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46. 歴史好き始祖と歴幼女

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 場所は幕末京都。塩太郎が死んでしまう原因となる、蛤御門の変の3ヶ月前。

 異世界から、異界の悪魔アマイモンと、歴史アドバイザーとして、異世界転生者で、元日本人のセドリックと、その下僕のシロが、異世界移転して来ていた。

 因みに、無駄にイケメンのセドリックの種族は始祖αで、白色大好き歴幼女シロの種族はアラクネである。

 3人の関係性は、異界の悪魔アマイモンが運営するダンジョンで、セドリックとシロが生まれたので、アマイモンは、2人の事を自分の子供と言い張ってたりしている。

「ご主人様! 早くカツラとコンタクトレンズを付けて下さい!
 始祖αの真っ赤な目と髪は、この時代の日本で、とても目立つんですから!」

「シロも早く、カツラとコンタクトつけやがれ!」

 そう、セドリックとシロは、幕末日本に潜伏するにあたり、外人ポイ顔立ちを隠す為に、黒髪黒目に変装してるのだ。

「おい!シロ! こっちの貨幣は、ちゃんと準備出来てるんだろうな!」

「ちゃんと準備してます! 事前にネットで調べて、鋳造してますから!」

「勝手に鋳造って、それ、偽札って事じゃないのか?」

「ん? 偽札ですけど、本物そっくりに作ってますから、誰にも偽札と思われませんよ!
 偽札も、本物と区別できなければ、それは本物という事になりますし!」

「お前、滅茶苦茶だな……」

「それ程でも」

 よく分からんが、シロは褒められたと思ったのか、滅茶苦茶照れている。

「というか、アマイモンは、どこに行っちまったんだよ!」

 そう、アマイモンは、日本に着いてから直ぐに、セドリック達の前から姿を消してしまったのだ。

「あ。お父さんだったら、里帰りしてくるって、イタリア方面に飛んで行きましたよ!」

「まあ、確かに、アマイモンは、この世界の悪魔だが、この時間軸から来た訳じゃないだろ?」

「よく分かりませんが、悪魔は、時間軸とか、あまり気にしてないみたいですよ!」

「そんなもんなのか?」

「そんなもんでしょ! だって、お父さん本人が言ってたんですから!」

「ていうか、アイツ、俺達に仕事を押し付けて、里帰りって、ふざけてんのか!
 俺だって、日本出身で、里帰りしたいっちゅーの!」

「ご主人様は、元人間だから、時間軸重要でしょ!
 この時代に、親も兄弟も生きてませんし!」

「だけれども、先祖は居るかもしれないだろ!」

「誰が、先祖か分かるんですか?」

「それは、知らんけど……」

「だったら、二人で仕事しましょ!
 ガブリエル様に、直接頼まれたのって、ご主人様なんですから!」

「それはそうだけど……」

「この話、もう、この辺でいいですか?
  それより、もう時間が無いですよ! 期限は、3ヶ月後の蛤御門の変までと、僕は見てるんで!」

 シロは、不毛な話に飽きたのか、話を変える。

「だな。蛤御門の変が終わった後だと、京都には、めっきり長州藩士が居なくなる。
 それは、勇者候補の人斬りが、京都に居なくなる事を意味する。
 この時代、新撰組とやり合ってたのも、殆ど長州藩士だし。勤皇志士が居なければ、勇者候補を探すのも、滅茶苦茶難しくなっちゃうからな……」

 セドリックは、誰かに説明してるかのように話す。

「で、これからの作戦はどうしますか?」

「そりゃあ、京都の見廻りだろ!」

「京都と言っても、とても広いですよ!」

「まず、京都の長州藩邸、薩摩藩邸、土佐藩邸、新撰組詰所は、必ず監視しなくちゃならんな!
 各藩の人斬りとか、出入りしてるかもしれんし!
 人斬り集団の新撰組の中にも、勇者候補が居るかもしれんしな!」

「了解です! そしたら、監視用の蜘蛛型魔道具を放っておきますね!」

「覗きとかに、使える奴な!」

「ですね! 超高画質で録画できる魔道具です!
 そして、他は、どうしましょう?」

 シロは、次の一手を聞いてくる。

「やはり、辻斬りが行われるのは夜だろ!
 早速、今日から、夜の京都の見廻りをするぞ!」

「辻斬りって、僕達は、殺人鬼を探してる訳では無いですよ!
 あくまで勇者候補ですから、品行方正な人物が良いと思います!」

「品行方正って、人斬りに、品行方正な奴って居るのかよ?」

「それを探すのが、今回のミッションじゃないですか!」

 無駄にイケメンのセドリックは、シロに指摘されて、改めて、今回のミッションの大変さに、気付いたのだった。
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