自分の親指で己を指差す。
「アタシは体術。打つ、蹴る、投げる、極める。
武器もいいけどさ、まずは素手じゃなきゃな」
「イェス!
ジャパニーズ・カラテ!
ジュードゥ!
感激です!」
「うわぁ……」
まるで眼球その物がネオンになって発光しているかのように目の色を変えるエミィ。彼女に対し、明らかに嫌そうな表情を隠し切れていないのはワキミズであった。
「あのぉ~……武術ばかりでなくて、もっとこう、身体を激しく動かさない茶道とか書道とかはないんでしょうか……」
弱々しくも、自分の嫌なことは少しでもやりたくないと、ワキミズが問う。
ユキシロは先ほどアゴにあてた右手の指をひらひらと揺らす。
「確かに。殴り合うだけが文化ではないと言うのはもっともだ。」
彼の顔に明るい光が差し込むも――直後、奈落の闇へと突き落される。
「んだけど、まずは身体を動かして、基礎が出来てからだわ。何より、それじゃあ、アタシたちがつまらんのよ」
「そんな、つまらんって……」
かんらからからと笑うユキシロに、ワキミズはそれ以上の検討を要請することをしなかった。いや、出来なかったと言うべきであろう。
これには他の二人の部員、ツクモとハク部長も同調し、エミィに不満は無く、メィリオに至っては完ぺきに意見を求められる範疇にはいなかった。
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