異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文

文字の大きさ
228 / 249
混血系大公編:第二部

28

しおりを挟む

「ああ…そうだな。私もそう、考えている」
 ヴァレさんの言葉に、今度は私がクスっと笑う。
「ふふ、そりゃそうですよ。だってヴァレさんの影響ですもん」
「?そうなのか?」
「ええ。覚えてません?」
 私がこの世界に来て、まだ間もない頃かな。詳しい状況は忘れちゃったけど、浮浪者の人に絡まれちゃってお金せびられちゃったことがあったのよね。 
 その時はそれなりに附術を身につけていたし、隙を見て返り討ちにしてやろうなんて思ったんだけど…ちょうど通りかかったヴァレさんが、間に入ってくれたのだ。
 そして彼はこう言った。
『レディを恐喝できるほど元気なら、働いてまっとうな手段で稼いだらどうだ。俺が仕事を紹介してやる』
 それでその浮浪者の人を連れて行ってくれたのだ。同じ傭兵団の人たちは、そういう時相手をボコボコにするかコロコロしちゃうから、ヴァレさんの対応が新鮮だなって思ったのよね。
 そして、素晴らしいと思った。何ヶ月後かに、その浮浪者の人がまっとうに働いている姿を見かけたから。ただ仕事を紹介するだけでは、きっとそんなふうにはならない。ヴァレさんが気に掛けて、フォローしたからこそ彼はまっとうになれたんだろう。
 変な話なんだけどさ。この世界で気がついた時からずっと傭兵団に身を置いていたからか、その時は暴力で解決するって考えがけっこう当たり前になっちゃってたのね。前世はあんなに暴力と縁遠い世界で生きていたはずなのにね。
 それからヴァレさんと接するうちに気づいた。ヴァレさんは、施しはよくないと思っている。もちろん働けない理由があれば仕方ないけど、それが解消されたら自活する努力をするべきだと思っている。そのための手助けなら、可能な限りしてくれるってことも。
「そうだったかな…」
「そうですよ。そんなヴァレさんに、憧れたんです」 
 そう、憧れてしまった。こんなに暴力で溢れた世界で、平和的かつスマートに解決して見せた彼に。
 私はけっこう独善的な人間だ。自分が一番だと思ってるし、余裕がなかったら自分のことを最優先する。
 でも、人に優しくしたくないわけじゃない。誰かが喜んでいる顔を見れば、自分だって嬉しくなる。
 暴力だって、できる限り奮いたくない。傭兵団の団員である手前、力を見せつけなきゃいけない場面もあるけど…前世の倫理観だって、私の中にはちゃんと残ってる。
 だから浮浪者だった彼が、洗いざらしの服を来て働いている姿を見た時。同じ職場の人と、ランチを取りながら笑い合っている姿を見た時。
 ヴァレさんのしたことは、本当に素晴らしいことだと思ったんだ。
「だからこれは、ヴァレさんの真似です」
 握る手に力を込めて、ヴァレさんの瞳を見ながら微笑む。
 ヴァレさんが行った政治的判断に対し、私は何も言うことはできない。結果的に帝国の経済は劇的に復興したから、彼の判断は正しかったんだろうけど…その陰で、苦しんだ人々がいることも事実だ。
 だけど知ってほしい。
 今この場にいる5番街の人々の笑顔を作り上げたのは、ヴァレさんなんだと。
 5番街の人々を助けようと私を説得し、素材を提供し、私に人を助けるやり方を教えてくれた、ヴァレさんのおかげなんだよ。
 私をじっと見ていたヴァレさんの目が、わずかに揺らぐ。
 眼鏡の奥の、美しいアースアイ。
 ずっと見ていると、魅了されて目が離せなくなってしまいそう。
 ヴァレさんの右手が持ち上がって、迷うような動きをしてから、下ろされる。抱きしめるような動きに見えたのは、私の思い上がりだろうか。
「…ありがとう」
 目を伏せて、深いため息とともに吐き出された言葉。
 強引に抱きしめてくれれば、なんて私は思っていない。思ってはいけない。かつてこの人に抱いたあこがれが、胸の奥で疼いたとしても。
「…ヴァレさんにも、隣で支えてくれる女性(ひと)が早くできるといいのに」
 自分の気持ちをごまかすためだったんだろうか。自分がこれ以上、馬鹿げた気持ちを持たないようにという、願望からだろうか。そんな言葉が口をついて出てきてしまう。
 その瞬間、グッとヴァレさんの手に力が入る。驚いて手を引こうとするけど、左手はしっかりと捕らえられていて叶わない。
 戸惑っていると、ヴァレさんが顔を上げて再び私を見つめる。
 その顔には、確かな怒りが浮かんでいた。
 ……私ったら、なんて失礼なことを言ってしまったんだろう。
「あの…」
「あいにくだが、隣に立つ相手はもう決めている」
 私の言葉を遮って、ヴァレさんが低い声でハッキリと言う。
「ごめんなさ…」
 謝罪の言葉を紡ぐ前に、グッと手を持ち上げられ。
 左手の薬指に唇を押し付けられる。
「あ…ッ」
 手を引こうとしても、力が強くて敵わない。
 なんで、どうして。
 混乱する頭の中で、以前ハリーさんに言われた言葉が過った。


『いいや。情けないけどね、多くの男は女性に癒しを求めてしまうんだよ』
『そんなら、お嫁さん候補でも紹介してあげたらどうです?』
『そんなことをしたら、ボスにぶん殴られるよ!妻子を置いて死ぬわけにはいかないんだ』


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...