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65. 決闘
しおりを挟む「お……お母さんが若返ってる……」
アン姉ちゃんが、エリザベスを見て放心状態。
というか、本当に、カレンとアン姉ちゃんはつるんで行動してるようだ。
「ヨナンが倒したドラゴン肉のお陰よ!」
エリザベスの発言で、カララム冒険者ギルドが静まり返る。
「ドラゴン肉って、最近、貴族の間で話題持ち切りのドラゴン肉の事か?
なんでも、最近、イーグル辺境伯領の大森林で、レッドドラゴンを倒した奴がいるって、まさか、エリザベスの子供だったのかよ!」
「本当に、セント兄や、カレン先輩が言ってた事って、本当だったの?
あの虚弱体質のヨナンが、レッドドラゴンを倒したなんて、未だに信じられないわ……」
虚弱体質って……エリザベスと一緒で、人間凶器のアン姉ちゃんに言われたくない。
というか、未だに、自分が普通じゃないって気付いてないのか?
同じ、身体強化Lv.3を持ってるカレンとつるんでる自体で気付けないか……。
まあ、周りが凄過ぎると、自分は至って普通だと思っちゃうんだよね。どこぞのライトノベルの主人公みたいに。
因みに、アン姉ちゃんのステータスは、こんな感じ。
鑑定スキルが、気を利かせて、アンのステータスをヨナンに見せてくれている。
名前: アン・グラスホッパー
年齢: 14歳
称号: 剣姫
スキル: 剣術Lv.1
ユニークスキル: 身体強化Lv.3、攻撃力Lv.2、風魔法Lv.2
力: 550
HP: 650
MP: 770
完全に、エドソンとエリザベスの良いとこ取りで、ポテンシャルが物凄い。
もしかしたら、グラスホッパー家最強の子供は、アン姉ちゃんかもしれない。
何か知らんけど、剣姫の称号まで持ってるし。
アン姉ちゃんは、ヨナンに近づいてきて、体の至る所を揉み揉み触ってくる。
相変わらず、バカ力。
「アン姉ちゃん! 痛いって!」
ヨナンは、必死に逃げようと抵抗するが、逃げる事など出来ない。
だって、相手は、ユニークスキル身体強化Lv.3を持つ化物女なのだから。
「やっぱりいつものヨナンじゃない?本当に、この虚弱体質のヨナンがレッドドラゴンを倒したっていうの?」
アン姉ちゃんは、全く、ヨナンがレッドドラゴンを倒したと信じない。
まあ、何かの道具を手に持たないヨナンは、普通の凡人なのでしょうがないんだけど。
「ヨナンが、レッドドラゴンを倒したのは本当よ!
私が、この目で見たんだから!」
カレンが、しゃしゃり出て来て、何故かエッヘンとする。
ヨナンの偉業は、婚約者である自分の偉業だとでも思ってるようだ。
「あんな子供が、嘘だろ?」
「どうせ、ワイバーンか何かを倒して、イキッてるだけじゃねーか?」
弱っちそうなヨナンを見て、カララム冒険者ギルドに居た冒険者達も、ヨナンがレッドドラゴンを倒したなんて、誰も信じてなさそうである。
まだ、エリザベスが倒したと言った方が、現実味が有るのは確かだから、しょうがないんだけど。
「ヨナンは、本当に強いんだから!」
だけれども、カレンだけは、ヨナンが弱いと思われてる事が許せないらしく、プンプンに怒っている。
「あの……すいません。折角、冒険者ギルドに来たんで、冒険者登録しておきたいんですけど?」
ヨナンは、カレンを無視してマイペース。
別に、誰かに弱いと思われてても減るもんじゃないし、実際、何も持ってなかったら滅茶苦茶弱いし。
実際、丸腰なら、ここに居る誰と戦っても負けると思うしね。
そう、ヨナンは、分をわきまえているのだ。
「ヨナン! 悔しくないの! あんな事言われて!」
「別に?俺、どちらかというと生産職だし、そもそも強さなんて求めてないしな」
そう、そもそもヨナンは、戦闘系のスキルなど持ってないのだ。
ヨナンの今のステータスを見ても、誰も強いとは思わない筈だし。
取り敢えず、ヨナンは、受け付けに頼んで、とっとと冒険者登録をしてしまう事とした。
「ここの石版に手をかざして下さい。一応、年齢は関係無いのですけど、冒険者はある程度の強さだけは求められるので、その確認になります」
ヨナンは、受け付け嬢に言われて、石版に右手をかざす。
名前: ヨナン・グラスホッパー
称号: ♡♡♂
スキル: 大工スキル、鑑定スキルLv.3
ユニークスキル: ×××
力: 50
HP: 100
MP: 80
「これは、冒険者登録できませんね。力50以下の方は冒険者登録出来ない決まりになっていますから」
「嘘だろ! 50未満じゃなくて?」
「はい。この冒険者ガイドにも、しっかり記載されています。力50以下と」
「な……なんですって! レッドドラゴンも倒しちゃうヨナンが、力50だなんて!」
なんか、カレンの方がビックリ仰天驚いている。
「これは、流石に、冒険者登録できねーわな!
ミスミス、弱っちい奴を冒険者にしちまって、死なれても後味わりーしよ!
悪く思うなよ! 冒険者ギルドも、未来有る若者を簡単に死なせたくねーだけなんだからな!」
先程、エリザベスにぶっ飛ばされたカララム冒険者ギルド長が、いつの間にか復活してヨナンに告げる。
どうやら、マッコイギルド長は、強さ最強じゃなくて、頑丈さ最強なのかもしれない。
「ヤッパリ、レッドドラゴンを倒したなんて嘘だったんだな。力50の奴が、レッドドラゴンを倒せる訳ないしな!」
「嘘つき野郎が、家に帰って、ママのオッパイでも吸ってろよ!」
一斉に、カララムの冒険者が陰口を言い出す。
「何かの間違いよ! 本当に、ヨナンは物凄く強いんだから!」
カレンは必死になって、カララムの冒険者達に訴える。
「じゃあ、弱くなければ、冒険者になれるのよね?
そしたら、このカララム冒険者ギルド自称最強のマッコイギルド長に勝てれば、ヨナンの冒険者登録は、なんら問題無い事になるわよね!」
エリザベスは、舐めた態度で、マッコイ冒険者ギルド長に聞く。
「オイ! エリザベス舐めんなよ。少しばかり、俺より強いからって調子に乗るな!」
なんか、マッコイギルド長が青筋立てて怒っている。
「だったら、ヨナンと勝負しなさいよ!
まさか、力50のヨナンが怖くて戦えませんとか、言わないわよね!」
エリザベスは、更に挑発する。
「誰が怖いって?ただ、未来ある若者に怪我させたくねーだけだよ!
こちとら、手加減が苦手で、思わず殺しちまわないか心配なだけだ!」
「そんな心配必要ないわ! ヨナン君が勝つに決まってるんですもん!」
エリザベスは、自信満々に言い放つ。
「なら、やってやんよ! その坊主が死んじまっても、後で文句言うんじゃねーぞ!」
「お母さん! 駄目だよ! マッコイギルド長は、私より、ほんのちょっとだけ強いのよ!
そんな、私より、ほんのちょっとだけ強いマッコイギルド長なんかと戦ったら、ヨナンが死んでしまうわ!」
アン姉ちゃんが、必死に止めようとする。
「アン。おめえ……ほんのちょっと、ほんのちょっとって、舐めてんのか?」
なんか、アン姉ちゃんが、余計火に油を注いでるような気がする。
『ご主人様、なんか盛り上がってますね』
なんか、鑑定スキルが面白がっている。
「はぁ~仕方が無いな。収拾つかなそうだから、戦いますよ!」
ヨナンは、仕方が無いので、ゴンザレスに作ってもらった木刀を魔法の鞄から取り出す。
『ご主人様! それは駄目ですよ!過剰戦力で相手を殺しちゃいますよ!』
「じゃあ、こんなもんか?」
ヨナンは、大森林で拾った小枝に変える。
『そうですね。それが適正な感じがします!』
ヨナンが、木刀から小枝に変える所を目撃してしまったマッコイギルド長は、
「ん?お前、舐めてんのか? 俺を小枝で倒すと?」
真顔で、ヨナンに質問してくる。
「別に舐めてませんよ。本気でやらないと、思わずアナタを殺しちゃうかもしれませんから」
ヨナンは、本気に心配して、カララム冒険者ギルド長に言っているのだ。
「ヤッパリ、舐めてんじゃねーかよ!力50の分際で!」
マッコイギルド長は、完全に激怒する。
「無駄口はいいから、早く掛かってきて下さいよ! とっとと冒険者登録したいんで!」
ヨナンは、面倒臭いので挑発する。
もう、とっとと帰りたいし。
「お前が悪いんだからな。俺は舐められるのがすっごく嫌いなんだよ」
マッコイギルド長は、するりと抜き身の剣を抜く。
「マッコイギルド長、力50の奴に本気だぜ!」
周りの冒険者達は、マッコイギルド長が剣を抜いて盛り上がる。
「ヨナン! もう止めて! お姉ちゃんも一緒に、マッコイギルド長に謝ってあげるから!
お母さんも、止めてよね!」
アン姉ちゃんは、必死になってヨナンとマッコイギルド長の戦いを止めようとする。
しかし、
「ヨナン君、遠慮なくやってしまいなさい!」
「ヨナン! ケッチョンケッチョンにやっつけて、ヨナンの本当の実力を、皆に見せつけるのよ!」
エリザベスとカレンは、ノリノリである。
「舐めやがって!」
マッコイギルド長は、相当、エリザベスとカレンに頭にきたのか、怒りに任せて、イキナリ、ヨナンに斬りかかる。
すると、いつものように実力差があったのか、マッコイギルド長の動きが超スローモーションになる。
「これって、小枝でも相当実力差があるって事だよな……」
『ご主人様が、確実に勝てるレベルで調整してるので』
ヨナンの質問に、鑑定スキルが答える。
「過剰だっちゅーの!」
『もう、ご主人様は死に戻りできないので、過剰にもなりますよ!』
鑑定スキルが言い返してくる。
「まあ、いいや。で、今回はどうする?また、カレンの時みたいに、足でも掛けとくか?」
『それは不味いんじゃないんですか?たまたま運良く勝ったと思われてしまいますよ!
今回は、冒険者登録の為に戦ってるんですから』
「じゃあ、ちょっと怪我しないように、腕とかにチョンと当てとくか」
ヨナンは、スローモーションに流れる中を普通に歩き、そして、マッコイギルド長の腕を、チョンと小枝で叩く。
そして、ずっと待ってるのが面倒臭いので、小枝を魔法の鞄にしまう。
すると、時間のスピードが元に戻り、
「グキャーー!!」
マッコイギルド長が、大袈裟に腕を押えて叫び出す。
「な……なんだったんだ……今の動き……」
「全く、見えんかったぞ……」
どうやら、スローモーションの最中に、ヨナンが普通に歩いた動きが、超絶早かったらしい。
「ヨナン……アナタ……一体……」
アン姉ちゃんも、驚愕している
「どうよ! これが、私のフィアンセ、ヨナンの実力なんだから!」
カレンは、鼻高々に、未成熟の胸を張る。
「じゃあ、自称カララム冒険者ギルド最強のマッコイギルド長を倒したんだから、ヨナン君の冒険者登録は、全く問題無しって事で!
これで、ヨナン君を冒険者にしなかったら、カララム冒険者ギルドの全員が、力50以下の坊やより、弱いって事になるんだから!」
エリザベスは、うちの子どうだとばかりに、腕を押えて悶絶してる、マッコイギルド長に言い放った。
応援ありがとうございます!
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