転生チートで夢生活

にがよもぎ

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第5章 王宮学園 -後期-

第148話

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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「今日も良い天気ー。俺仕事頑張っちゃうぞー」

長かった夏休み--正式には長期休暇なのだが、暑さ的に勝手に命名--も終わり、本日から授業が始まる。しかし、今年は例年より猛暑になるらしく、2日前に学園から『半袖』で登校するようにと連絡があった。ちなみに、教員は腕章さえ付ければ何でも良いとの事だった。

「マクネアさんも大変だなぁ。あれから1回も会ってないもんな」

シュピー共和国で『あい君』が暴走してくれた後、とマクネアさんと色々と話をした。俺にはよく分からないのだが、ヒルメと『あい君』は意気投合し、より念密な計画を立てた。そして、『シュピー共和国は全面的に協力する』という言質を貰った。

まぁ他にも色々と会話がのだが、『あい君』の妨害なのか俺は強制的に眠りにつかされ、目が覚めたら寮の自分の部屋にいたって訳だが……………なんでそんな事したんだろ。一応俺ご主人様だよ?

あ、そうそう。シュピーで新たに発見した事なんだが、俺と『あい君』はが出来るようになった。とはいっても業務的なものだけどね?俺の問い掛けにシンプルに答えるっていうモノだけど、俺としてはスゲー助かるモノになった。だって、判断しないといけない時に『あい君』が答えをくれるからね。

それを実感したのは寮に帰ってからミリィと会ってからだ。マクネアさんから呼び出され屋敷に向かうと、気まずそうな顔をしたマクネアさんと、明らかに般若顔になっているミリィがいた。

ミリィの長ったらしい尋問を要約すると『シュピー共和国に2人で行って、夜は一体何をしていたのか?』という事だった。何故ミリィが知っているのか疑問に思ったが、あの夜の出来事を話す訳にはいかなかった。マクネアさんも同じ様に言い淀んでいると、『あい君』が最もらしい言い訳を用意してくれた。

『シュピー共和国との友好を深める条約を新たに結んでいた。ただ、会談が外に漏れると厄介な為、魔水晶は預けなければならなかった』

という事を『あい君』が提示したので、そのままミリィへと伝えた。すると、マクネアさんもそれに話を合わせてくれたのか似たような話をミリィに聞かせていた。しかし、ミリィはそれだけで納得せず、執拗に夜の時間について聞いてきた。『何言ってんだコイツ?』と呆然としていると、何かに気付いたマクネアさんがミリィへと耳打ちをしていた。すると、『それは本当?神に誓って?』という謎ワードをミリィは口にし、『本当よ。そういう嘘は言わないわ?』とマクネアさんが返していた。

『何の話だ?』と疑問に思っていると、『あい君』が『女性同士の会話ですから』と答えてくれた。そこで『あい君』と会話が出来る事を実感したのだった。………けど、シュピーの話には答えてくれないんだよなぁ。シカトは心に響くって言われてるだルォォオ?!

とまぁ、こんな事があってから俺は残りの夏休みを『あい君』と共に会話しながら過ごした。アーサー達とも稽古したり依頼を受けたりして、開校日を迎えたのだった。

「何着るかなぁ。……あ、Tシャツでも創るか」

前世でよく着ていたTシャツを創造し、それと短パンを着る。……うん。家着スタイルだ。

「アルスさぁーーーーーん!!起きてますかぁぁぁぁ!!!」

「はぁーい。起きてるよー」

ドアが連打される音が聞こえ、必要な物を持ってから外へと出る。

「おはようエド」

「おはようございます!」

「ラフな服装って言ってたけど……こんな感じでも大丈夫かな?」

「………はい!大丈夫だと思いますよ!」

エドの前で一回転し、大丈夫だと確認する。…まぁエドの格好も似た様なもんだから大丈夫だろ。

「それにしても………エド。めっちゃ焼けたな」

エドを見ながら感想を口にする。健康的な日焼けをしており、太ももから焼けてない部分がチラリと見える。

「エヘヘー!先生と課外にでてましたからね!」

「先生?………ああ、フランツさんの事か」

「はい!……あっ!先生がアルスさんと会えなくて寂しがってましたよ?バドワール様と一緒に食事をしようって!」

「あー……そういや暇が出来たらって言われてたな……。すっかり忘れてたよ」

「来月には貴族会議ドゥーマがありますからねー。その時にでも行きましょうよ!」

「そうだな」

今一度忘れ物がないかをエドに見てもらってから校舎へと移動する。道中、アーサー達と会い、一緒に校舎の中へと入る。

「んじゃまた授業でな」

アーサー達と別れ、久し振りの非常勤室へと入る。俺の机の上には大量の書類と教科書が置かれていた。

「……何だ?」

机へと向かい、書類を一枚取り目を通す。

「………ああ。そういや俺の契約更新もあったな…」

この学園に来てから色々な事が起きてすっかり忘れていた。その書類には俺の評価が書かれており、下にはマクネアさんの名前と印が押されていた。

「おぉー………忘れてたけど皆学力上がったみたいだな」

契約更新の書類の下には生徒達の結果が書かれている紙があった。そこには前回の点数と今回の点数が比較されており、全員が点数を伸ばしていた。無謀な指導方法ではあったが、この結果であればやっと指導要綱に基づいて進める事が出来る。……まぁ俺が考える訳じゃ無いけどね。

「……しかし何でこんなに多いんだ?もしかして全生徒分あるのか?」

『別に見なくてもいいんだけどなー』と思いながら書類の山に手を伸ばすと、そこには予想外の事が書かれていた。

「………え?ナニコレ…」

「? どうかしたんですか?」

一枚の書類の内容を見て呆然としているとエドが話しかけてきた。俺の持っている紙を横から覗くと、エドは納得した表情で口を開く。

「ふんふん………。まぁそうなるよねぇー…」

「そうなるって?」

「アルスさんは非常勤だからねぇ。引き抜きがあったとしても可笑しくは無いよねぇ」

「…そんなモンなのか?」

「ここは貴族が通う学園だよ?引き抜きぐらい日常茶飯事だよ」

30cmぐらいの書類の山は全て『生徒達の親からの要望』であった。中身はどれも同じで、『ぜひ我が子供達の専属として』と書かれていた。

「…なんで専属なんだ?」

「この休暇中にアルスさんの評判を聞いたんじゃない?ほら、休暇中のクラブの内容とかさ」

「あー………それでって事か」

「まぁ非常勤だしね。給料は格段に跳ね上がると思うけど……どうするの?」

「どうするって………俺はここを続けるつもりだぞ?アーサーの稽古もあるしな」

「でも給料が天と地ほどあるけど……いいの?」

「俺は別に金に困ってないし、ここで働くのもジルバさんとの約束だからなぁ」

「……ふと思ったんだけど、アルスさんと繋がってる人って超有名人ばっかりだよね?」

「そうだなぁ。…俺は庶民なんだけどなー」

「しょみん?」

「ああ、平民って事。……なぁエド。この書類って捨てても大丈夫かな?」

「ダメだよ!ちゃんとお断りの返事をしなきゃ!」

「えっ?!……これ全部に?」

「そうだよ!そんな事したら今度は苦情が来るよ?」

「………………うわー…それは嫌だな。しゃーない、午前中に全部終わらせるか」

「頑張ってねアルスさん!……じゃ私は授業に行くねー!」

俺の肩を叩き、エドは部屋から出て行く。初日から事務仕事をするとは思わなかった俺は溜息をついた後、机に座ってから一枚一枚丁寧にお返事を書いていくのであった。

♢♦︎♢♦︎

「お、いたいた!おーい、アルス!飯食いに行こうぜ!」

「……あと少しで終わるんで、もうちょい待ってください」

「……何書いてんだ?」

集中してお返事を書いていると、ロニキスさんが部屋へと入ってきた。そして、俺の机に近寄り書類を手に取ると鼻で笑ってから口を開く。

「人気だなぁおい。……ま、アルスの事を知ってれば納得だがな」

「…すげー面倒ですよ」

「まぁこれも1つの評価だと思え。苦情じゃなかった事に感謝するんだな」

「……………っし!終わり!!」

最後の一枚を書き終え、背筋を伸ばす。懐中時計を見ると時刻は正午を過ぎていた。

「終わったのか?なら飯食いに行くぞ」

「ウス。……あ、これどこに出せば良いんですかね?」

「あぁん?……あぁ、あそこに箱があるだろ?アレに入れとけば大丈夫だ」

ロニキスさんが指差す箱に書き終えた書類を入れる。その箱には魔法陣が刻まれており、置いた瞬間に箱の中から書類の山が消えた。

「………ああ、これ『転移』の魔法陣なんだ」

「今頃事務方は驚いているだろうな。初日から大量に来るとは思ってもいないだろうからな」

「俺だって思ってなかったですよ」

「ま、んなこたぁどうでもいい。長老も待ってるからさっさと行くぞ」

「アシュレイさんもですか?」

「おう。オメーと色々と話したいんだってよ?」

「…怒られるんですかね?」

「なんかしたのか?」

「いや、してないっすけど…」

そんな会話をしながら食堂へと向かう。食堂に入るとアシュレイさんが席に座っており、注文してから席へと座る。

「お久しぶりですアシュレイさん」

「おお!久し振りじゃのアルス。元気にしておったか?」

「まぁー…元気でしたね」

「そうか。休みの間はあまりアルスと会えなかったからのぅ。元気で何よりじゃ」

「ありがとうございます。…そういやロニキスさんから聞いたんですけど、話って何ですか?」

「ああ。ボンについてなのじゃが……まぁ飯を食いながら話をしよう」

厨房に注文した料理を取りに行き--ボア丼を頼んだ--水を持って席へと戻る。

「頂きます」

食事をしながら、アシュレイさん達と休暇中の話をする。ロニキスさんは最後の1週間を家族と過ごしたらしく、主にその話をしていた。アシュレイさんはアーサーに触発されたらしく、依頼をちょこちょこと受けたらしい。冒険者を引退していたのだが、復帰するに当たって手続きが面倒だったと愚痴をこぼしていた。

「……アシュレイさん。話ってのは何ですか?」

飯も食べ終わり、アシュレイさんに質問する。

「あ、そうじゃったな。……坊の事なんじゃが、アルス的に強くなったと思うか?」

「強くなったと思いますよ?この前一緒に依頼を受けましたけど、1人で戦えるようになってましたし」

「そうか…。ならば、次の段階にあげた方が良さそうじゃの」

「次の段階って?」

「いやな?休暇中に坊の親父殿と話をしてな、集団戦を学ばせようと思うてな」

「集団戦……パーティって事ですか?」

「そうじゃ。…ほれ、坊は騎士団に入団希望じゃろ?個人の力は申し分無しじゃが、今度は集団で戦う事を覚えなければならぬ。坊の能力を考えると恐らく隊長格になるからなぁ」

「……えっと、つまりアーサーの指揮の稽古をするって事ですか?」

「それは最終的にじゃが、まずはどう動くかを学ばせようと思ってな」

「………あー…話が読めたぞ?だから長老は冒険者に復帰したのか」

「??? どういう事ですか?」

「長老はアーサーを直々に指導するつもりなんだよ。俺達を巻き込んでな」

「巻き込む??」

「あー…アルスは知らねぇか。前にアーサーと依頼を受けようと思ったんだけどよ、オメーがいねぇと高ランクを受けられなかったんだよ」

「あー、なんかアーサーがそんな事言ってましたね」

「んで、高ランクになれば4人以上のパーティ必須だろ?俺とアルス、アーサーじゃあと1人足りねぇ。それで長老が復帰したって訳だ」

「……話が読めねぇすけど、これ幸い的な感じですか?」

「そうじゃな。数が足りんのなら儂が入れば良い…と思うてな」

「あー…なるほど。巻き込むってそういう事ですか」

「スサノオでも良かったんじゃが……アリス嬢を鍛えているからのぉ。それに、儂は坊の事をよぉく知ってるから教えやすい」

「つーことは休日は潰れるな」

「クラブは良いんですかね?」

「他の奴らに任せれば良いさ。それよりも、アーサーの事が優先だからな」

「んじゃ休日はパーティで依頼を受けるって事ですかね?」

「そうなるな。……まぁ、流石に護衛は無理だと思うけどな」

「ですよね。まだアーサーは学生ですし」

「討伐ならば行けるじゃろ。本当は護衛もさせたいが、こればっかりはのぉ…」

何かを忘れているような気がするが、とりあえず最初の休日の予定は埋まった。アシュレイさんが直々にアーサーを指導するというが、これは俺にとっても勉強になると思う。パーティ戦って初めてだからな。

そんな事を考えていると胸元にある魔水晶から声が聞こえてきた。

「アルス、今大丈夫かしら?」

マクネアさんからの通信コールに返事をする。

「大丈夫ですよ。どうしました?」

「今晩暇かしら?」

「今のところは予定無しですね」

「なら今晩私の屋敷に来てくれないかしら?ミリィとご飯を食べましょう」

「分かりました」

魔水晶から手を離し、再び会話へと混ざる。

「どんな魔物が良いかのぉ?飛竜ワイバーンにでもするかの?」

「……いや、長老。それは有り得ない。俺とアーサーが死んじまう」

「アルスと儂がおるから大丈夫じゃろ?」

どうやら2人は何を討伐するかを話しているようだ。結局依頼次第という事に話は落ち着き、俺達は食堂から出る。

「そんじゃ、この話はまた明日にでも。授業があるから先に行くな」

「それじゃアシュレイさん。俺も授業があるので失礼します」

「頑張れよ若者。……さぁて、儂はどう指導するか考えておこうかのぉ」

アシュレイさんに別れを告げたあと、俺は教室へと急ぐ。まぁ初日なので軽くおさらいするだけであるが。

教室に着き、窓を全開にして空気の入れ替えをする。そして、生徒達が続々と入室してくるのを見ながら、始業の鐘がなるのを待つのであった。
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