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100. ゲスい妖精
しおりを挟む次の日、早速、『犬の肉球』の面々は、ワッシーと、ワシ子に乗って、ムササビ自治国家に向かった。
行きは3日間掛かったが、帰りは僅か半日。
まあ、シャンティーが、素早さ6倍のエンチャンター掛けたからだけど。
バテそうになっても、回復魔法で無理矢理復活させて、休み無しでムササビ自治国家に到着した。
ワッシーとワシ子は、ゾーンに突入してしまっているのか、目がギンギン。
ワッシーのナニもギンギンになってたりもする。後は、若い男女?雄雌に任せて放置。
多分、子供には見せれない、自主規制行為を行うに違いない。動物のナニは、もしかしたら自然な営みなので、自主規制しなくてもいいかもしれないけど。
まあ、それは置いといても、エンチャンター6倍の反動は必ず来る。
もう、今の段階で明日は体中筋肉痛だと思うが、今から行うピストン運動も、エンチャンター6倍の効果で行ってしまうであろうから、腰を痛めないか今から心配である。
てな感じで、興奮気味のワッシーとワシ子を防音設備が整った厩舎に預けて、塩太郎は、先頭をフワフワ飛ぶシャンティーに話しかける。
「で、剣聖ハラ・クダシは、何処にいるんだよ?」
「そんなに焦んなくても大丈夫だから。取り敢えず、『鷹の爪』が、今、どこのダンジョンに居るか確認する為に、冒険者ギルド本部に行くわよ!」
「今から、アポイント取るのかよ!」
「五月蝿いわね! 私だって、『鷹の爪』の現在の動向なんて知らないわよ!
エリスポーションの販売だって、郵送だったし、そもそも350年間、殆ど、南の大陸に訪れてなかったんだから、南の大陸の最新の情報なんて、アンタの情報量と、殆ど、変わらないの!」
シャンティーは、塩太郎の突っ込みが、あまりにウザかったのか、逆ギレする。
「それなのに、自信満々に段取り組むとか言ってたのかよ……」
「『鷹の爪』との付き合いは、350年以上前から。その間、積み上げてきた信頼関係があるのよ!
『鷹の爪』は、代々ハラダ家か、ハラ家の者が団長をやっている、南の大陸で一番の、未攻略ダンジョン攻略冒険者パーティー。
ハラダ家やハラ家のような、南の大陸出身者だけでなく、この世界から腕の覚えがある実力者が集まる冒険者パーティーなの!
ハッキリ行って、未攻略ダンジョン攻略ジャンキーの集まりね!
そんな事もあり、『鷹の爪』のメンバーは、滅茶苦茶死ぬのね!
だから、エリスポーションを製造できた私達『犬の肉球』と提携してるの!」
「エリクサーだったら、ガブリエルが作る姫ポーションもあるだろ?
『漆黒の森』の関係者のハラダ家やハラ家の者が団長なら、姫ポーションを安く仕入れられるんじゃないのか?」
塩太郎は、疑問を口にする。
「フフフフフ。350年以上前、まだガブリエルが生まれる前からの付き合いだからに決まってんでしょ!
その時に、たくさんの一定量を収める代わりに、市場で売られてる2倍で売る契約をしたのよ!
ほら、侍って、律儀な所があるでしょ?
それを、『鷹の爪』の代々の団長達は、律儀に守ってるという訳!」
シャンティーが、嬉しそうにカラクリを披露する。
「お前、酷い奴だな……」
「ん? 契約を守るのは当然の事でしょ?
まあ、何度か、ガブリエルが、安く姫ポーションを融通するという話が出てたみたいだけど、『犬の肉球』との契約が有るのでと、頑なに固辞したみたいね!」
シャンティーは、当然とばかりに、自分自身に頷いている。
「薩摩っぽの癖して、侍らしい所もあるんだな……」
塩太郎は、ちょっとだけ、薩摩の奴らを見直した。
塩太郎自身も、薩摩の奴らが、上の命令で動いていたということには気付いているのだ。
桜田門外の変で、水戸藩士に混じって1人だけ薩摩藩士がいた事や、生麦事件を起こしてる事から見ても、確かに最初は薩摩藩も、尊王攘夷寄りだった。
まあ、寺田屋事件でも分かる通り、尊王攘夷と公武合体で揺れていたのも分かるんだけど。
しかし、薩英戦争を経て、完全にヒヨってしまったのだ。
朝廷から、英国人をたくさん殺したと、攘夷実行を称えて褒賞まで貰ったにも関わらず。
蛤御門の変では、完全に幕府側についた……。
「フフフフフ。まあ、商売をする上で、侍ほど楽な相手はいないわね!
あの人種は、糞真面目な奴らばかりだからね!」
シャンティーは、腹黒の二つ名に似つかわしい、ゲスい笑いをする。
「俺も、侍なんだけど……」
「はっ? アンタの代わりに、ハラダ家の奴らの財政を圧迫してあげてるんだから、いいじゃないの!
逆に、感謝して欲しいくらいだわ!」
シャンティーは、塩太郎の周りをフワフワ飛びながら、エッヘンと無い胸を張ったのだった。
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