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45. 別宅

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 俺達は、ナナミさんが過去に製作したという巨木に設置された吊り橋のお陰で、難なく、31階層を突破できた。

 しかも、31階層のフロアーボス部屋は、ナナミさんが魔改造してたらしく、普通の寛げる部屋になってるし。

 まず、フロアーボスが湧かないように、フロアーボス部屋の扉がドアストッパーというか、完全に鉄の杭で固定されてるし。
 そして、フロアーボス部屋の中に普通に部屋を作ってるし。

 しかも、ナナミさんしか入れない専用の個室まであって、本当に居たせりつくせり。

 ナナミさんは、2年間近く、31階層に潜りっぱなしで、31階層の吊り橋整備の仕事を冒険者ギルドから一人で請け負ってたので、31階層のフロアーボス部屋がこんな状態になってしまったとか。

 ナナミさんの個室は、どう考えても増築されており、フロアーボス部屋から飛び出してしまってるし。

「この部屋は、僕の別宅。お爺に頼まれて32階層に鋼材採取によく出掛けるし、31階層の吊り橋の保守整備も請け負ってるから、ここに部屋があると便利なんだ」

 ナナミさんは、事も無げに言う。
 ダンジョンのしかも、A級冒険者以上じゃなきゃ立ち寄れない30階層以上に自らの別宅を持ってるのは、世界広しとしてもドワーフのナナミさんぐらいだろう。

 話によると、ナナミさんが活動してるのは、30階層から32階層まで、あくまで権蔵爺さんに頼まれた素材集めをする為に、今迄、冒険者をやっていたようである。

「なるほどね。だから、あれ程スムーズに30階層を突破できたという訳ね」

 アマンダさんも納得してる。
 多分、31階層の吊り橋整備を冒険者ギルドから請け負ったのも、鉱石が採取できる32階層に行くのに都合が良かったのが理由だったのかもしれない。

 ついでに、フロアーボス部屋を魔改造しちゃってるしね。

「じゃあ、いこうか」

 ナナミさんは、本当に、自分の庭を散歩でもするぐらいの勢いで、32階層へと続く階段を下りて行く。

 そして、32階層は洞窟エリア。

 ナナミさんの説明によると、色々な鉱石が取れるらしい。
 普通に、洞窟を掘れば鉱石取れるし、魔物を倒せばレアな鉱石がドロップするとか。

 というか、ナナミさんはいつの間にか武器を替えていて、ツルハシになってるし。

「フフフフフ。これは僕が開発したツルハシナナミ3号! 魔物の体から鉱石を削り取るのに使う!」

 なんか、ナナミさんのテンションが、いつにも増して高い。
 というか、ナナミさん、ツルハシまで製作出来ちゃうのかよ!

 ナナミさんは、ツルハシナナミ3号を肩に担ぎ、ズンズンお目当てのミスリルが取れるという場所に進んで行く。

 途中、魔物も現れるが全て、ナナミさんのツルハシナナミ3号により、脳天釘刺し。
 ナナミさん、恐ろし過ぎる。

 そして、ナナミさんの、目当ての場所に訪れたのだが、そこは、32階層のフロアーボス部屋。

「ここで、ミスリルが採取できる!」

 ナナミさんの目が、キラリと光る。
 それは、完全に獲物を狩る狩人の目。

 ナナミさんが、勢い良くフロアーボス部屋の扉を開けると、そこにはロックゴーレムじゃなくて、ミスリルゴーレムが居たのだった。

「僕が戦うから、おっととトト君達は僕が削ったミスリルを拾っておいて!」

「ん?ミスリルを削る?」

「そう。ミスリルゴーレムは倒さない。倒しちゃうと、ミスリルゴーレムが消えて、ミスリルをひと握りしかドロップ出来なくなっちゃうから!」

 ナナミさんは慣れた手つきで、部屋の扉が閉まらないように、ドアストッパーで、扉を固定する。

「じゃあ行くよ!」

 ナナミさんは、フロアーボス部屋に飛び込むと、ミスリルゴーレムをツルハシナナミ3号で、ガンガン削って行く。

 というか、ツルハシでミスリルって削れるもんなの?意味が分からない状況で頭が混乱する。

「もしかして、ナナミさんが使ってるツルハシって、アダマンタイトじゃないかな?!」

 なんか、アマンダさんが興奮しながら、俺に話し掛けてくる。

「うん。アダマンタイトをこの目で見た事ないけど、確か、アダマンタイトって、赤黒い見た目の金属って聞いた事あるけど……ナナミさんのツルハシは、確かに赤黒いな……」

「だよね! だとしたら、あのツルハシ、とんでもない値打ちのツルハシだよ!
 多分、材料だけで、1億マールは下らないよ!」

「そんなに!?」

 俺は、正直驚く。材料だけで1億って、それを加工した製品って、どんな値段になるんだよ。

「しかも、自分で製作したった言ってたでしょ!この世界でアダマンタイトを加工出来る鍛冶師って、両手で数える数も居ないって言われてるし!」

 アマンダさんの口から、またまたトンデモ情報。

「じゃあ、ナナミさんって、本職魔法使いなのに、鍛冶師としての腕も、世界のトップ10に入ってるという事かよ!」

「そういう事になるわね……」

「ナナミ! 凄~い!」

 サクラ姫まで、なんか興奮してしまってるし。

 そうこうしてる間にも、ナナミさんはガンガンミスリルゴーレムを削って行く。

 俺達は、ナナミさんに言われた通り、削られたミスリルを拾って、フロアーボス部屋の外に運び出して行く。

 そして、

「まあまあ採取出来た。今日はこれで終わり」

 ナナミさんの合図で、俺達はフロアーボス部屋を出て扉を閉める。

「ミスリルがこんなにも……」

「トト君! 私達大金持ちよ!」

「キラキラ!」

 俺とアマンダさんとサクラ姫は興奮状態。

「だけど、コレ、どうやって運ぶんだ?こんな量、運ぶの大変だろ?
 まあ、ナナミさんのパワーなら運べちゃうかもしれないけど」

「確かに運べるけど、僕はソロだったから、手が塞がっちゃうと、襲ってくる魔物に対応出来なくて危ない。なのでコレを使う」

「嘘でしょ! それって!」

 アダマンさんが、目ん玉飛び出るほど驚いている。

「うん。魔法の収納袋」

「「ええぇぇぇぇぇーー!!」」

 ナナミさんが出したのは、まさかとは思ったけど、それは国宝級のお宝だと言われている、魔法の収納袋だったのだ。

 ーーー

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