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31. 既成事実

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 夕方に家につくと、また、エドソンとエリザベスが廊下で待っていた。

「これ、良かったら使って!」

 ヨナンは、エドソンに100万マーブル渡す。

「おい! こんな大金いいのかよ!」

「今日は、コナンとシスが俺の代わりに、全部、公爵芋を売ってくれたんだからいいんだよ」

「お前って奴は、なんて孝行息子なんだよ!」

 エドソンは、泣きながらヨナンに抱きついてくる。

「シス、どうだった?」

 何故か、そんなエドソンを置いといて、エリザベスはシスと話し合っている。

「うん。今日は、作戦通りに添い寝してみた!」

「これは、もう既成事実作りは成功したわね!」

「もう、これでお兄ちゃんと結婚できる?」

「バッチリよ!」

 なんだこの親子……。しっかり俺にも聞こえてるんだけど……もう、ヨナンは遠い目をして現実逃避するしか無かったのだった。

 ーーー

 ヨナンは、家に帰っても忙しい。
 急ピッチで、実家の前にデッカイ豪邸を作っているのだ。

 どうやら、エリザベスは金さえ渡しとけば、機嫌がいいし。家なんか作ってやったら、もう、ヨナンのグラスホッパー家での地位は安泰なのである。
 まあ、そんな話は建前で、本当は、世話になってるエドソンに、立派な家を建ててやりたかったから。
 だって、材料費タダだし、建築費もヨナンさえ頑張れば全てタダなのだ。
 そう。ヨナンさえ頑張りさえすれば。

『ご主人様、本当に休まなくて大丈夫なんですか?』

「俺は大丈夫だ! この温泉さえ作ってしまえば!」

 ヨナンは、実家の大豪邸を建てた後、昨日掘り当てた温泉用のスパ施設を作っている。
 そう、将来、グラスホッパー領を農業大国にするだけでなく、温泉大国にもしたいのである。まあ、国じゃなく、領なんだけど。

「おっしゃー!ついに作ってやったぞ!」

 ヨナンが、温泉工事すること1時間。
 巨大な混浴露天風呂と、巨大混浴大浴場、巨大男子風呂に、巨大女子風呂、200人同時に使える岩盤浴に、水風呂と、電気風呂、マッサージ風呂に、寝風呂に、足湯、サウナに、ボーリング場に、バッテングセンターに、ゴルフの打ちっ放し、リクリエーション施設に、食い処まで作ってやったのだ。

『ご主人様……相変わらず滅茶苦茶ですね……』

「ああ。俺、今日とても頑張ったから、今から風呂入る」

『ですけど、こんな巨大施設を運営するには、人を雇わないといけないんじゃないんですか?』

「人ったって、このグラスホッパー領に、人なんていねーだろ!」

『ですね……グラスホッパー領の総人口って、50人程しか居ませんもんね……』

「先は長いな……」

「ですね……」

 ヨナンは、風呂から上がると、また、寝てるコナンとシスを拉致して、カナワン城塞都市に向かったのだった。

 ーーー

「コナン兄ちゃん! 公爵芋、全部売れたよ!」

 今日も、前回同様、コナンが起こしてくれる。

「お兄ちゃん、おはよう」

「て? 何で服着てねーんだよ!」

 ヨナンは、何故か、裸でヨナンの横で添い寝してるシスに気付き、飛び起きる。

「お母さんが、そうしろって……」

「お母さんがそうしろって言ったとしたとしても、嫁入り前の女の子がそんな事しちゃいけません!」

「お兄ちゃん、私の事嫌いなの?」

「妹として好きだけど、それだけだ!」

 ヨナンは、シスを突き離す。ここでしっかり言っとかないとエスカレートしそうだし。

「酷い! 私を傷ものにしといて!」

「傷ものって、俺、何もしてないだろ!」

「お兄ちゃん、私のオッ〇イ触ったよ?」

 シスが、いきなりトンデモナイ事を言ってきた。

「触ってません!」

「触ったもん!」

「鑑定スキル、俺、シスのオっパイなんて触ってないよな?」

『触りましたね。シスちゃんが、自分でご主人様の手を自分の胸に持っていって触らせていました』

「お前、何、黙って見てるんだよ!」

『僕、鑑定スキルですから、体が有りませんし、シスちゃんの暴挙を止める手立てがありませんから……』

「俺に声掛けて起こすとか、何だって出来るだろうがよ!」

 ヨナンは、やれる事をやらなかった鑑定スキルに文句を言う。

『僕は、どちらかというとシスちゃんを応援してる立場なんで……』

「何だそれ?お前、俺のスキルじゃねーのかよ!」

『アスカのようなアバズレにご主人様を取られるのは嫌ですけど、シスちゃんなら可愛いし良いかなと……』

 なんか、鑑定スキルがおかしな事を言い出した。

「何なんだよ! お前は、いつでも俺の味方じゃなかったのかよ!」

『僕は、ご主人様の為を思って行動してますので、いまの段階では、結婚相手としてはシスちゃんが、ご主人様の一番理想の相手なんです! 現在、ご主人様はシスちゃんのお父様とお母様とも上手くやっていますしね!』

「シスちゃんのお父様とお母様って、今でもその2人は、俺の親だっちゅーの!」

 ヨナンは、訳の分からない事を言い続ける鑑定スキルに言い返す。

「ヨナン兄ちゃん、もう諦めて、シスと結婚したら?
 俺から見ても、うちの母ちゃんみたいに、将来美人になると思うけど?」

「コナン……お前まで、俺を裏切るのかよ!」

「裏切ってないって、俺もヨナン兄ちゃん好きだから、俺が女だったら、俺もヨナン兄ちゃんと結婚したいし!」

「お前……そういう趣味だったのかよ?」

 ヨナンは、流石に引く。まさか男である弟に、そんな目で見られていたとは思わなかったから。

「違うって、ヨナン兄ちゃんって、家事も上手いし、家とか何でも手作りしちゃうし、お金を稼ぐのも上手いでしょ!
 そんな人、世の中そうそう居ないから、めちゃくちゃ優良物件だもん!
 うちは、特に貧乏だったから、お金を稼げる兄ちゃんが凄く魅力的に見えるんだよ!」

「所詮、お前らも、金なのか……」

 どうやら、コナンは、しっかりと、金にがめついエリザベスの血を引き継いでいるようだ。

「だから、違うって! ヨナン兄ちゃんがお金稼ぐようになる前から、別に嫌いじゃなかったし!」

「でも、金は好きなんだろ?俺と比べてどっちが好きなんだよ!」

「えっ? どうだろう?お金7で、ヨナン兄ちゃんが3かな?」

「やっぱ、金の方が好きなんじゃねーかよ!」

 ヨナンは、とてもショックを受けてしまう。

「だから、それはウチが貧乏だったからって言ってんでしょ!」

 コナンが、全てを貧乏で片付けようとする。

「お兄ちゃん。私はお兄ちゃん6で、お金4だから」

 シスがまた、裸のままで抱きついてくる。

『良かったですね。シスちゃんは、お金より、ご主人様の方が好きみたいですよ!』

「6対4って、普通、8対2ぐらいじゃないのかよ!」

『まあ、お金もご主人様が生み出すと考えれば、10割ご主人様の事が好きだとも考えられますので、別にその辺の事は気にしないくても良いんじゃないですか?』

「まあ、そんな考え方もあるかな……て、違うから!」

 ヨナンは、危うく鑑定スキルの口車に乗る処だったが、なんとか正気を取り戻す事に成功した。
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