転生チートで夢生活

にがよもぎ

文字の大きさ
上 下
270 / 346
第7章 建国

第268話 -宴-

しおりを挟む
「よし!全員揃った事だし、乾杯するぞ!」

ユミルの乾杯の声と共に宴が始まる。宴とは言っても大人数でする宴や華やかな衣装を纏ってするものではない。ただ、酒がしっかりとあり、普段着のままでという宴である。

「………思ったんすけど、別に宴は開かなくても良くないすか?」

アルスは隣に座っているマクネアへと小声で話す。アルス以外は食事もしていたし、親睦を深めるという意味合いでも無いだろうと思ったからだ。

「ドワーフはお酒が好きなのよ。何かイベントがあればすぐに宴を開く性格なのよ」

「あー……酒好きでしたね」

「まぁ、ドワーフ主催の宴は無礼講だから楽しみなさい」

「無礼講………それって建前の無礼講っすよね?」

アルスの前世の感覚と言えば無礼講という言葉は罠だと考えている。特に偉い立場の人が言う無礼講は確実に罠だと自信を持って言える。

「いいえ?無礼講は無礼講よ?あー………ドワーフ無礼講は文字通りって事ね。だから私達とは違うわ」

「………」

「信じられない様ね。……それじゃユミル様を見て見なさいよ」

食事の手を止めユミルへと目を動かすと、そこにはジルバや葉月達と楽しそうに喋っている姿があった。会話が聞こえてくるが、それはどれも友人に話しかける様な口調であった。

「本当だ…」

「ドワーフの宴では立場などは一切関係ない。目下でも意見を言えるチャンスでもあるの。だからこそドルドは宴を大事にするのよ。貴重な意見が出る場としてね」

「……ウチもこれを取り入れようかなぁ?」

「アルスの所は必要無いんじゃない?あい君が常に目を配ってるし。普通なら何処かに偏りや綻びが生まれるはずだけど……満遍なく着実に伸びているからね」

「ねぇ、アルス。そのあい君ってヒトはどんなヒトなの??」

マクネアとの会話にインクリジットが参入する。ちなみにだが、アルスの両隣にはインクリジットとマクネアが座っている。

「んー………俺の相棒って所かな?そんなん聞いてどーすんだ?」

「私はキルリアに移住する身だよ?挨拶とかはしておかなきゃ不味いでしょ?」

「……えらい人間味のある言葉だな。淫魔も人間と同じなのか?」

「淫魔はそんなことしないよー。でも、マクネアから人間社会について少し教えてもらったから」

「…………?」

マクネアとインクリジットが顔を見合わせ『ねー』と互いに言う。その様子にアルスは『いつの間に仲良くなったんだ?』と疑問を抱いた。

(…そういやマクネアさんはミリィともすぐ仲良くなってたし、コミュニケーションお化けなんだろうな。俺の寝てる間にマクネアさんの怒りも薄れたんだろうなきっと)

仲良くなったのは素直に嬉しい。印象が悪いまま過ごされるのも、気が気でないからだ。特にアルスはマクネアに色々とお世話をしてもらっている立場である為、自分が招いた事柄で機嫌が悪いままなのを心配していた。しかし、それは無くなったようなので、一安心していた。

(……寝てる間に、か。そういやまたもややっちまったよ……。マジで溜まってんだな。今度こっそり抜かねぇとヤベェかも…)

アルスは起床後の状態を思い出しゲンナリする。下着にはベッタリと粘液がへばり付いており、無意識に抜いたのかと焦っていた。流石に誰にも見られてはいなかっただろうが、着替えるのが少し遅れていたらマクネア達に見られていただろうと恐怖を覚える。だからこそ、抜く必要性があるのだとアルスは心に刻んだ。

「? どうしたの?そんな真剣な顔して?」

アルスが酷く真面目な表情を浮かべているとマクネアが心配そうに声を掛ける。その時、若干思考がエロに傾いていたアルスは、インクリジットが変化へんげしていた状態と重ねてしまう。

「痛ッ!!」

身体は正直だ。思考と共に反応する愚息にインクリジットもいち早く気付き、アルスを横から脇腹を小突く。

「何勃ててんのよ今はそんな場じゃないでしょ」

早口かつ小声でインクリジットがアルスへと耳打ちする。バレてしまったという恥ずかしさと共にアルスは『淫魔ってスゲェな…』という謎の感動を覚えた。

「あ、いや……えと、2人とも仲良くなったんだなぁと考えてたっす」

流石にエロい事を考えてたとは言えず、アルスは先程考えていたことを口にする。

「ああ……まぁね。意外と話してみたら普通の人間と変わらなかったし、種族としての特性だから仕方ないと割り切ったの。今後はしないでねって約束したし」

「そうすか。めちゃくちゃ怒ってたからどうなるかと不安でしたよ…」

「まぁ見られてるだなんて知らなかったからねー。でも、金輪際マクネアに変化はしないでってキツく言われたから、それはちゃんと守るよー」

「…でもよぉ、それって特性を封じられたってことだよな?」

「マクネアと話したんだけど、私の変化って大抵が食事をする時に使うんだよね。けど、マザーのお陰で食べたいって思う事も、使う機会は無いも等しいからねー」

「そうなのか?……つか、本当にマザーがしてくれたことは事実なのか?」

「ほぼほぼ事実だと思うよ。実際、この場に居たら、前までの私だったらすぐに変化してるもん。でも、食欲?って言うのかな?それは全く湧かないし、ご飯で大丈夫な気がする」

「……なら安心だな」

アルスはインクリジットのげんを信じる。それは『契りの首輪』をしている事も関係しているが、インクリジットが本音を言っている様な感じがしたからだった。『ヒトの本質を見れる』という優れた能力など持ってないが、眼や口調からそう察した。

「……話は変わるんだけれど、アルス。アナタ、インクリジットを移住させるのは良いけど、働き口はどうするの?」

「働き口……あー、そうっすね。農作業とかは……見た目的に無理そうだなぁ…」

アルスはマクネアの問いにインクリジットを眺めながら思考を回転させる。もし、適材適所で判断するならばインクリジットは娼館などで働かせる方が良いだろう。需要もあるだろうし、何より淫魔のイメージはやはり性的なものであるからだ。しかし、アルスは自分の思い描く国にその様な施設は遠慮したいと考えていた。それは自分も顧客になりそうだという事と、裏組織が出来そうだと考えていたからだ。まぁ、どう足掻いたとしてもそういった表に出てこない薄暗い組織は出来るとは考えているが、直接的な施設を設備するのは躊躇われる。特に『麻薬関係』が発達した場合は非常に困る。というのも、前世で読んだ小説の中にその様な話があったからだった。

「農作業って野菜とかを収穫するだけでしょ?」

「いや……畑を耕したり雑草を刈ったり肥料を播いたりと大変だぞ?」

「ふーん……」

「それにずっと日光を浴びる羽目になるぞ?」

「……いや、別に私は吸血鬼とかじゃないし……。一応悪魔種だけど、日光は平気だよ?」

「……調理とかは?」

「うーん…上手かと言われれば分かんない。人間が食べれる料理は最低限作れるけど」

アルスはインクリジットの処遇について頭を悩ませる。ただ単に連れて帰るつもりであったが、マクネアの言う通り1人で生活出来る様に職を斡旋しなければならない。キルリアは今現在急成長を遂げる準備段階だ。職は沢山あるが適切な物があるかは見定めなければならない。そんなアルスにとって難しい難題をマクネアが解決策を投じる。

「悩んでいるんだったら1つ良いかしら?」

「何か良いアイディアあります?」

「実際にやらせてみなきゃ分からないけど………インクリジットは地頭がいいから、雑務や事務方をさせてみたらどうかしら?」

「事務系……すか」

「私と喋っている時も飲み込みは早かったし、教え方も上手だったわ。だから事務方の方が性に合ってるんじゃ無いかなぁと思うわ?」

「うーん……」

マクネアが『頭が良い』と言うのであればそうなのであろう。アルスはインクリジットが事務方……OLになったという想像をしてみる。タイトスーツに身を包み、髪を後ろで束ね赤色の眼鏡を掛けながら書類を片付ける想像が簡単に浮かんだ。

(うわぁー……すんごい似合ってる…)

「事務方となると……あい君の下に就かせた方が良いかもしれないわ?あい君だったら簡単に育てる事が出来るでしょう?」

「ぇ?」

卑猥な妄想へと延びそうなタイミングでマクネアが自分の考えを述べる。マクネアはインクリジットと会話をしている最中、もはや習慣と化している目でインクリジットを見ていた。それは三大貴族として上に立つ者からの物差しであったが、今まで見てきた中でもインクリジットは希有な者であった。やはり種族が違えば頭の構造も違うのであろう。マクネアはただただ十八禁の会話をしていただけではないのだ。

その様な会話の中からマクネアはインクリジットの適性を考えていた。ヒトと話す際には眼をしっかりと合わせ、会話を遮る様な事もせず、しっかりと内容を呑み込んだ上でインクリジットは会話を続けていた。特に驚いたのが、インクリジットは貴族の様な頭の回転をするということだった。会話の先を読み、歯に衣を着せぬ物言いは秀才として評価する物であった。だが、やはり種族が違うというのは大きく、インクリジットは魔物としての視点で語る事があるので、そこはこれから勉強していけば良いと考えていた。

「----という事をインクリジットから感じたのよね。適性を絞り込めば良いのだろうけど、そこまで私がする義務は無いし、あい君なら素早く見抜くんじゃないかしら?」

「うーん……それだと『あい君』の仕事量が増えちまうな…」

「ちょっと増えてもそう変わらないでしょう?多岐に渡り過ぎている仕事量からすれば」

「……ま、とりあえず『あい君』に相談してみますよ。帰ったら話しようと思ってたし」

「アルスがあい君と話??」

「あ、別にややこしい話とかじゃないっすよ?なんつーか……友達みたいな話をしようかなって」

「?? ちょっと意味が理解出来ないわ?それは早急の課題なの?」

「い、いや……ヒルメにも言われたんすけど……俺って『あい君』と日常会話的なものを一切してないなぁと思って。『あい君』の代わりは出来ないって理解してるから休めとは言えないっすけど、少しぐらい息抜きで遊びに行ったりとかしようかなぁーって考えてます」

「ああ、そういうことね?……ならその時は私に連絡して?少しくらいならあい君の手伝いをしてあげるから」

「その気持ちは嬉しいすけど……流石にマクネアさんに丸投げするのは…」

「その事をあい君に伝えてくれたら、リストを作ってくれるでしょ。私だって何も知らない状況で着手するなんて真っ平御免よ」

「……その時はお願いします」

マクネアからの好意にアルスは素直に頭を下げる。今現在キルリアで進行中の業務に支障が出てしまったら申し訳ないという気持ちを持っていたからだ。だが、マクネアがバックアップをしてくれるというのは助かる。『あい君』もマクネアの事を高く評価しており、『どうにかマクネア様をキルリアに引き込めないか』と画作を練るほどであった。流石にそれはマズいとアルスは『あい君』へと苦言したが、『冗談ですよ』と言った時の『あい君』の表情はガチなものであった。

「ねぇねぇ、話の最中に申し訳ないんだけどさ、結局私の働き口ってどうなるの??」

「うーん…とりあえず未定だな。マクネアさんが言うからには適性があるんだろうけど、人事に関しちゃ俺がホイホイと決めちゃならねぇからな」

「なんで?アルスが一番偉いんでしょ?」

「偉いからこそだよ。俺の贔屓で決めちゃったらダメなんだよ」

ウチ魔物はチカラで決まるよ?」

「………あー、上手い説明が思いつかないからちょっと聞いてみるか。おーい、ユミルー!」

「あぁん?なんだ!?」

アルスは楽しそうに喋っているユミルへと声を掛ける。会話を中断されたから不機嫌になったのか、ユミルはジト目でアルスに眼を向けた。

「ワリィワリィ。ちょっと王であるユミルに聞きたい事があってさ」

「なんだよ?立場を出すってことは難しい話か?」

立場を出されたからか、ユミルは真面目な眼をしてグラスを片手にアルス達の元へと来る。そして、面白そうな話かと邪推したヒルメもこっそりと着いてきた。

「難しい…つーか、俺の知識じゃ偏りがあってな」

「ほう?聞かせろよ」

アルスはユミルへとインクリジットの処遇についてを話す。そして自分が思っている事をユミルへと話し、インクリジットへの上手な説明を頼む事にした。

「あーなるほどな。そういうヤツね」

ユミルは少し考えを纏めた後、インクリジットへと説明する。

「インクリジット…だったか?お前、魔物と人間社会が違うって事は理解しているか?」

「マクネアからある程度の説明は受けてるけど……」

「なら分からない事があったら聞いてくれ。知っているという前提で話をするからな?」

「分かったわ」

「……まずは人間社会、まぁヒト種の社会ってのは魔物と同様チカラがあるヒトが頂点に立つ。この場で言えばオレやヒルメが国の頂点になるな。んでもって、ここからが違うのがヒト種の社会にとって、頂点が特定のモノを贔屓にするってのは厄介なモンになるんだ」

「なんで?チカラが有れば言い聞かせるのも簡単でしょ?」

「そのチカラってのがヒト種と魔物との決定的な差なんだよ。オレも魔物の社会は分からねぇが、ただ強いだけではダメなんだよ」

「そうなの?」

「まぁ色々とややこしい話になっちまうから、分かりやすく例えるぞ?まず、ヒト種の社会では狭い世界と広い世界がある。狭い世界ならアルスの一存で決めても良いんだが、広い世界での話となるとダメなものなんだ」

「?? 狭いのと広いの??」

「狭いってのは……魔物で例えるなら種族って事だ。種族内であれば頂点の奴が好き勝手にしてもいいと思う。だが、広い世界…この場合は種族間を超えるって事だな。そうなると、頂点の奴には制限が掛かっちまう」

「制限?」

「極論を言えば役に立たない能力の奴を綺麗だからとか、可愛いからだとかの表面的な理由で引っ張ってくるってのはダメな話なんだ。自分の領地内であれば良いが、アルスの場合はという立場になる。そこがヒトと魔物との違いだな」

「つまり……良く思わない輩が居るってこと?」

「それもあるが、国として悪い循環に陥る。アルスがお気に入りだからという理由でお前が働くとなったら、アルスは多方面から色仕掛けなり賄賂なりで攻められるだろうよ」

「アルスには色仕掛けなんて通用しないよ?」

「あくまでも例えの話な?んでもって、アルスが言いたい事は、そう言った適性を調べてから配属するって話だ」

「……なんだか面倒くさいね」

「まぁ武力だけでは運営できないって事だ。けれども、最終的には武力があるヤツが勝つんだけどな」

「あー……それに付け加えるんだけれど、アルゼリアルは今ユミル様が仰った話が平然と行われているわ?と言っても一部の貴族達がだけれど」

「そうじゃのぅ。シュピーでは代々名家が引き継いでおるし、最終的にはわらわの判断で取り上げたりするがな」

「…話がややこしくなってるんですけど?」

「まぁ国によって違うという事じゃな。アルスの考えでは恐らくキルリアは採用基準を決めておるみたいじゃの?」

「んーまぁ『あい君』がそんな事を言ってたからね。適性検査を受けさせてから希望を聞いた上で配属するとかなんとか」

「画期的な発想じゃのぅ」

「けど、引き抜きはしてるからな……」

「引き抜きでも国家の役職に当てている訳では無いじゃろ?」

「……部門的な場所になら当ててるね」

「まぁ新興国として成長段階じゃから仕方ないじゃろうな。既存のモノを当てはめるという事は案外適当ではある」

(……………ガガの件は確実に贔屓に近いモノだよなぁ)

「んーっと……つまり、私はアルスに連れてこられたけど、その検査?ってのを受けないとダメって事?」

「オレもよく分からねぇが、その検査ってのは良いふるいではあるな。その検査が真っ当であればの話だが」

「あい君のことだから真っ当でしょ。それに、贔屓したからって篩に掛けるから平等だと思うし」

(なんでこんな話に……)

アルスが言いたい内容とは裏腹に話は真面目なモノになっていく。アルスが伝えたかった事は、『縁故採用はあんまり良く思われないからダメだよー』と言いたかっただけなのだ。アルスも前世で働いていた飲食店ーーアルバイトであったがーーにオーナーの息子が入り、威張り散らかしていた事を良く思ってなかったからだった。全ての縁故採用が悪いとは言わないが、権力を持った役職ーー特に身内ーーの縁故採用はすぐに威を借る狐となりやすい。その事を危惧してアルスは『ダメだよー』と言いたかっただけなのである。

「ふむ……そこら辺はジルバにも聞いたらどうじゃ?アヤツの方が詳しかろうて」

「ジルバのヤツは完全に独断だからな。アルスの言いたい事と別物だろ?」

「そうですね……。ジルバの場合は自分の領地内だけの括りですから。国となると話は別でしょうね」

「じゃが、しっかりと成果を上げておるじゃろ?」

「だーかーらー!それとコレは別だって言ってんだろ?脳味噌入ってんのかババア?」

「ユミルよりかは入っておるわい!!」

ユミルとヒルメが口喧嘩を始めるが、誰も止める事はしない。ドウザンや葉月はソルトやジルバと楽しそうに喋っていた。

「…ま、難しい話になったけどよ。簡単に言えばその検査を受けてくれってことだ」

「えー………それって難しいの?」

「俺にもそれがどんなのか分からん」

「それ落ちちゃったら私住めなくなるの??」

「うーん……どうなるんだろ?」

「その時は私の屋敷に来なさい。雇ってあげるわ?」

「マクネアの所で働けるの?私、魔族だよ?」

「………大丈夫でしょ。私の直属にすれば」

「それってダメなものなんでしょ?」

「………………」

マクネアが救いの目をアルスへと向ける。アルスも流石にマクネアの屋敷で魔族を働かせるとなると、非難が飛び交うのは容易く想像出来た。

「そ、その時は何度も受けてもらうよ。インクリジットにも絶対に何かしらの適性があるだろうし」

「…勉強した方が良さそうだなぁ」

魔族から勉強などという単語が出ると奇妙に感じるが、受かるかどうかは本人次第である。ダメだった場合を考え、『あい君』に口添えしとこうとアルスは思った。

「あ、話は変わるんだけどよ。アルス、ちょっと良いか?」

「……ん?」

ヒルメとの口喧嘩を終え、ユミルがアルスへと話し掛ける。『面倒事っぽそうだ』と過去の経験からそう判断し、疑いの目でユミルへと返事をする。

「お前に頼みたい事があってな。今日行った洞窟なんだけどよ、そこに土竜アースドラゴンってのが居るんだよ」

「…………」

「んでよ。本当ならマザーの所に行くついでに討伐してもらう予定だったんだが、出会わなかったようでさ。今さっき斥候を放ったら違う場所に住処を移したようで、ソイツの討伐を頼みたいんだ」

「えー?」

土竜アースドラゴンはよ、オレらドワーフにとっちゃ天敵なんだよ。アイツが居ると採掘も進まねぇし、被害も出ちまうんだよ」

「…それだけだよな?裏とか無いよな?」

「ねぇよ!これは本当だって!な?頼むよ!報酬は弾むからよ!」

「……………」

土竜アースドラゴンの討伐は本当だと思うわよ?私もそう聞かされていたから」

「妾もじゃ」

ヒルメとマクネアという援護を受けたユミルはうんうんと頷く。その様子を黙って見ていたアルスは『もし嘘だった場合は高くふっかければいいや』と思う事にした。

「分かった。もし、その討伐以外の出来事が含まれてたら報酬は高く貰うからな?」

「ああ!構わねぇぜ!」

「……その時は国庫の半分貰うからな」

「別にいいぜ?」

「…ぇ?」

アルスとしては渋るか驚愕するだろうと思いちょっと格好つけて言ってみたのだが、即答されるとは思っていなかった。という事は嘘では無いとアルスは瞬時に答えを出す。

「わ、分かった。んならその土竜アースドラゴンを討伐するよ」

「明日の朝、出立前に頼むぜ。死骸の後始末はこっちでするからよ」

「………1匹だけだよな?2匹とかでは無いよな?」

「斥候の情報と今までの調査から1匹だけだと思う。ツガイだったら地中では暮らさねぇからな」

「ふーん……ま、りょーかい」

「助かるぜ!」

明日の予定も決まり、アルス達はそれからの宴を充分に満喫する。豪勢な料理に美味しい酒、そして会話の引き出しの多さ。ユミルの歯に衣を着せぬ口調で宴はアルスにとって楽しいモノとなった。宴の終盤となると酒だけとなり、役目を終えたソルトやラティスも参加して、夜通しお喋りを続けるのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

似て非なる双子の結婚

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:72,918pt お気に入り:4,330

Irregular ~存在を許されざるもの~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:4,037

俺の魔力は甘いらしい

BL / 完結 24h.ポイント:766pt お気に入り:162

落ちこぼれ[☆1]魔法使いは、今日も無意識にチートを使う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,159pt お気に入り:25,354

処理中です...