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47. カレン・イーグル

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「アナタ! 絶対に氷の微笑の弱みを握って、自分の騎士にしたんでしょ!
 じゃなければ、孤高なる氷の微笑が、アンタなんかの騎士になる筈ないわ!」

 カレン・イーグルは、馬車から下りるなり、イキナリ、ヨナンに因縁を付ける。

「何なんだ? 今まで大人しかったのに?」

 ヨナンとエリスの隣で座ってる間は、借りてきた猫みたいだったのに、降りると突然、豹変して因縁をつけてきた。

『ご主人様、カレンさんは、エリスさんのファンなんじゃないですか?』

「じゃあ、エリスに頼んだら分かってくれるかな?」

『だそうですよ。エリスさん?』

「カレンさん……私のファンなのは嬉しいですが、今は、ヨナン様の騎士なので、あまりヨナン様を侮辱なさるのは、例えエリザベスの姪っ子さんでも、怒りますよ」

 エリスは、クールビューティーのいつものトーンで、カレンを嗜める。

 だが、それは逆効果。

「剣を取りなさい!アナタを倒して、お姉様の目を覚まして差し上げるんだから!」

 カレンは逆ギレして、ヨナンに剣を抜く。

『ご主人様。この女、脳筋ですよ』

「剣で勝負って、剣術Lv.2の奴が普通言うか? どう考えても、普通、誰も勝てねーよ!
 しかも、ユニークスキルが、エリザベスと同じ身体強化Lv.3だぜ?どう考えても人間凶器だろ!  エリザベスって、ガタイの良い男のパンチを素手で受止め握り潰し、相手の手を粉砕骨折させる女だぜ!」

『そうですよね! しかもユニークスキルに素早さLv.1とかいうのもありましたよ!
 ゴリラ並のパワーで、しかも剣術Lv.2で、素早いって、もう反則じゃないですか!』

「エッ……私って、ユニークスキルが、身体強化Lv.3で、素早さがLv.1なの?」

 なんか、カレンが自分のユニークスキルを、初めて知って驚いている。

「心当たり有るだろうがよ!」

「そうね。そうだとしても、エリス様を蹂躙するのは、絶対に許せないわ!」

「だから、蹂躙してねーて!」

 どうやら、ヨナンが何を言っても聞き入られないようだ。脳筋だし。

「兎に角、剣を抜きなさい。私がどれだけ強かったとしても、アナタの性根を叩き直す未来は変わらないんだから!」

 カレンは、完全に開き直ってヨナンに言い放つ。

「しかしな……」

「ヨナン君。戦ってあげればいいじゃない?彼女みたいなタイプは、拳でしか語り合えないタイプだから」

 静観してみてた、エリザベスが口を開く。

「確かに、若い時のエリザベスも、何でも拳で語り合ってた」

 何故か、クールビューティーのエリスも同意する。

「血筋かよ!」

『エリザベスさんも、脳筋だったみたいですよ!』

「エリザベス叔母様も、そう言ってるんだから、早く剣を抜きなさいよ!」

 カレンは、ヤル気満々で挑発してくる。
 まさか、自分が負けるとは微塵も思っていない。

「どうするよ?やってもいいけど、木刀で大丈夫か?」

 ヨナンは、鑑定スキルに確認する。

『駄目ですね。攻撃力が強すぎです』

「なら、この小枝は?」

 ヨナンは、そこら辺に落ちてた小枝を拾う。

『う~ん……ギリギリ大丈夫かな……』

「じゃあ、これで行くぞ!」

『多分、大丈夫です。どうやら、回復魔法が使える人も待機してるみたいですから』

 てな訳で、ヨナンは、その辺に落ちてた小枝を構えて、カレンに相対する。

「あの……アナタ、私を舐めてるのかしら……」

「全く、舐めてない」

 ヨナンは、真剣な顔をして答える。

「いや、舐めてるわ。私を、とっても舐めてる。
 カララム王国学園最強の剣鬼の二つ名を持つ、この私に、その辺に落ちてた小枝で、勝負って……私、こんなに舐められた事ないんだけど……」

「別に、舐めてねーし! どっちかというと真剣だし!」

「やっぱり、舐めてるじゃない! 私は、歳下に舐められた事なんか一度もないの!
 逆に、舐めてる大人を、ギッタギタにやっつける役回りなのよ!」

「あっそう」

 ヨナンは、短く答える。

「何、その言い方!」

「だから、お前が死なないように上手く手加減しなきゃいけないから、メッチャ集中してるって言ってんだろ!」

「クッソ! 頭来た! こっちも手加減してあげようと思ってたけど、真っ二つに斬りさいて上げるわよ!」

 カレンは、そう言うと、激昂して真正面から襲い掛かってきた。

 しかし、

「素早さLv.1で、この程度かよ?」

『ご主人様は、その落ちてた小枝を最大限に使いこなしてますから。その小枝の隠れスキル素早さLv.3が、発揮されちゃってるようです!』

「嘘だろ?」

『本当ですって! ほら、もうすぐ、カレンさんの剣が額にヒットしそうですよ!』

「う~ん……女を攻撃するのは、気が引けるな……」

『ご主人様! もう、当たりますって! その女、腐っても剣術Lv.2なんですよ!』

 ヨナンは、ギリギリギリの所で、ヒョイと避け、そして、右足を出し、カレンの足に掛ける。

 そして、ヒョイっと、小枝をその辺に捨てると、スローモーションで流れていた時間が元に戻り、

 ズダダダダダダーーン!

 カレンは、盛大に一回転して転び、スカートの中身が丸出しになってしまった。

『ご主人様……』

「ああ……やっちまったな……」

「なっ!?」

 カレンは、直ぐに立ち上がり。顔を真っ赤にして、その場から逃げ去ってしまった。

「フフフフ。ヨナン君。女の子に恥をかかせたら、後で怖いわよ-!」

 エリザベスは、人事のように笑っている。

「ヨナン。お前、後で謝っとけよ!」

 何故かエドソンは、サムズアップしてウインクする。

「まあ、主様の実力なら、当然の結果ですね」

 エリスは相変わらず、何事でないようにクールビューティー。

「ガッハッハッハッ! いい酒の肴になったわい!」

 なんか知らんが、ゴンザレスには酒の肴になったようだ。

「あの女、剣術スキルLv.2のジミー兄ちゃんより強いんだろ? それを軽く倒すって、凄いぜ! ヨナン兄ちゃん!」

「お兄ちゃん、カッコイイ!」

 コナンとシスのヨナンへの尊敬は、最早、極限にまで達しまっている。

『ご主人様、なんか波乱が起きそうな予感がしますね!』

「気のせいだろ?」

 ヨナンは、平静を装い、イーグル辺境伯が待ってるであろう城の中へ、エドソン達の後を着いていった。

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