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強引3

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「……ならば、俺が湯浴みを手伝おう」

「はいっ!?
っそれはムリです!恥ずかしすぎますっ」

ーー恥ずかしい!?
ふるふると首を振りながら狼狽えるヴィオラの言動に、またしても可愛いすぎると悶えるサイフォス。

「……わかった。
だがここまではいいだろう?」
そう言ってサイフォスは、再びヴィオラの胸元にキスを落とすと。

 今度はもう片方の乳房に舌を這わせ、はむと先端を口内に含んで、めちゃくちゃに舐め回した。

「ああっ、あっ、やっっ……
ああっ……っっ、やめてくださいっ!」

「っ、そんなに嫌か?」

「っっ、そうでは、なくて……
もう、おかしくなりそうですっ……」
潤んだ瞳で、はぁはぁと息を切らしながら訴えるヴィオラに。

ーーおかしくなる!?
俺でそうなるのかっ?
ゾクリとそそられて、ぎゅうと胸を締めつけられたサイフォスは……

「俺もだ」
そう言うなり唇を奪って、今度はその口内をめちゃくちゃに舐め回した。

 そしてめちゃくちゃに舌を絡めながら、柔らかな肌に手を這わせ……
太ももを撫で、その先の秘部に指を伸ばした。

「んっ、んんっ!」
快感に翻弄されていたヴィオラだったが、ビクと我に返り。
欲求に抗って、慌てて抵抗を示した。

 それにより、一旦中断したものの。

「……ヴィオラを抱きたい。
抱いてもいいか?」
今にも飛びそうな理性で、そう尋ねるサイフォス。

 一方ヴィオラも、今にもコクリと頷きそうな気持ちだったが……
ぐっとそれを踏みとどめて。

「だめ、だめですっ……
いやだと言ったでしょうっ?
湯浴みもそうですが……
っ心の準備が、まだ出来てないんです!」
自分にも言い聞かせるようにして、そう取り繕った。

 そう言われては、これ以上求めるわけにはいかず……

「っっ、わかった。
すまなかった……」
サイフォスも、ぐっと激情を押し殺して。
そうヴィオラを、ぎゅううと抱きしめた。

 そして、狂おしい愛しさをぶつけるように……
髪を撫で、チュッとそこに口付けて。
額へ、鼻へ、頬へとそれを続けた。

「っっ、サイフォス様……」
同じくヴィオラも、狂おしい愛しさを込めて……
その名を呼んで、ぎゅっとぎゅううとしがみついた。

 それから2人は、時間が許す限り……
ただただ身体を絡めながら、もどかしい気持ちを必死に押し殺して、狂おしい口付けを交わし続けたのだった。



 その夜、ヴィオラは……
いつまでも拒むわけにはいかないと、再び思い悩んでいた。

 例のごとく、もうサイフォスを傷付けたくはないため。
出来るなら拒みたくなかったうえに。
好きな人に抱かれたいのも然る事ながら。
未だに迎えてない初夜を、いいかげん迎えるべきだと思ったからだ。

 なにより。
どんなに悪妃な自分でも、全て受け入れてくれたサイフォスの望みなら……
どんな事だろうと、何だって受け入れてあげたかったのだ。

 とはいえ、ラピズとの関わりにケリをつけられない状況で……
サイフォスと関係を持つのは、さすがに気が引けていて。
さらには、それでサイフォスに危害が加えられる事を、一番に恐れていた。

ーーどうにかバレずに、初夜を迎える方法はないかしら?
それ以前に、ラピズに解ってもらう方法はないっ?

 しかし……
解ってもらおうとする事自体、サイフォスの所為にされる危険性が高く。
たとえバレない方法があったとしても、身籠ってしまえば隠しようがないと。
思ったところで、ヴィオラははたと気付いた。

ーー待って、逆に……
身籠った方が、丸く収まるんじゃ?

 そう、その子はいずれ最有力の王位継承権を持つため。
王宮を出れば、命を狙われる危険性が生涯付き纏う。
となれば、ヴィオラがその愛する我が子と王宮で暮らす選択をするのは当然で……
つまりは離婚をせずに済む、正当な理由が出来るのだ。

 さらに、これまで施療院に慰問した際。
ラピズはいつも、甲斐甲斐しく子供たちの世話をしていたため。
そして度々、子供好きだと自負していたため。
罪のない子から、父親を奪うとは思えず。
つまり子が出来れば、サイフォスを暗殺するとは考えにくく……
延いては、ラピズは諦めざるを得なくなるのだ。

 しかも王太子妃として、世継ぎを産むのは公務以上に重要な責務のため。
立場的にやむを得なかった、などといった言い分がまかり通るのだった。

 なにより、ヴィオラ自身。
愛する人との子は、欲しいに決まっていた。

 ただ、そうするには1つ問題があり……
身籠る前に、関係を持った事がバレた場合。
身籠らないように、手を打たれるに違いなく。
つまりその場合も、サイフォスの命が狙われるのは明白だった。

 となると結局、初夜を迎えるのは難しく。
それどころか、引き継ぎが終わった今となっては……
ラピズに疑われずに、会う口実もなければ。
2人きりになれる口実もなく。
ヴィオラは遣り切れない思いで、はぁと落ち込んだのだった。



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