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第2章 王都
第031話
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月日は流れ2ヶ月後。明日は学園の入寮日となっている。
学会を終えた翌日から俺は大忙しであった。ラティスさんによる『戦闘訓練』の講義に、ギルドでの依頼を受ける日々。依頼は殆ど討伐系だったが、何故かパートナーがリンドールさんであった。
『くふふふふふ。アルス、僕が戦闘のイロハを教えてあげるからね?』
全力でお断りだったのだが、ジルバさんの好意であったため無下にはできず、不安を感じながらも了承した。
討伐依頼はほぼ指導の時間であった。魔物との戦いをリンドールさんが手本を見せてからそれを真似する。何故か魔物と共にリンドールさんもオレを襲って来て単体では弱いはずの魔物がかなり手強く感じた。
ラティスさんの講義も実技があり、リンドールさん、ラティスさんを相手に模擬戦を行なっていた。ラティスさんは執事なはずだが、動きは洗練されておりこれまた『あい君』の出番となった。
後半となると、模擬戦が本気となり興奮したリンドールさんがオレとの死合を求めてきた。『殺さない』というふざけた条件下の元でリンドールさんとラティスさんとの死合を行なった。結果は48勝7敗。最初は負けていたが、『あい君』の成長速度は尋常では無く、中盤からは勝ち始め、終盤になるとリンドールさんが教えを請うぐらいであった。
オレ達の模擬戦はジルバさん達の良い趣味となり、開催時刻になると人が集まった。ドーラさんはギルド会合が終わったので帰る予定だったのだが、オレの行方が気になるらしく、入寮日までジルバさんの屋敷で過ごしていた。
……ドーラさんがカイジャに帰ったらミリィに滅茶苦茶怒られそうな気がする。だって、仕事サボっているのと同義だもんね。
オレ達の模擬戦を鑑賞しているドーラさんやジルバさんからもアドバイスを貰った。両者とも系統が違うのでとても勉強になった。『あい君』が頑張ってくれるので、このまま行けば更に最強になるんじゃないだろうか?リンドールさん達との死合で経験値は稼いでいるからね。
ポイントも地道に貯まり、そこそこの金も手に入った。暇な時間はラティスさんとタイリークを歩き回ったり、ジルバさんの屋敷にある書庫の本を読んだりした。できる限りの情報を得て、明日を迎える事となった。
「お疲れ様でした。今日はこれで終わりにしましょう。リンドール様も武器をしまって下さい」
ラティスさんの声により、リンドールさんは武器をしまう。顔は晴れ晴れとしていて、リンドールさん的にも満足の日々だっただろう。
「楽しかったよアルス。君が明日から居ないとなると、僕は寂しくてどうにかなりそうだよ」
「……1人で依頼を受ければいいじゃないですか」
「あんな無益な殺生はゴメンだね。一方的に攻撃して終わりなんて、そんなつまらない戦いは萎えてしまうよ」
「ラティスさんと戦えばどうです?」
「くふふふふ。ラティスなら良い戦いが出来そうだ。……けど、僕はジルバ様に仕える仲間とは戦いたくないんだよ。僕にとって大事な仲間であり、家族でもあるのだから。家族に刃を向けるなど考えられないだろう?」
「………にしてはノリノリでラティスさんと戦ってましたよね?」
「あくまでも『模擬戦』だからね?お互いに本気で殺そうなどは思ってもいないさ」
『じゃあ俺を殺そうとしてたのはなんでですか?』という言葉を言いそうになったが、やめておく。…何となく答えはわかるからだ。
「アルス様、明日寮に運ぶ荷物は準備しておりますが、追加の物はございますか?」
「ありがとうございます。けど、追加の分は要らないです。この前買った皮袋に詰められますから」
「かしこまりました。……では、夕食のお時間となりましたらお呼びしますので、それまではごゆっくりとお過ごしください。風呂も溜めておりますので、どうぞご自由に」
そういうとラティスさんは屋敷へと戻っていった。残されたオレ達は風呂場へと直行する。
風呂は豪華な浴場となっており、使用人も使う風呂場だそうだ。客人専用の浴室もあるみたいで、ジルバさん専用のもあるそうだ。
「くふふふふ。アルスと一緒に風呂に入るのも最後になるのか…」
「しばらくは一緒に入れませんね。…ま、機会があればまた一緒に入りましょう」
「! くふふふふ。その時を楽しみにしとくよ」
正直、リンドールさんと一緒に風呂に入るのは貞操の危機を感じる。裸一貫になると、リンドールさんが俺の体を舐め回すように見るからだ。
『…良いカラダだ。あんなに跳躍したり回避しているのに無駄な筋肉が一切付いていない。……くふふふふ』
『お尻も小振りで引き締まっている。………アルス、良ければ背中を流そうか?』
などとリンドールさんは俺に語りかけてくるのでそれはもう恐怖であった。リラックスする場所のはずが、俺にとっては一番神経を使う場所で安らぐ暇はなかった。
風呂を出て、リンドールさんと別れてから部屋に戻る。ベッドにダイブし、天井を見つめる。この時が一番心が安らぐ時間だ。
「アルス様、夕食の準備が出来ました」
「はーい!」
明日から俺が居なくなるという事で、今日はいつも以上に豪華な夕食だった。ジルバさんが秘蔵の酒を開け、皆で楽しく過ごす。今日は使用人の人達も休めとジルバさんから言われ、仕事を終えた順に宴会へと流れてきた。最後の方で料理長とソルトさんが部屋へと料理を持ってきて全員集合となった。
ジルバさんは無礼講と称して、本当に分け隔てなく接した。普通、『無礼講』というのは罠だと思っていたが、ジルバさん達はその言葉通り使用人達と仲良く話し込んでいた。
宴会は夜遅くまで続き、俺がベッドに入ったのは明け方なのであった。
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月日は流れ2ヶ月後。明日は学園の入寮日となっている。
学会を終えた翌日から俺は大忙しであった。ラティスさんによる『戦闘訓練』の講義に、ギルドでの依頼を受ける日々。依頼は殆ど討伐系だったが、何故かパートナーがリンドールさんであった。
『くふふふふふ。アルス、僕が戦闘のイロハを教えてあげるからね?』
全力でお断りだったのだが、ジルバさんの好意であったため無下にはできず、不安を感じながらも了承した。
討伐依頼はほぼ指導の時間であった。魔物との戦いをリンドールさんが手本を見せてからそれを真似する。何故か魔物と共にリンドールさんもオレを襲って来て単体では弱いはずの魔物がかなり手強く感じた。
ラティスさんの講義も実技があり、リンドールさん、ラティスさんを相手に模擬戦を行なっていた。ラティスさんは執事なはずだが、動きは洗練されておりこれまた『あい君』の出番となった。
後半となると、模擬戦が本気となり興奮したリンドールさんがオレとの死合を求めてきた。『殺さない』というふざけた条件下の元でリンドールさんとラティスさんとの死合を行なった。結果は48勝7敗。最初は負けていたが、『あい君』の成長速度は尋常では無く、中盤からは勝ち始め、終盤になるとリンドールさんが教えを請うぐらいであった。
オレ達の模擬戦はジルバさん達の良い趣味となり、開催時刻になると人が集まった。ドーラさんはギルド会合が終わったので帰る予定だったのだが、オレの行方が気になるらしく、入寮日までジルバさんの屋敷で過ごしていた。
……ドーラさんがカイジャに帰ったらミリィに滅茶苦茶怒られそうな気がする。だって、仕事サボっているのと同義だもんね。
オレ達の模擬戦を鑑賞しているドーラさんやジルバさんからもアドバイスを貰った。両者とも系統が違うのでとても勉強になった。『あい君』が頑張ってくれるので、このまま行けば更に最強になるんじゃないだろうか?リンドールさん達との死合で経験値は稼いでいるからね。
ポイントも地道に貯まり、そこそこの金も手に入った。暇な時間はラティスさんとタイリークを歩き回ったり、ジルバさんの屋敷にある書庫の本を読んだりした。できる限りの情報を得て、明日を迎える事となった。
「お疲れ様でした。今日はこれで終わりにしましょう。リンドール様も武器をしまって下さい」
ラティスさんの声により、リンドールさんは武器をしまう。顔は晴れ晴れとしていて、リンドールさん的にも満足の日々だっただろう。
「楽しかったよアルス。君が明日から居ないとなると、僕は寂しくてどうにかなりそうだよ」
「……1人で依頼を受ければいいじゃないですか」
「あんな無益な殺生はゴメンだね。一方的に攻撃して終わりなんて、そんなつまらない戦いは萎えてしまうよ」
「ラティスさんと戦えばどうです?」
「くふふふふ。ラティスなら良い戦いが出来そうだ。……けど、僕はジルバ様に仕える仲間とは戦いたくないんだよ。僕にとって大事な仲間であり、家族でもあるのだから。家族に刃を向けるなど考えられないだろう?」
「………にしてはノリノリでラティスさんと戦ってましたよね?」
「あくまでも『模擬戦』だからね?お互いに本気で殺そうなどは思ってもいないさ」
『じゃあ俺を殺そうとしてたのはなんでですか?』という言葉を言いそうになったが、やめておく。…何となく答えはわかるからだ。
「アルス様、明日寮に運ぶ荷物は準備しておりますが、追加の物はございますか?」
「ありがとうございます。けど、追加の分は要らないです。この前買った皮袋に詰められますから」
「かしこまりました。……では、夕食のお時間となりましたらお呼びしますので、それまではごゆっくりとお過ごしください。風呂も溜めておりますので、どうぞご自由に」
そういうとラティスさんは屋敷へと戻っていった。残されたオレ達は風呂場へと直行する。
風呂は豪華な浴場となっており、使用人も使う風呂場だそうだ。客人専用の浴室もあるみたいで、ジルバさん専用のもあるそうだ。
「くふふふふ。アルスと一緒に風呂に入るのも最後になるのか…」
「しばらくは一緒に入れませんね。…ま、機会があればまた一緒に入りましょう」
「! くふふふふ。その時を楽しみにしとくよ」
正直、リンドールさんと一緒に風呂に入るのは貞操の危機を感じる。裸一貫になると、リンドールさんが俺の体を舐め回すように見るからだ。
『…良いカラダだ。あんなに跳躍したり回避しているのに無駄な筋肉が一切付いていない。……くふふふふ』
『お尻も小振りで引き締まっている。………アルス、良ければ背中を流そうか?』
などとリンドールさんは俺に語りかけてくるのでそれはもう恐怖であった。リラックスする場所のはずが、俺にとっては一番神経を使う場所で安らぐ暇はなかった。
風呂を出て、リンドールさんと別れてから部屋に戻る。ベッドにダイブし、天井を見つめる。この時が一番心が安らぐ時間だ。
「アルス様、夕食の準備が出来ました」
「はーい!」
明日から俺が居なくなるという事で、今日はいつも以上に豪華な夕食だった。ジルバさんが秘蔵の酒を開け、皆で楽しく過ごす。今日は使用人の人達も休めとジルバさんから言われ、仕事を終えた順に宴会へと流れてきた。最後の方で料理長とソルトさんが部屋へと料理を持ってきて全員集合となった。
ジルバさんは無礼講と称して、本当に分け隔てなく接した。普通、『無礼講』というのは罠だと思っていたが、ジルバさん達はその言葉通り使用人達と仲良く話し込んでいた。
宴会は夜遅くまで続き、俺がベッドに入ったのは明け方なのであった。
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