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代価1

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 そんなある日。
ヴィオラがリモネとランド・スピアーズを引き連れて。
王宮の中央庭園で、アフタヌーンティーを嗜んでいると……
ランド・スピアーズに、来客の知らせが入る。

「妃殿下、すみません。
少し席を外してよろしいでしょうか」

「構わないわ」
気にもしない様子で答えながらも。
身分を詐称しているラピズを、誰が尋ねて来たのかと、不安に駆られる。

ーーまさか、誰かにバレたとか?
けどラピズがランド・スピアーズだと、どうしてわかったの?

 様々な憶測で、気が気じゃない時間を過ごしていると……

「ただいま戻りました」
ようやくその声を受け、逸る思いで振り向いた。

 するとラピズの隣には、来客と思われる男性らしき姿があり。

「王太子妃殿下に、ご挨拶申し上げます」
そうケープマントのフードを外した、その男の姿に。
ヴィオラは息を呑んで、目を奪われる。

 その男は女神と紛うほどの美貌と、悪魔の如く危険な雰囲気を兼ね備えていて……
ヴィオラが好む、ダークサファイアの髪と瞳を携えていたからだ。

ーーああ、なんて綺麗なのっ……
思わず見惚れるも。

「どうかされましたか?」
その男の声掛けで、我にかえる。

「っいえ、あなたは?」

「僕はランド・スピアーズの友人で、ニケと申します」

ーーニケ!?
聞き覚えがあるその名で……

~「ニケに……あ、この伝説魔法をかけてくれた魔術士に、教えてもらったんだ」~
ラピズの言葉を思い出す。

ーーじゃあこのまだ若い青年のような彼が、その闇魔術師なのっ?
そう驚くも。

 ラピズが言い直した事や、ランド・スピアーズの友人と名乗られた事から……
素性を知られたくなのかもと、その話題を避けるヴィオラ。

「……とても美しい方ですね」

「恐れ入ります。
ですが男としては、あまり喜ばしくないですが」

「いいえ、素晴らしい事です。
あまりに綺麗な色なので、思わず見惚れてしまいました」
その返しに。

「色っ?」
キョトンとするニケ。

「あ、もちろん容姿も素晴らしいですっ。
ただ私は、青がとても好きなので」

「そういう事でしたか。
それは光栄です」

「滅多に見ない髪色ですが、遺伝ですか?」

「はい、母の」

「そうなんですね。
よかったら、一緒にお茶でもどうですか?
ランド・スピアーズの友人なら、大歓迎です」
ラピズの顔を立てて、もてなそうと思ったヴィオラだったが……

「いえ。
帰りがけに、ご挨拶に寄っただけなので。
これで失礼します」
そう頭を下げて、ニケは帰って行ったのだった。






 その夜ヴィオラは、リモネ以外の侍女を帰して……
部屋でラピズに、ニケの事を尋ねた。

「彼が例の、闇魔術師なんでしょう?」

「やっぱり分かってたか。
本当はニケから、素性を口外しないように言われてたんだけど……」

「だと思って、知らないフリをしたの。
けど、どうしてここへ来たの?
何か問題でも起きたの?」
ヴィオラはそれが、ずっと気になっていたのだ。

「いや、俺が呼び寄せたんだ。
本来は出向かなきゃいけなかったんだけど。
護衛騎士だから、ヴィオラの側を離れるわけにはいかないと思って」

「別に1日くらい問題ないのに……
周りから怪しまれないためにも、次からは遠慮なくそうして?」

「わかった。ありがとう」

「それはそうと、どうして彼と会う必要があったの?」

「うん実は、もうすぐ魔法が切れるから、新たに掛け直してもらったんだ」

 そう、伝説魔法はかなりの高額なうえに。
護衛騎士になれる保証もなかったため。
持続時間を1か月ほどにしていたのだ。

 だが新たに掛け直したという事は、再び大金を払った事を物語っており……

「……ねぇやっぱり、護衛騎士は辞めない?
だってそんな事に大金を使うなんて、馬鹿げてる」

「剣術大会で多額の賞金を得たから、問題ないよ。
むしろ、辞めたら払った分が無駄になるだろ?」

「それは私が返すからっ」

「っ、そんなに俺を辞めさせたいのかっ!?」

「だって!デメリットしかないじゃないっ」

 そう、身バレの危険性や、処罰の可能性がある上に。
ヴィオラもサイフォスも、ラピズ本人も苦しみ。
さらには大金まで要すのだから。
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